そら飛ぶ庭
   

介護日記
 
2012.7.10 

Diary of Country Life
Nursing of My Parents

アルコール性肝炎

黒澤明全作品

一泊二日温泉旅行

大島  一洋 

うつぎ
てっせん

■自立神経失調症

 先月、誤ってプロパンガスを一瞬吸いこんで倒れたが、その後遺症か、目まいがしたり、頭がくらくらするので、久し振りに可知医院で診てもらう。メニエール氏病か脳梗塞の前兆ではないかと疑ったが、結局、神経の問題だという。週2回の多治見行きや独居生活によるストレスが原因の、自立神経失調症なのだそうだ。脳が問題なら手などに痺れがあるはずだが、それはない。
 ついでに半年振りの血液検査。これは上がっていることは想像できた。外食が増えて夕方から飲むことが多くなり、ワインなどもかなり飲んでいる。酔いも早く、顔が真っ赤になる。まずいなと思ったが、どれくらい悪くなっているか調べてみるつもりで採血を受けた。6月1日で69歳になった。数えで言えば古希である。いつ死んでもおかしくない年齢だ。ただ、父より先には死ねない。

これも、うつぎ
ホタルブクロ

■禁酒宣言

 血液検査の結果が出た。予想していたより、はるかに悪かった。
 今まで、基準値を超えたことがなかったGOT、GPTが61、62と、20も上がった。ガンマGTPは590、中性脂肪は1328。最悪の事態である。このままほっておくと膵臓炎になる、と可知先生に警告された。
 1か月間の禁酒を決める。これまでの経験から、1か月禁酒すれば3分の1に下がるはずだ。ただちに禁酒宣言を、あちこちにメールしたが、アル中に対して世間は冷たいもので、誰も同情してくれない。お見舞いメールどころか返事もない。まあ、慰めてもらっても仕方ないけど。
 自分はアル中ではないが、強度のアルコール依存症である。禁酒宣言初日の夜、禁断症状が出た。11時頃、ビールが飲みたくて我慢できない。冷蔵庫にあることがわかっているので、なおさらだ。ついに缶ビール1本に手を出してしまった。なめるようにゆっくり飲んだが、1本でおさまらず、もう1本、つまり2本飲んでしまった。これくらいなら飲んだうちに入らないだろうと思っている。摂取アルコール量は少ないはずだ。
 初日がこうだから、以後、毎晩缶ビール2本だけ飲むことになってしまった。酒場には行かないが、家で寝る前に缶ビール2本。これだけ減酒すれば肝炎の数値は下がるだろう。
 と、楽観してたら、2本が3本になってしまった。禁酒(というか減酒)12日目、朝起きると腰がおかしい。肝臓がやられているときの症状だ。ビール3本はやはり多すぎた。翌日から2本に戻す。

車椅子で外を散歩する父
夏月見草

■マッサージ

 喫茶店「夢」の客に紹介され、「野村マッサージ」へ行ってみた。教会のすぐ上にある。マッサージは久し振りだ。以前、市民病院のリハビリ担当だったという人。これが、非常に丁寧。特別な技術を使うわけではないが、マッサージの基本をたっぷり1時間半やってくれるのだ。90分4000円は安い。当日は体がぐったりしたが、翌日から効いてきた。
 一か月に一回は治療してもらおうと思う。

招かれず
庭のやまぼうし

■黄色い小便

 朝食後、ビタミンC2錠とチョコラBBを1錠服んでいる。これは30年続く習慣である。問題はチョコラBBを服むと、小便が黄色くなることだ。排尿のたびに先っちょをトイレットペーパーで拭いているが、どうしてもブリーフが黄色く汚れる。洗濯のとき「ワイドハイター」というしみ抜きを吹き付けて洗わなければならない。
 田舎に来て、自分で洗濯をするようになって気づいたのだが、東京時代、妻はどうやって洗っていたのだろうか。

靴下を自分ではく父
あおい

■トイレ問題

 次は排便に関する話。我が家のトイレにはウオシュレットが付いているので、便による下着の汚れはない。回数の問題である。朝一回排便すれば、その日は便意なしという人もいるらしいが、自分は昔から何か食べるとトイレに行きたくなる癖がある。腸が弱いせいだ。だが、便意があってトイレに座っても出ないことが多い。
 最近の傾向は、まず朝、洗面後一回、朝食後二回。つまり三回に分けないと前日分が出きらないのである。ときには四回という日もある。午後は夕方から夜にかけて、便意はあるが、排泄できない。これが気分悪い。
 それで決めた。午前中に排便をすませたら、翌朝までいくら便意があってもトイレに行かないことにしたのだ。これが成功している。便意は神経の問題で、我慢してほっておけば自然に消えると知った。
 トイレ問題は苦労している人が多いらしい。ことに胃腸関係の手術をした人は大変とか。どこに公衆トイレがあるか、すべて調べつくしているほどだ。

