そら飛ぶ庭
   

介護日記
 
2010.12.14 

Diary of Country Life
Nursing of My Parents

自分の結膜炎治らず

父、財布忘れる

苛々する自分

大島  一洋 

■中国の脅威

11月1日(月)小雨のち曇
 7時半起床。父を起こして胃の具合を聞くと「大丈夫、痛くない」と言う。可知医院へも行く気がない。胃痛は完治したようだが、朝食を軽めにする。
 午後、十六銀行から10月のシルバー料金1万3105円振り込んだあと、「縹(はなだ)」「アピタ」と回って2時頃帰宅。10月分の生活費を精算する。総支出10万3815円。10万を少し超えた。父に渡す。しばらくして「ご苦労さん」と言って清算書を返してきた。
 夜、DVD「ダメージ」Bを見る。よくわからないドラマ。

ピラカンサス


11月2日(火)曇
 台所のストーブを初めて使う。寒くなってきた。
 午後、三洋堂まで歩き、DVDを返却。借りず。図書館で松本清張コレクション『短編集W』を借りる。「縹」「アピタ」と回って2時帰宅。坂道の落ち葉を掃く。夕方まで『週刊文春』を読む。
 夜、『週刊朝日』を読んだあと「にしの」へ。11時帰宅。入浴。

11月4日(木)晴
 朝食後、洗濯。1時間仮眠。
 午後、東京の友人から電話。出版界はひどいことになっているらしい。早期退職による人員削減、給与の減額などなど。自分が今さら東京へ戻っても仕事はないと知る。
 夜、『清張コレクションW』の「西郷札」「くるま宿」「啾々吟」「転変」「特技」を読む。「西郷札」は再読だが、すっかり忘れていた。夜食におにぎり。

11月5日(金)晴
尖閣諸島沖で中国の漁船が日本の巡視船に衝突した映像がネット上に流れた。中国は怒るかもしれないが、日本人全員が見ておくべき映像だ。中国の覇権主義はアジア全域に及ぶ。また、あちこちの日本の土地が中国の財閥に買われているらしい。日中戦争の復讐か。日本はいったいどうなるのだろう。こんな田舎にいても不安だ。
台所用の小さい掃除機が壊れたので「アピタ」の家電売り場で新しいのを買う。8800円。充電式で吸引力が弱い。

11月6日(土)晴
 午後、三洋堂でDVD3本借りる。パソコンでは片面1層しか映らないので、借りられるDVDが少ししかない。「縹」「アピタ」と回って2時帰宅。父の寝室、茶の間、和室、廊下に掃除機をかける。
 夜、DVD「デスパレートな妻たち」@を見る。
 清張コレクション『短編集W』の「面貌」を読んだあとラジオで中日対ロッテ戦を聞く。なんと延長15回で引き分け。終わったら深夜12時だった。

■紅葉狩り

真っ赤な紅葉

11月7日(日)晴
 午後12時半、熊崎の車に乗り、南木曽方面へ紅葉狩り。いい天気。まず柿其(かきぞえ)渓谷。滝壷までの上り下りする長く細い道がきつい。膝がガクガクになってしまった。次に阿寺(あでら)渓谷。紅葉は素晴しい。最後に夕森公園。ちょうど「もみじ祭」の日で紅葉は最高。夕方4時半帰宅。

柿其渓谷の滝
夕森公園の紅葉

 夜、「デスパレードな妻たち」Aを見たあと、ラジオで中日対ロッテ戦を聞く。なんと今夜も延長戦。12回に中日が力尽き7対8でロッテが優勝。すごい日本シリーズだった。それにしてもパリーグ3位だったロッテが日本一とは。短期決戦はどうなるかわからないものだ。

11月10日(水)曇
 午前中、1時間仮眠。父が歌会に出かける日なので、11時半に昼食。
 午後、「梅の木」「アピタ」と回って2時帰宅。結膜炎で目がシバシバする。
 父の寝室、茶の間、和室、廊下に掃除機をかける。
 夕方、シルバーさんが20分遅れるというので、鮭&大根煮の大根を刻んで鍋で茹でる。里芋の皮を剥き、小さく切って別の鍋で茹でる。そこまでやったところへシルバーさん到着。なんとか5時に間に合った。
 夜、『文藝春秋』12月号を読む。特集「安保と青春 されどわれらが1960」が面白い。31人がそれぞれの1960年代を語っている。自分は中津高校2年生だった。美術部で石膏デッサンなどをしていたが、市内の安保反対のデモに参加した記憶がある。まだ童貞で、初体験したのは1962年の夏だった。

