そら飛ぶ庭
   

介護日記
 
2011.9.6 

Diary of Country Life
Nursing of My Parents

火災報知器鳴る

日帰り同窓会

父の憂鬱

大島  一洋 

■深夜に地震

8月1日(月)晴のち曇
 天気がよさそうなので、応接間の椅子カバーと台所のカーテンを干す。
 1時間仮眠して台所へ行くと、シンクの洗い桶に父の食器が漬けたままになっていた。忘れたのか、気力がなくなったのか。洗って笊に入れる。父は寝室でぐったりした様子で寝ていた。
 正午、きしめんができたので父を呼ぶと、辛そうに台所へ来た。「気分、悪いのか」と聞くと「気分がどうのこうのという問題より、その前の生きているかどうかという問題や」と答えた。老衰の心境だろうか。そのくせ、食欲だけはある。食べたくないと言ったことがない。
 午後、「夢」「アピタ」といつものコースを回って1時半帰宅。坂道の落ち葉を掃き、干してあった椅子カバーとカーテンを取り入れ、ダンボール箱に収納する。
 夜、「にしの」「いちりき」とはしご。11時半帰宅。シャワーをさっと浴びて「ラジオ深夜便」を聞いているとき、いきなり地震。けっこう揺れた。ラジオでは震源地は駿河湾沖というので、いよいよ来たかと覚悟したらすぐおさまった。余震も津波警報もなし。中津川は震度3だった。

ひまわり
ハラトラノオ

8月2日(火)曇
 夜7時、「かかし」で同窓会の幹事会。すきやきパーティのはずだったが、放射能汚染問題で牛肉が手に入らず、豚しゃぶに変更になっていた。がっかり。放射能肉を食べたかったのに。この歳なら癌になる前に死んでる。
 
8月3日(水)晴のち曇
 午後、久し振りに「山洋堂」まで歩き、DVD5本借りる。いつものコースを回って帰宅し、父の寝室、茶の間、廊下に掃除機をかける。
 夜、「にしの」。客5人。11時帰宅して入浴。麦焼酎の水割りを飲みながらヘンリー塚本作品。

白いてっせん
花とうがらし

■父の無気力

8月5日(金)曇のち晴
 9時になっても父が起きてこないので、寝室をのぞくと寝ている。死んでるんではないかと思って体を揺すると「なんや」と返事した。「もう9時だよ」と伝えると「もう9時か」と言って起きた。
 午後、買い物から帰って寝室をのぞくと、父が苦しそうにベッドに座ってうつむいている。「大丈夫か」と聞くと「大丈夫や」と答えた。どうやら熱中症ぎみらしい。ペットボトルは2本置いてあるのに、あまり飲んだ様子がない。
 こんなに体調が悪そうなのに夕食は出したもの全部きれいに食べる。
 夜、DVD「シャッター・アイランド」を見る。デカプリオとスコセッシ監督の作品だが、なんだかわかりにくい。わかりにくいことで有名な映画らしい。

8月6日(土)曇のち雨
 昨日同様、9時になっても父が起きてこないので、寝室へいって起こす。「起きても、なあんにもすることありゃせん」と言いながら起きた。
 夕方7時、熊崎夫妻と落合のおがらん神社の祭りに行ったが、雷雨が止まず降りっぱなし。Gパンの裾がびしょびしょになってしまった。仕方ないのでタクシーを呼び「にしの」へ。熊崎が4曲歌った。
 前田武彦死去。82歳、肺炎。

新聞を読む父

8月7日(日)晴
『文藝春秋』9月号が届いたので、受賞作なしの芥川賞選評を読む。今回は全体に作品の印象が薄かったようだ。
 夜、DVD「マイレージ・マイライフ」を見る。結婚がいかに無意味か、でも少しは有効という微妙な生き方を描いている。
 9時「にしの」。10時半帰宅。入浴。

8月8日(月)晴 猛暑
 朝食後、洗濯。
 午後、猛暑のなか「三洋堂」まで歩く。DVD5本借りる。
 夜、DVD「白い嵐」を見る。1961年にあった実話らしい。1961年といえば自分が留学した年だ。

8月9日(火)晴
「アピタ」の魚屋で980円の秋刀魚を三枚におろしてもらい、生姜で煮た。さすがにうまいが、980円は高いなあ。
 夜、DVD「88ミニッツ」を見る。アル・パチーノが老けた。感じのいい映画ではない。

鬼百合
白い紫陽花

■夏祭

8月11日(木)曇のち晴
 午後から、馬島さんが古い雨樋の交換に来る。けっこう時間がかかりそうで、3時にお茶を出す。饅頭と雑菓子。夕方6時に終了したが、もうひとつ上の屋根の雨樋が錆び付いているのが見つかる。これは涼しくなってからやることに決める。
 夜、DVD「その土曜日、7時58分」を見る。シドニー・ルメット監督。だんだん追いつめられていく男たちの様子にリアリティがある。