カラー
なでしこ

■キレる人間

 最近、ナイフや包丁を振り回して、無差別に人を殺傷する事件がふえている。都内の駅では、客が駅員に暴行する件数が以前の倍になっているとか。
 つまり、キレる人間が多くなったということだ。何故か。
 私見だが、これは食い物と関係があるのではないか。インスタント食品やハンバーガーなどのジャンク・フードを食べ過ぎて、遺伝子がエラーを起こし、サイコパスになるのではないか。貴志祐介の『黒い家』でそんな解説があったような記憶がある。

テンニンギク
ペチュニア

■黒澤明

 今月はDVDで黒澤明の全作品を見返した。「姿三四郎」から「まだだよ」まで27本。もっとあるかもしれないが、この町の「三洋堂」に置いてあるものはすべて見た。
 評判のあまりよくなかった「どですかでん」「影武者」「乱」などもきちんと見ればよく出来ている。呆れたのは「白痴」である。4時間の作品を166分に縮めたせいか、さっぱりわけがわからない。ドストエフスキーの原作を踏まえているらしいが、昔読んだ小説の内容は忘れている。「白痴」で憔悴しきったところへ「羅生門」のヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞の知らせがあって、黒澤は救われたのだ。
 何度見てもいいのは、やはり「七人の侍」。今回は3回も見てしまったが、何回でも見たい映画だ。

■草刈り

 夏草が伸びてきたので、馬島さんに頼んで草刈り機を買うことにした。鉄の歯は怖いので、紐が回転して刈るやつだ。ガソリンで動く。めがね、面付きヘルメット、草よけネットなど一式で3万円。今後の草刈りは自分でやることになるので、長い目でみれば安い買い物だ。馬島さんに刈り方を教えてもらい、まず畑のほうから始めた。1時間も刈ると、全身汗ぐっしょりで疲れる。肩から担いでいるので、腰にも来る。終わるとシャワーを浴び、下着からすべて着がえなければならない。

草刈り機
無題

■マレットゴルフ

 今、この町で大流行しているのがマレットゴルフ。ゲートボールと似ているが全然違う。スティックが木ではなく鉄。ボールの大きさは同じくらいかもしれないが、硬いプラスチックでできている。団体ゲームではなく個人ゲーム。
 ルールは基本的には通常のゴルフと同じ。雑木林などを切り開いて36ホールある。1ホールは短いがパー3から5まである。上り坂だったり、曲りくねったりしている。幅が狭いので真っ直ぐ打たないと大木を横にした柵を越えてOBになってしまう。またホールの周囲が盛り上がっているので、パットがなかなか決まらない。
 同級生の高木茂家に最初連れていかれてから、はまってしまった。1万円でマレットゴルフ・セットを買った。暇なときは隣の空き地で練習している。老人と女性が多い遊びだが、けっこう技術がいる。それに歩くから健康にいい。
 ネットで調べると最初は福井県で始まり、長野県で流行して岐阜県まできたらしい。普通のゴルフと違って、予約できないので早い者がち。だから土日は混む。マレット専用ゴルフ場はこの町周辺では二か所しかない。
 坂本の茄子川にある二軒屋コースは、36ホールでパー144だが、大きな大会の優勝者は100をきるとか。自分は169だった。つまり25オーバー。まだ初心者だから仕方ない。これからは、どんどんスコアが上がっていくはず。楽しみ。使用料はわずか300円。     

1万円で買ったマレットゴルフのセット
マレットゴルフをする同級生の高木

■温泉旅行

 6月23、24日(土日)で温泉旅行に行った。自分が外泊するのは3年振りくらいか。メンバーは「発著世」(中学3年3組同窓会の名前)の幹事7名。(男4、女3)。今年の同窓会をどうするか、というテーマはあったが、幹事だけで旅行するのは、自分が帰省してから初めて。行き先は山梨の塩山温泉。7人乗りのレンタカーを借り、男3人(自分は運転できない)が交代で運転した。
 まず、小海線にある「平山郁夫シルクロード美術館」。1階は平山郁夫が集めたシルクロードの仏像や器などが展示されている。2階は平山郁夫のシルクロード作品。砂漠を行くらくだのキャラバンがメイン。