朝、発声練習をする父

11月11日(木)晴
「中日スポーツ」が「オレ流語録で振り返る激闘日本シリーズ」で落合監督のコメントを集めている。その中から、いくつか拾ってみる。
「1点取ったら1−0で勝つ、2点取ったら2−1で勝つ野球をやらなきゃいけない。そうやって勝ってきたチームなんだ」(第3戦に1−7で負けて)「ヘタな野球だなあ。ヘタだ。何年やってもうまくなんねえなあ」(第4戦4−3で勝って)「ここまでは想定内。3つは負けられる」(第5戦4−10で負けて)「よくここまで勝ち上がった。逆に選手をほめてやるよ。そういう強さは持っている。ただ、相手をねじ伏せて勝ち上がっていく強さはまだない。それはこれからつくり上げていけばいい」(第7戦延長12回7−8で負けて)
 ここまで喋る監督はいない。落合監督というのは堅実な理想主義者のようだ。

 午後8時、還暦合唱団。17日に落合の施設で発表会があるので、そのリハーサル。
 終わって「かかし」で幹事会。12月5、6日の忘年会の人数確認。11時解散。

■東京から仕事

11月12日(金)雨
 午前9時25分発のバスで市民病院。10時に眼科の検診。結膜炎がまだ治っていない。白内障の手術は片目1泊2日で二回に分けたらどうかと言われる。片目でも2泊3日と聞いていたはずだが。まあ来年の話だ。12月の予約をして11時半帰宅。
 夜、清張コレクション『短編集W』の「秀頼走路」「増上寺刃傷」を読んだあと「にしの」。11時帰宅。

11月14日(日)曇
 午後、図書館の資料室で、同人誌に発表する小説「彼女について 2」を大学ノートに下書きする。一時間集中したら疲れてしまった。「縹」「アピタ」と回って3時帰宅。坂道の落ち葉を掃く。
『本の雑誌』12月号を読むと、椎名誠氏が今回で編集長を降り、連載もいくつか変わるようだ。新しい編集長兼発行人は浜本氏。来月から誌面がどう変わるのか楽しみだ。
 夜、図書館で下書きした「彼女について 2」をパソコンに入力。1時間半かかって4枚弱。疲れた。清張コレクション『短編集W』の「疑惑」「五十四万石の嘘」「いびき」を読む。前2作はちょっと無理作り。「いびき」がいい。一日中、文字を書いたり読んだりしたので疲れた。深夜12時にビールでデバス2錠服んで就寝。

11月15日(月)晴のち曇
 白鵬が稀勢の里に破れ、連勝63でストップ。稀勢の里は、先々場所と先場所、白鵬にいい相撲をとっていたので、ひょっとするとと思っていたら土俵際できっちり押し出した。白鵬はやや感情的になってミスしたようだ。
 マガジンハウス広告部から「坊っちゃん文学賞の取り方」の原稿依頼あり。久しぶりの仕事で嬉しいような、面倒なような、不思議な気分。
 清張コレクション『短編集W』の「武将不信」「厭戦」を読んだあと「彼女について 2」の下書きをする。小説は下書きをしないとダメだ。直接パソコンに書くのは無理。大学ノート2ページ書いて中止。
 星野哲郎氏死去。心不全、85歳。

茶の間で新聞を読む父

11月16日(火)晴のち曇
 図書館で夏目漱石の『坊っちゃん』を借りる。久し振りに再読する必要がある。
 夜、大学ノートに書いた「彼女について 2」をパソコンに入力したあと「にしの」へ。
 星野哲郎が亡くなったので追悼カラオケ。「女の宿」「昔の名前で出ています」「アンコ椿は恋の花」「兄弟船」などを歌う。11時帰宅。

