そら飛ぶ庭
   

介護日記
 
2013.5.14 

Diary of Country Life
Nursing of My Parents

村上春樹の新刊感想

自分、体調崩す

父、短歌を作る

大島  一洋 

卯の花

■サイコ
 
 「ヒッチコック」という映画が公開されているせいか、「サイコ」の冒頭、ジャネット・リーがシャワー室で殺されるシーンが話題になっている。ジャネット・リーが代役を使ったかどうかということ。本人は、代役を使ってない、と言っていたらしいが、自分が繰り返し見たところ、明らかに代役を使っている。というのは、乳房がぼんやり見えるが、ジャネット・リーの顔がはっきり映ってない。顔、脚、腹(これも代役っぽい)などの部分は、はっきり撮れているのに他はぼんやりしている。スピードのあるカット割りで見事な編集だ。ちなみにDVDでは、特典として、音楽入りと音楽なしのシャワー・シーンが収録されている。あのシーンは音楽とシャワーの音にごまかされるのだ。

■桜

 今年の桜は早く、3月末から咲き始めた。4月8日に、この町の桜の名所・本町公園へ行ってみると満開。日差しが強いので屋根のある場所で宴会をやっていた。

本町公園の桜
桜に提灯

 その後、気温が不安定になり、恵那山に雪が降ったりして、山間部では4月20日過ぎまで桜が見られたとか。

しだれ桜に雪の恵那山

■ハルキストたち

  4月発売の村上春樹の小説のタイトルだけが発表になり、その内容を予想してハルキストたちが騒いでいる。『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』という書名。はっきりしているのは、「巡礼の年」がリストの曲名であることくらい。「多崎」をリアスシキ海岸と解釈して、東日本大震災がテーマと予想している人もいた。
 著者と文藝春秋の、こうした販売戦略はあまり好きになれないが、この出版不況の折、まあ許そう。
 発売日は4月12日。初版50万部、1か月で100万部に達した。この小さな田舎町の本屋でも、数軒で平積みになっていた。刷り過ぎじゃないのか。

しゃくなげ

 読んでまず驚いたのは、名古屋が舞台であること。村上春樹らしくない都市だ。高校生5人(赤松慶、青海悦男、白根柚木、黒埜恵理、多崎作)は親友だった。多崎以外は、苗字に赤、青、白、黒がついている。だから多崎は「色彩を持たない」となる。「つくる」は多くのハルキストの予想をはぐらかして「作」が本名である。
 高卒後、4人は地元の大学に進む(このあたりは名古屋っぽい)が、多崎だけは東京の工業大学を選ぶ。
 20歳のとき、多崎は赤松から電話で、理由のわからないまま、4人との絶交を宣言される。死を考えるほどのショックを多崎は受ける。これを東日本大震災の暗喩かと思ったが、全然関係なかった。名古屋を仙台に置き換えても当てはまらない。つまり、この小説は東日本大震災とは無関係の小説である。村上春樹が東日本大震災を書くには、まだ数年かかるだろう。
 現在36歳になる多崎は、都合のよい女性と性体験を重ねながら、希望した鉄道会社に就職し、駅舎を作る仕事に従事している。紗羅という年上の恋人がおり、彼女に使嗾されて、かつての友人、赤、青、白、黒を訪ね、なぜ自分が絶縁されたのかを調べに出かける。(16年もたってからというのは遅過ぎる気もする。東京・名古屋間は「のぞみ」でわずか1時間半だ)。
 赤と黒はそれぞれ一応まともな仕事についており、絶縁の真相は「白」の嘘の告白だとわかる。ところが白はアパートで殺され、犯人もあがっていなかった。黒はフィンランド人と結婚し、フィンランドの田舎町に住んでいる。結局、読者はフィンランドまで案内されるという観光サービスを受ける。
 なんだか思いつきだけで書かれた小説のような気がする。リストの「巡礼の年」は登場するし、ちょっと出の脇役・灰田、緑川も「色彩」を持っている。
 ハルキスト好みの仕掛けはある。例えば、文芸評論家の斎藤美奈子氏は、赤、青、白、黒を古墳の青龍、朱雀、白虎、玄武。あるいは庄司薫の4部作、赤ずきんちゃん、白鳥の歌、怪傑黒頭巾、青髭を連想することもできると書いている。(『週刊朝日』5月3、10日号)
 かつて『ねじまき鳥クロニクル』を深読みして注目を浴びた、久居つばきを思い出した。彼は今どうしているのだろう。
 結論は、村上作品のなかでは駄作。読んでおかないと話題についていけないというだけ。書評家も褒めていいのか貶していいのか、戸惑いながら書いている。
 それにしても、「白」の告白や殺され方が不自然。強引にほったらかした、という感じがする。ここにトラップはあるのか、わかる人は教えてくれ。

