そら飛ぶ庭
   

介護日記
 
2011.7.5 

Diary of Country Life
Nursing of My Parents

自分、68歳

新しいパソコン

父、決意する

大島  一洋 

紫陽花
これも紫陽花

■誕生日

6月1日(水)雨
 今日で68歳になった。いつ死んでもおかしくない年齢である。
 念のため山田風太郎の『人間臨終図巻』で調べてみると、68歳で亡くなっているのは以下の人たち。
 大伴家持 (『万葉集』の編者)
 北条政子 (頼朝の妻)
 新井白石 (六代将軍・家宣の儒臣)
 シュリーマン (トロヤの遺跡を発掘した考古学者)
 伊藤博文 (初代首相。ハルピンで安重根に暗殺された)
 ゴーリキー (『どん底』で有名なロシアの作家)
 山室軍平 (日本救世軍の創設者)
 桐生悠々 (軍国主義批判を続けたジャーナリスト)
 米内光政 (海軍大臣)
 東郷茂徳 (東条内閣外相)
 中村吉右衛門・初代 (歌舞伎役者。現在の吉右衛門の祖父)
 田中絹代 (女優)
 新田次郎 (作家)
 田岡一雄 (山口組三代目組長)
 池田弥三郎 (民俗学者)

 すごいメンツばかりだ。彼らが68歳までにしたことを考えると自分が情けなくなる。といっても、どうにもならない。人はいつか必ず死ぬということだ。
 ちなみに、父が100歳以上で死んだとして、『人間臨終図巻』を調べると、以下の人たちの名前がある。
 野上弥生子 (作家 100歳)
 物集高量  (国文学者 106歳)
 天海僧正  (家康の知恵袋 107歳)
 平櫛田中  (彫刻家 107歳)
 大西良慶  (京都・清水寺の住職 108歳)
 泉 重千代 (鹿児島県徳之島伊仙町の名誉町民 121(106)歳)

 ついでに記しておけば九十九歳で亡くなった人は、『人間臨終図巻』では、諸橋轍次(漢学者)一人だけである。

 68歳現在の自分の体調をまとめておこう。
 病名
  アルコール性肝炎(ガンマGTP300)
  アレルギー性結膜炎(2か月に1回通院。1日5回目薬点眼)
  白内障(軽いほうだが、風景が霞んで見える)
  左ひじ痛(頸椎のずれからきている。針灸治療を月2回)
 こんなところか。命にかかわる病気はないが、うっとおしいものばかり。

トリマ
ばいかうつぎ

■パソコン壊れる

6月5日(日)曇
 夜、パソコンをいじっていたら、突然ぷつんと切れて動かなくなってしまった。以前にも一度あったバッテリー障害かもしれない。
6月6日(月)晴
 プロバイダー「タケネット」のFさんに連絡するとすぐ来た。パソコンはしばらく入院ということで持っていかれてしまった。
 夜、朝倉喬司『活劇 日本共産党』を読みつぎ読了。南喜一、徳田球一、田中清玄の三人を取り上げたのは朝倉氏らしいが、急死したため田中清玄の転向後が書かれてないのが残念。船戸与一の解説がいい。

なでしこ
アストロメディア

 数日後、「タケネット」から連絡があり、修理代が8万円もかかるから、新しいのを買ったほうがいいという。仕方なく12万円のパソコンを買うことにした。
 パソコンが届くまで仕事にならないので、夜はずっと志ん生の落語全集をテープで聞いた。彼の全盛期の録音で、何度聞いてもうまいし面白い。

またも紫陽花
山藤

 6月17日に、新しいパソコンが届いた。NECの新製品。「タケネット」のFさんに初期設定をしてもらい、さっそくいじってみる。メールもマイドキュメントも以前とまったく違うのでしばらくとまどったが、すぐ慣れた。
 最も嬉しいのは、片面2層のDVDを見られるようになったこと。「三洋堂」から借りてきて、とりあえず「96時間」「パッセンジャーズ」「ターミネーター4」「ウオンティッド」「トランスポーター3」を見る。画面は美しいが、なぜか音声が小さい。最大にしても聞きにくい。洋画は字幕だからいいが、日本映画を見るときはどうなのだろう。黒川きららやひなた結衣を見るにはちょうどいいが。