■初公開

11月17日(水)晴
 午前7時起床。還暦合唱団が落合の施設「ゆうらく苑」で初めてコンサートを開くため、30分早く起床。自分だけ先に朝食し、父の分には卓上傘をかぶせておく。
 式服の黒いズボンに白いワイシャツと蝶ネクタイに着替え、コートをはおって9時半に道路へ出る。高木茂家の車で市役所駐車場。そこで5台の車に分乗して落合へ。参加者は19人。「ゆうらく苑」のホールは音がよく響いて上手に聞こえる。11時からデイサービスで集まった40人の前で歌う。他人の前で歌うのは初めてである。歌は10曲。「おらが春」(合唱団のオリジナル団歌)「美わしき春」「花」「泉のほとりで」「草競馬」「村祭り」「紅葉」「旅愁」「故郷」「さよなら」。それぞれの歌に団員の解説が付く。45分間。おじいちゃん、おばあちゃんも一緒に歌って喜んでもらえたよう。大成功。自信がついた。
「たつ家」という店で昼食。自分だけ車じゃないのでビールを飲んでしまった。喫茶店「コメダ」でコーヒー。熊崎に送ってもらい午後2時帰宅。パジャマに着替え1時間仮眠。ビールが効いた。

還暦合唱団の発表会

 夜、『坊っちゃん』を読む。昔読んだときほど面白くない。キャラクターを立てるためのあだ名「狸」「赤シャツ」「うらなり」「山嵐」「野だいこ」「マドンナ」をすでに知っているからかもしれない。だが「赤シャツ」が主人公とも言える小説だと、今回わかった。
 黒岩比佐子死去。すい臓ガン、52歳。最近『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』が出たばかりなのに。
 深夜零時入浴。午前1時就寝。

11月19日(金)晴
 午前7時起床。父を起こす。8時15分に可知医院でインフルエンザの注射がある。父は洗面し、8時に出かけていった。自分だけ先に朝食。新聞を読んでいると可知医院から電話。父が財布を忘れたので料金が払えないとのこと。慌てて可知医院まで走っていき、1500円払う。歳のせいでどこか抜けている。「財布を忘れるとはなあ」と父呟く。
 午後、「縹」「アピタ」と回り2時帰宅。
 夜、「坊っちゃん文学賞 小説講義」の原稿を書き始める。9時過ぎ「にしの」。11時帰宅。

11月21日(日)晴
 午後、図書館で資料調べ。
 夜、「坊っちゃん文学賞 小説講義」を書き継ぐ。
 疲れたので、久し振りに志ん生の落語を聞く。

庭のドウダンツツジ

■洩れたメルアド

11月22日(月)雨
 一日中雨。
「父ちゃん、今日は一日中雨だよ」と言うと「雨が降ろうが、天気がよかろうが、一日中家ん中にいるだけじゃ、もうあかんなあ」と自嘲ぎみに答えた。
 午後、雨の中「縹」「アピタ」と回って2時帰宅。
『週刊朝日』の嵐山光三郎さんのエッセイを読んで、親しかった編集者・岡みどりさんがガンで亡くなったことを知り、驚く。まだ57歳。文藝春秋社で村上春樹の担当だった。
 夜、「坊っちゃん文学賞 小説講義」を書き終え、推敲に入る。
 最近、携帯電話に迷惑メールが多い。エッチ系のサイトだから開かずに消去しているが、どこからメルアドが洩れたのだろう。夜になると3回くらい鳴る。

11月23日(火)晴 勤労感謝の日
 午前中、「坊っちゃん文学賞 小説講義」を推敲。
 午後、「縹」「アピタ」と回って2時帰宅。坂道の落ち葉を掃く。掃いても掃いても散ってくる。
 夕方まで推敲。
 夜、「坊っちゃん文学賞 小説講義」をさらに推敲して、マガジンハウス広告部へ送信。やっと終わった。問題がなければいいが。
「田舎日記」52を書き継いだあと「にしの」。11時帰宅。
 北朝鮮が韓国の延坪島を砲撃。戦争が始まるのか。

11月25日(木)晴
 朝食後、洗濯。1時間仮眠。
 午後、「縹」「アピタ」と回って1時半帰宅。後藤理髪店へ行く。
 隣の空き地に雨水が溜まって流れないので、鍬で溝を掘る。肉体労働はしたことがないから、すぐ疲れる。毎日少しずつやるしかない。