はなもも
つつじ

■水道橋博士

 
 今月読んだ本では、水道橋博士『藝人春秋』が秀逸。以前から思っていたが、著者の観察力、洞察力に感心する。芸人より物書きが合っていそうだが、芸人だから書けるという面もある。『週刊文春』で続編の連載が始まったので、これは毎週が楽しみだ。

■風邪
 
 暑かったり寒かったりと気温が安定せず、ついに風邪をひてしまった。熱はないが、喉がいがらっぽい。がらがら声。たばこもビールも喉にしみて痛いので、喫わず、飲まずで一日過ごした。可知医院で診てもらうと気管支炎にはなっていないとのこと。処方の薬を服んだが効かず、初めてコーラスを休んだ。酒場にも行かなかった。
 可知医院の薬が切れたので、耳鼻咽喉科に行ってみた。アレルギーだと言われる。喉の花粉症だそうだ。最近はなんでもアレルギーで片付けてしてしまう。こちらの薬も眠くなるだけで、喉の調子は悪いまま。5月に入っても苦しめられることになった。季節が変わらないとダメかもしれない。

芝桜
利休梅

■佐村河内守(さむらごうち まもる)
 
 「現代のベート−ヴェン」のキャッチフレーズで、一躍人気が出てきた、聴覚を失った作曲家。広島県生まれの被爆二世。49歳。33歳ころから聴覚を失ったとか。
テレビで交響曲第一番「HIROSIMA」を聞く。黛敏郎や武満徹のように雅楽を取り入れず、純粋な西洋音楽として勝負している。繊細ながら押しの強い曲。
さっそくCDを買って、きちんと聴いてみた。なかなかすごいものがある。のんびり聞き流すことを許さず、全身で受け止めなければならない。しばらくハマりそう。

■弟帰省
 
 4月26日(金)。午後1時に多治見駅で弟・史洋と待ち合わせ、「生楽館」へ。久し振りに弟に会ったせいか、父は一人でべらべら喋っていた。三分の一は意味がわからないが、機嫌がいい。
 弟と中津川へ。彼が帰省すると、和室を掃除し、彼用のふとんを干して準備しておかねばならない。たった一晩なのにめんどくさいが、ゆっくり話すこともあるのでたまには帰ってきてもらいたい。
 回転寿司の「丸忠」で夕食したあと、自室で弟は焼酎のお湯割り、自分はビールで、いろいろ話す。自分が突然倒れてしまうこともありうるので、その際のことを弟に説明しておく。11時ころ弟は和室へ消えた。
 翌朝9時半、朝食。ごはん、納豆、卵、目刺し2尾、トマト&きゅうりのサラダ、味のり、ヨーグルト、キウイ、お茶。
 11時ころ、弟は市内で行なわれる年に一回の歌会に出かけていった。次は6月に来るというので、和室に彼のふとんを積んだままにしておく。

面会に来た弟

■町内無尽
 
 同級生の熊崎に、東町町内無尽を始めるので、参加しないかと誘われる。町内の人たちと知り合いになっておく機会なので了解する。毎週第二土曜日に「まき」という店に集まる。7人だが、自分と熊崎が一番若く、他はみんな年上の男性。会費1万円。 

■父、元気なり
 
 「生楽館」での父は変わらず元気だ。驚いたことに短歌を一首作った。

 出会いがしらに抱擁せる翁あり 音一つなき施設の風景

「音一つなき」が気に入らんと、ぶつぶつ言っていた。
食欲は100%ですべて食べているようだ。食欲があるうちは死なないから、当分は大丈夫だろう。

顔色のいい父

 今月は寒かった。4月の気温とは思えない日が続いた。そのせいで体調を崩した。   

                                                                   (次回へつづく)


大島 一洋  (おおしま・いちよう)
1943年岐阜県中津川市生まれ。早稲田大学第一文学部美術専修科卒。
大和書房を経て、平凡出版(現マガジンハウス)に中途入社。「週刊平凡」「平凡パンチ」「ダカーポ」「鳩よ!」などの雑誌および書籍編集にたずさわり、2005年定年退職。現在はフリー編集者&ライター。著書に『芸術とスキャンダルの間』(講談社現代新書)。
 
 
 
 


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