8月12日(金)晴
 今日から夏祭り。
 最初は花火大会。夕方7時に熊崎夫妻と待ち合わせ、桃山方面へ歩く。出店がたくさん出てすごい人手。熊崎が予約しておいた「KISAKU」という店の外のテーブルでぴざやスパゲティを食し、ワインを飲む。目の前に大きな花火がどんどん上がる。絶好の眺めを堪能。9時すぎ「いちりき」でカラオケ。客だれも来ず、われわれだけだった。10半解散。
 日吉ミミ死去。64歳、膵臓がん。

花火大会

8月13日(土)晴
 夏祭り二日目。夕方7時過ぎ、駅前通りの「おいでん祭」を見にいく。まず「風流踊り」。これは雨乞い踊りなのでシンキ臭い。このあとが「企業神輿」。市内の企業が手作りした神輿を社員がかつぐ。地味なのや派手なのや、毎年同じのやなど、けっこう賑わう。
 写真を撮ったあと「にしの」「いちりき」とはしご。

風流踊り
企業神輿
立派な企業神輿

8月14日(日)晴 猛暑
 新人文学賞の下読みを終了。最終候補作8本を決める。
 夜、「にしの」。10時半帰宅。シャワー。

8月15日(月)晴
 午前11時頃、台所の火災報知器が鳴った。あわてて飛んでいくと、台所は煙もうもう。父が味噌汁を温めようとガスに火をつけ、消し忘れたのだ。鍋の底の豆腐やワカメが煙を上げている。父には火災報知器の音さえ聞こえない。我が家のガス台には高熱センサーが付いていないので、ほっておくと火事になってしまう。シンクに水を出して鍋を放うり込んだ。自分が家にいてよかった。「ただ、消し忘れただけやないか」と、父に反省の色なし。明日から味噌汁はインスタントにする。今後、父にはいっさい火を使わせないと決める。
 夜、DVD「消された殺人」。殺人現場を掃除する職業が本当にあるのだろうか。面白い。
 9時入浴。缶ビール、焼酎水割り。

■アウトレイジ

8月16日(火)曇時々晴
 父が10時半になっても起きないので寝室へいくと、ベッドに座っている。「どうしたの?」と聞くと「なんというのかなあ、自分が普通の人間じゃないように思えるときがある。これがボケかなあ」と言う。「それだけ自分でわかってれば大丈夫だよ」と答える。昨日の味噌汁事件が影響しているのかもしれない。

8月17日(水)晴
 午前中、「三洋堂」まで歩く。5本借りる。午前中だから涼しいと思っていたら、だんだん暑くなってきた。
 東京の妻が野菜ジュースを送ってきた。お礼の電話をしているうちに、話が変になって最後は喧嘩して電話を切る。東京には帰りたくない。
 夜、北野武監督のDVD「アウトレイジ」(暴行、暴力という意味)を見る。全員が悪人。どんな暴力が面白いかを先に考えてストーリーを作っていったらしい。よく出来ている。三浦友和を最悪のヤクザの顔にしたのは大成功。椎名桔平もいい。

8月18日(木)晴のち曇
 母の月命日なので、仏壇を開け、線香をあげる。
 父の寝室、茶の間、廊下に掃除機をかける。
 夕方、プロバイダー「タケネット」のFさん来。新しいパソコンの疑問点を聞く。かなり解消されて使いやすくなった。
 夜、DVD「アイアンマン 2」を見る。つまらないので途中で見るのを止めた。
 父に入浴させ、自分も入る。「ラジオ深夜便」。

8月19日(金)雨のち晴
 朝食後、洗濯。雨がひどいので廊下に干す。
 夜、DVD「レッド・ドラゴン」を見る。「羊たちの沈黙」の前の作品。アンソニー・ホプキンスがやや太っているが、これは仕方がない。
 9時「にしの」混んでいた。11時帰宅しシャワー。

黒いひまわり
ペニチュア

■怖い熱中症

8月20日(土)雨のち曇 夜小雨
 明日、中学生の同窓会で出かけるので、父に予定表を書いて渡す。日帰りだが、帰宅は夜9時ころになるので、夕食は父一人ですることになる。日曜日だからヘルパーさんが来ない。メモを読んだあと、父は、
「俺だって、まだ自分のことは自分でできるからな」
 と言った。これが怖いのだ。