さぼてんの花
そばを食べる父

■同人誌を退会

6月14日(火)晴
 参加している同人誌のゲラが届いたので校正をする。3時間かけて一冊分を終える。
 自分は参加して何年になるのだろう。10年くらいか。年に3回、20枚の短編を発表してきた。最初は私小説から始めたが、だんだんネタ切れになり、最近は官能小説(といってもたいしたことはないけれど)が多くなってきて、「これでいいのだろうか、雑誌の品を落としているのではないか」と思い始めた。68歳になったことも影響しているかもしれない。
 小説を書くことは辛いけど、書き始めてしまえば、登場人物が勝手に動き始めるので、これほど面白い仕事はない。ただし基本的に才能のない人は続かない。
作品のレベルは自分ではわからない。新人賞に応募したことがないからだ。小説誌の編集長を6年つとめ、現在も某新人賞のプロデュースをしている立場である。小説は読むと書くでは大違いである。編集者から作家になった人はいるが、多いとは言えない。
 自分は学生時代に「文芸首都」という同人誌に参加し、故.中上健次、勝目梓氏らと一緒だった。「文芸首都」には3回作品が載ったが、出版社に就職してからは、書くのをやめてしまった。編集のほうが楽しかったからである。やがて「文芸首都」は廃刊になった。
再び小説を書くようになったのは小説誌の編集長を降りてからである。55歳を過ぎていた。趣味のつもりで始めたのだが、だんだん辛くなってきた。
 区切りをつけるために、思い切って退会することにした。これからは「老人小説」を試してみようと思っている。

ハイビスカス
アオモジ

■高齢者SEX

 最近の週刊誌には、高齢者むけSEX特集が多い。たとえば『週刊朝日』6月24日号では「70歳からのセックス 『終の棲家』で咲いた恋」。7月1日号には「体験者が語る『最後の恋』の始め方」などだ。
 個人差は大きいが、多い不満は「夫が求めても妻に拒否される」というもの。60歳を越した妻は、夫とのセックスをめんどくさいと思っているらしい。潤いがなくなって痛いだけ、という告白がある。するとそれに対して「ベビーオイルを使ってみたら」とアドバイスする声も載っている。男はバイアグラでなんとかなるが、問題は女性側の気持ちの問題のようだ。
 ちなみに自分の場合は、正直に言うと月に2、3回くらいのONですませている。オカズは巨乳女優のAV。性欲の元は長芋であることが最近わかってきた。とにかく毎日長芋を食べている。昼食の蕎麦には必ず長芋を擦ったものをたっぷり入れる。夕食のおかずは長芋の千切り。これは効きます。ぜひお試しを。即効性はないから毎日食べなければだめですよ。

薔薇
あさぎり草

■地デジテレビ入る

 我が家のテレビは茶の間に一台あるだけ。自分はほとんどテレビを見ない。アナログからデジタルに替えろというテロップがずっと流れていた。父は「なんで替えなあかんのや。このままでええ」と言い続けてきた。
 それがある日突然「お前にまかすから、新しいテレビにしろ。それと冷蔵庫も買い換えろ」と言い出したのである。冷蔵庫は水漏れが多く、一日一回は床がびしょびしょになる。それを処理する自分を見ていたのだろう。
 さっそく「ニシオ電気」へ行き、幅60センチのテレビとパラボラ・アンテナを注文した。6月27日、テレビが届き、パラボラ・アンテナがついた。やはり画面がきれいだ。ついでに冷蔵庫を調べてもらい、同じサイズの日立の製品を買うことに決める。
 父曰く「俺はもういつ死ぬかわからんから、生きているうちに、家の直すところは全部直しておきたい。雨樋を調べろ。塗装が剥げとったら塗り直せ」
 父は決断したらしい。頭がしっかりしているうちに、やるべきことをやっておこうと。
 今月の事件は、父のこの決断である。明日から家の隅々を点検する作業をはじめる。

新聞を読む父

(次回へつづく)


大島 一洋  (おおしま・いちよう)
1943年岐阜県中津川市生まれ。早稲田大学第一文学部美術専修科卒。
大和書房を経て、平凡出版(現マガジンハウス)に中途入社。「週刊平凡」「平凡パンチ」「ダカーポ」「鳩よ!」などの雑誌および書籍編集にたずさわり、2005年定年退職。現在はフリー編集者&ライター。著書に『芸術とスキャンダルの間』(講談社現代新書)。
 
 
 
 


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