平山郁夫シルクロード美術館

 そのあと塩山に向かい、武田信玄の菩提寺・恵林寺を見る。庭が美しい。
 夕方5時「塩山荘」着。すぐ温泉に入る。アルカリ温泉だが、かすかに硫黄の匂いがする。6時から宴会。料理は本格的な懐石だった。
 カラオケ・ルームがあったのでしばらく歌ったあと花札の「あいだ」という博打。深夜12時に解散して就寝。自分はセルシンとデバスを服んだが、なかなか眠れなかった。

武田信玄の菩提寺・恵林寺で
塩山荘前の仲間たち

 翌朝は、7時に洗面を兼ねて温泉につかる。8時朝食。
 10時に宿を出発し、まず「甲斐ワリナリー」で山梨ワインの試飲。おいしいが、禁酒中なので少しにする。
 次が「山梨県立美術館」。会社時代、自分は甲府担当だったので、この美術館には何度も入ったことがある。ミレーの「種まく人」で有名。特別展は「マリー・ローランサンと東郷青児」。これが意外によかった。日本画壇に君臨した東郷青児だが、その俗っぽさで評判がいいとは言えなかった。その彼が若い頃のパリ留学時代、ピカソの影響をうけた作品が展示されていて、ちょっと印象が変わった。

昇仙峡の滝

 美術館の向かい側には「山梨県立文学館」があり、ここも特別展「石川啄木 愛と悲しみの歌」をやっていた。啄木の直筆やローマ字日記の現物を初めて見た。特別展はどれも最終日だったのは幸運。
 昇仙峡を見て、サービス・エリアに二か所ほど寄り、夕方7時過ぎ、中津川着。楽しい二日間だった。

■スパルタカス

  新聞か雑誌で紹介されていた、アメリカのTVシリーズ「スパルタカス」のDVD全7本を「三洋堂」で借りる。これがすごい。男女のヌード(ペニス丸見え)やセックスシーンがどんどん出てくる。グラディエイターが主人公だから戦闘シーンは血がどばどばの残酷さ。アメリカでは、いったいどの時間帯に放映されていたのだろうか。友情や恋愛でまぶしてあるが、日本ではありえないTVドラマ。7本で一応「完」となっているが、近くシリーズ2が出てくるだろう。そういう終わりかただ。

川を埋めた道路にある水地蔵
野いばら

■コンサート

6月30日(土)
 午後3時半過ぎ、市内から車で40分くらいかかる加子母という山村にある、「明治座」で行われたクラシック・コンサートに連れていかれた。今年で15回目だそうだ。
 そもそもは、東京芸大名誉教授だった故・田中千香士氏が始めたもので、氏が亡くなったあとも、その遺志を継いで行われている。芸大出身者や学生によるオーケストラ。今回は白井圭氏がヴァイオリンと指揮で、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲と、交響曲第5番「運命」が演奏された。
「明治座」は明治27年に建てられた大型木造建築(岐阜県重要文化財指定)の芝居小屋である。本来は地歌舞伎用なので、椅子席はなく、客は畳に座布団をしいて座る。二階も含めてキャパは300人くらいか。満員だった。
 この古い木造建築とクラシック音楽のミスマッチが素晴らしい。木の空間に音がよく響くのだ。東京のサントリー・ホールより気分がいい。感動してしまった。
 幕間に紹介された「ダブルバスーン」という楽器を初めて知った。ベートーヴェンの「運命」で使われている。1メートルほどの太い金管が2本重なっていて、吹く部分は細い弦のようになっている。「ブオーン」「バオーン」という低い大きな音が出る。
 演奏中の位置は右後ろで、自分が座った場所からよく見えた。注意していると「ブオーン」という音がよく聞こえた。
 夕方5時開演、7時半終了。
 
明治座の幟
明治座の内部

■生楽館

 父が入居している多治見の「生楽館」(きらくかん)へは、今月7日に弟が面会にきたほか、父の短歌の弟子たちも訪ねているようだ。これまで火金と週二回様子を見に行っていたが、週一回水曜日だけにすることにした。交通費がかかり過ぎるのと、父が週一回でいいと言うので決めた。
 父は忘れっぽいが、意識はしっかりしている。食欲もある。年内は大丈夫だろう。膀胱ガンの症状がいつ顕在化するかが問題だが。 
 
父に面会にきた短歌の弟子たち
父と弟

(次回へつづく)


大島 一洋  (おおしま・いちよう)
1943年岐阜県中津川市生まれ。早稲田大学第一文学部美術専修科卒。
大和書房を経て、平凡出版(現マガジンハウス)に中途入社。「週刊平凡」「平凡パンチ」「ダカーポ」「鳩よ!」などの雑誌および書籍編集にたずさわり、2005年定年退職。現在はフリー編集者&ライター。著書に『芸術とスキャンダルの間』(講談社現代新書)。
 
 
 
 


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