8月21日(日)雨
 父の夕食用の品をテーブルにならべ、卓上傘をかぶせる。ガス台は念のため発火用の電池を抜いて引出に隠した。父に「火を使うな」と言ってあるが、何をするかわからない。
 午後2時半、父に「出かけます」と言って家を出る。
 午後3時に駅前集合で、南木曽の「ホテル木曽路」へ行く。立派なホテルである。風呂は広いし、湯がつるつるする。露天風呂も広いが、あいにくの雨。
 6時から宴会。23人が集まった。食事もよかった。食前酒からデザートのゼリーまで品数14品。鮎の塩焼きを今年初めて食べた。最後の釜飯は食べきれなかった。
 宴会が終わってビンゴーム。パソコン用のはたきが当たった。
 日帰り組は夜8時のバスに乗った。9時帰宅。父はまだ起きていた。
 米を洗い、炊飯器にセットし、明日はゴミ出しの日なので可燃ごみをまとめる。
 全部終わったら10時だった。

同窓会・部屋での宴会
同窓会記念集合写真

8月22日(月)曇のち晴
 午前中、「三洋堂」まで歩きDVD5本借りる。午前中だから涼しいと思ったら大間違い。蒸し暑くて汗だらだら。 
 午後、父の寝室、茶の間、廊下に掃除機をかける。
 夜、DVD「マッチポイント」を見る。以前に見たことがあると気が付いたが最後が思い出せないので全部見た。これはよくできたミステリーである。犯人が捕まらないので忘れてしまうのだ。監督、ウディ・アレン。
 竹脇無我死去67歳。脳出血。

8月24日(水)晴時々雨
 午後3時ころ、陽がかげったので長靴にはきかえ溝さらい。落ち葉が溜まっている。ほんの15分でダウン。熱中症になりそうになって止める。
 夜、DVD「ブラックブック」を見る。ナチ支配下のフランスが舞台。テーマは裏切り。感じの悪い映画。

ハイビスカス
ハンカチの木

■まだらボケ

8月26日(金)晴のち雨
 夜、DVD「十三人の刺客」を見る。中津川、落合が出てくる。これはすごい映画。最後の45分間は斬り合いが続く。さすが三池崇史監督。

 市長のリコール運動が始まっている。これは説明するとめんどうなので止める。

8月27日(土)晴
 吉村文具店から「障子貼りセット」を買ってきて、自室の破れた一枚を貼る。
 夜、DVD「告白」を見る。原作は読んだが記憶が薄い。映画はけっこう怖い。松たか子がブスに見える。

8月28日(日)晴
 昼食の準備をしていると父が台所へきて「俺は、朝飯食ったか?」と聞く。本当に忘れているのだろうか。
 茶の間の入り口の破れた障子一枚を貼る。
 夜、DVD「カイジ」を見る。役者は豪華(藤原竜也、天海祐希、香川照之、松尾スズキ)だがつまらない。原作が漫画だとすぐわかる。

8月29日(月)晴
 朝、起きてきた父が「なんだか病気になったみたいや」と言うので「それがボケや」と答え「食欲があるうちは絶対死なんから大丈夫や」と耳元で怒鳴ってやる。「生きとってもなあんにもすることがありゃせん。なんのために生きとるのや」と聞くので「生きとることが大事や」と返事する。
 鬱の気配が出てきたか。短歌を作るというストレスから解放されて、しばらくは機嫌よさそうに見えたが、父から短歌を取ったら何もない。どうしていのかわからなくなっているのだろう。

8月30日(火)晴
 午後3時、父とケアマネージャー垣内さんが面談。「頭がぼんやりしている」と父が言うので、デイサービスを利用してみたらどうかと勧められる。集団生活を嫌う父なので無理かと思っていたが、「一度見学に行ってみるか」と答えた。家で雑誌と新聞、テレビを見ているだけの生活では、絶対おかしくなる。台風が去って天気がよくなったら、「ニチイ・デイサービス・センター」へ見学にいくことにする。
 夜、DVD「インセプション」を見る。まったくわけのわからない映画。

父とケアマネの面談

8月31日(水)曇
 今月の生活費精算。総支出11万7941円。うち特別出費の雨樋修理代2万7000円をひけば、9万905円で実質生活費は10万円以内でおさまった。
今月の日記は、父のボケが進みはじめたらしいことが中心になった。来月はどうなっているか。      

(次回へつづく)


大島 一洋  (おおしま・いちよう)
1943年岐阜県中津川市生まれ。早稲田大学第一文学部美術専修科卒。
大和書房を経て、平凡出版(現マガジンハウス)に中途入社。「週刊平凡」「平凡パンチ」「ダカーポ」「鳩よ!」などの雑誌および書籍編集にたずさわり、2005年定年退職。現在はフリー編集者&ライター。著書に『芸術とスキャンダルの間』(講談社現代新書)。
 
 
 
 


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