けいとう
自宅近くの茶屋坂の紅葉

■苛つく日々

11月26日(金)晴
 午前10時、ケアマネージャー垣内さん来。月末の定期面談。父に変化がないので10分で終わる。
 午後、「縹」「アピタ」「まるみ薬局」と回る。「まるみ薬局」で血圧を測ると159−62。脈拍112。ずっと歩いてきたから高いのだろう。
 2時頃帰宅して、隣の空き地の溝を掘る。
 夜、『波』『一冊の本』を読んだあと「にしの」「いちりき」とはしご。11時半帰宅。

11月27日(土)晴
 午前中、1時間仮眠
 午後、洗濯屋「はりぶん」でYシャツを受け取り、「縹」「アピタ」と回って1時半帰宅。
 父の寝室、茶の間、和室、廊下に掃除機をかけたあと、坂道の落ち葉を掃く。「おちる」という漢字が思い出せず、しばらく困った。完全にボケが来ている。
 明日、廃品回収の日なので、新聞、雑誌、ダンボールを束ね、玄関に出しておく。
 夜、「田舎日記」52を書き継ぐ。
 今日はいろいろ忙しかったせいか、苛々が激しく気が狂いそうになった。こんなときセルシンがあれば一発で落ち着くのだが、あいにく切れている。
 PR誌『本』『波』『ちくま』を読んだあと「にしの」へ。酒を飲んだら、苛々がおさまった。10時半帰宅し入浴。

11月28日(日)曇
 8時になっても廃品回収が取りにこないので、主催の第二中学へ電話。やっと取りにきた。二中の生徒はこの14区に二人しかいないのだそうだ。廃品回収は昔ほど利益が上がらないので、中止になっている地区が多いとか。これからは道路まで自分で降ろすか、燃えるごみに出すしかないようだ。
 洗濯し、新聞を読んだあと1時間仮眠。
 午後、「縹」「アピタ」と回り、いけだ書店で来年のカレンダーを買い、3時頃帰宅。
 夕食後、相撲の千秋楽を見る。横綱・白鵬と平幕・豊の島が1敗で優勝決定戦。白鵬が勝った。
 夜、「彼女について 2」を書き継ぐ。やっと10枚。苛々の原因がわかった。この原稿の見通しが立たないからだ。デバスを1錠だけ服んだら少し落ち着いた。

南天

■メルアド変更

11月29日(月)曇
 午前中、1時間仮眠。
 午後、銀行から東京へ生活費を振り込む。駅前のドコモへ行き、メルアドを変更してもらう。これで迷惑メールがなくなる。
 夜、「彼女について 2」を書き継ごうとしたが、気力がなく、苛つくばかり。中止して『小説新潮』11月号を拾い読む。目がシバシバしてきたので読むのを止め、志ん生の落語を聞く。何度も聞いたはずの噺なのに忘れている。物忘れか認知症が始まったか。

11月30日(火)晴
 寒い。外はマイナス2度とか。両手の指先がしびれる。
 朝食後、1時間仮眠。
 午後、「縹」「アピタ」と回って一度帰宅し、可知医院へ夕方の順番取り。
 11月分の生活費を精算。10万4747円。10万を少し超えた。父に見せると、合計の数字だけ見て「もうええわ、ご苦労さん」と言って返してきた。
 夕食後、5時半に可知医院へ。セルシンの処方箋をもらう。そのまま「まるみ薬局」へ処方箋を出す。帰宅して夕刊、ニュースを見たあと、自室でセルシンを1錠服む。落ち着いて「田舎日記」を書き継ぐ。
 8時半「にしの」。10時半帰宅。
 なんだか、最近はひどくせっかちになってきている。あれもしなきゃ、これもしなきゃと落ち着きがない。父がゆったりとマイペースなのに、自分だけ焦っている。
 今月も何事もなく終わった。強いて言えば、原稿の締め切りが三つあって、自分の精神状態が悪くなっている。これを解決するには、原稿を書くしかない。
 今月の日記は面白くないと言われそうだ。

(次回へつづく)


大島 一洋  (おおしま・いちよう)
1943年岐阜県中津川市生まれ。早稲田大学第一文学部美術専修科卒。
大和書房を経て、平凡出版(現マガジンハウス)に中途入社。「週刊平凡」「平凡パンチ」「ダカーポ」「鳩よ!」などの雑誌および書籍編集にたずさわり、2005年定年退職。現在はフリー編集者&ライター。著書に『芸術とスキャンダルの間』(講談社現代新書)。
 
 
 
 


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