【特集】 コラム
2007.07.23
Vol.2
   
嵐山 光三郎   
 
 

 40代のころはひとり旅が好きだったのですが、やっぱり友だちと一緒に出かけるグループ旅行がたのしいですね。ひとりで温泉宿の6畳間に座って、テレビのプロ野球中継を見ているのって、淋しいですよ。ひとりで飲むとビールびん1本を飲めないもの。
 ここんとこ、仲のいい友だちを誘って、1泊8000円ぐらいの山の湯へ行くようになりました。裸電球がぶらさがり、障子の紙に穴があいてて、その穴の奥に深山幽谷が見えるのです。フトンは自分で敷きます。連泊するから布団は敷きっぱなしで。
  みんなでワインを持ってくる。お中元にいただいた高価なワインは、こういうときに役に立つのです。宿泊費は安いけれど、ワインは1本1万円以上のばかり。ぼくは、シャトー・マルゴーだのシャトー・ラトゥ−ルを買って持っていく。(2本で10万円)

 

 露天風呂に入って、湯あがりには、ぎんぎんに冷やしたシャンパンで乾杯します。ビールでなくて、いきなりシャンパン。つぎは、ロマネ・コンティの白(ドメーヌ)。肴は、山菜の漬物です。超上等なワインを、友だちと飲むのは至福の時間です。
 人数は6人から10人まで。新幹線の回数券に6枚セットと20枚セットがあるから、それを使って、団体割引の切符にする。JRの「とくとく切符」をうまく利用するのがこつですね。これを、ぼくは、ニューグループ旅行と呼んでいます。できあいの団体旅行ではなく、オリジナルのツアーを企画するのです。

 

 ぼくの仲間は、行きさきの温泉宿をきめたら、そこから移動せず、ずーっと温泉につかっています。山の湯の露天風呂は渓流ぞいにあって、ひと晩じゅう入れます。夜空に星がきらめき、月がかかり、周囲はまっくらですから男女混浴です。女友だちと一緒に露天風呂につかると、男と女の友情が生まれるんですね。戦友じゃなくて温泉友。

 行き帰りの電車のなかでは、ビール飲んだりして、「動く居酒屋」になりますし。団体旅行だから気楽なもので、幹事役が、全員からお金を集めて、ビール代、昼食代、タクシー代、みんなワリカンにします。みんなでワイワイガヤガヤと飲んで、気がむいたら句会をやって、のんびりと過ごすのです。
  こういう旅をすると、カラダがリフレッシュされて、新品になり、よーし、もうひと仕事するかア、という気がおこるのです。

 
嵐山 光三郎 (あらしやま・こうざぶろう)
1942年、東京都出身。作家。
雑誌編集長を経て執筆活動に入る。2006年には『悪党芭蕉』(新潮社)で泉鏡花文学賞、読売文学賞をダブル受賞した。近著「とっておきの銀座」(新講社)は13刷でベストセラーへまっしぐら。旅が好きで、一年の半分は国内外を旅行している。
 


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