そら飛ぶ庭
   

介護日記
 
2009.5.18 

Diary of Country Life
Nursing of My Parents

父のベッドを買う

父の介護更新2のまま

父と喧嘩になりそうになる

大島  一洋 

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姫りんご

■定額給付金申請
4月1日(水)晴のち雨
 朝食後、洗濯。
 午後、「梅の木」でコーヒーとスポーツ新聞。この町の喫茶店は水曜日がみんな休み。「梅の木」は図書館のまん前にあるため、休館日の月曜日が休みで水曜日はやっている。
 雨が降ってきたので、自宅の父に電話し、洗濯物を取り入れてもらう。
 午後2時半に帰宅。シャツの袖ボタンが取れそうなので、きちんと付け直す。
 夜、DVD「回路」を見たあと読書。

4月2日(木)晴
 午後、三洋堂、図書館、「夢」「アピタ」といつものコースを歩く。帰宅すると、父が古着を引っ張り出して干している。いい天気なので、父としては何か干さないともったいないと思っているようだ。父の寝室、茶の間に掃除機をかける。
 夜、DVD「おくりびと」を見たあと「いちりき」。警察の歓送迎会で混んでいた。11時半帰宅。

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はなみずき

4月3日(金)晴
 先日、父の定額給付金の申請書を送ったが、添付書類として本人確認のため、預金通帳の一ページ目と健康保険証か運転免許証のコピーが必要なことがわかった。最初に市役所から届いた書類に明記されていたが、非常にわかりにくい場所に記してあったため、6割くらいの人が気付かなかったようだ。苦情が殺到したらしく、昨日の新聞に市役所からの「緊急」というチラシが入っていた。こんなに大事なことを、なぜもっと分かりやすく、大きく、最初から記さないのか不思議だ。配慮が足りない。仕方ないので、父の通帳と保険証を「アピタ」内のコピー機でコピーして送ったが、個人情報をこんなに出してしまっていいのだろうか。
 夜、ずっと読書。

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茶の間で仕事する父

4月5日(日)曇のち晴
 朝食後、洗濯。父の小言が出た。「洗濯のあと、浴槽の湯を抜くときに、ブラシでちゃんと洗っておけ」
 午後、タクシーで落合小学校のしだれ桜を撮影に行く。この日記に載せるためだ。
 今日は日曜日でヘルパーさんが来ない日なので、夕食はかに缶をあけてかに雑炊にする。あとは冷凍してあったかぼちゃ煮をチンし、冷奴と漬物。
 夕食のとき、父に「今月の24日で手術後1年になるよ」と言うと「なにい、まだ1年か、もっと経っとるやろ」と答えた。完全に記憶がおかしくなっている。医者からは、手術後1年持てばもっと生きられるかもしれない、と言われている。この調子だとまだまだ生きそうだ。
 夜、DVD「もがりの森」「アキレスと亀」を見る。

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しだれ桜

■中川神社春祭り
4月6日(月)晴
 午後、散歩がてら本町公園まで桜の様子を見に行く。8、9分咲きくらいだ。今週中に満開になるだろう。夜はライトアップされるので、日曜日の昨夜はすごい花見客だったらしい。今日も昼間から宴会をやっている連中がいた。
 夜、「にしの」「いりりき」とはしご。11時半帰宅。ラジオ深夜便。

4月7日(火)晴
 午後、三洋堂、図書館「夢」「アピタ」のコースを歩く。暑くて上着がいらないくらい。帰宅して、父の寝室、茶の間に掃除機をかける。父が新聞に入っていたチラシを見せながら「こういう簡単なベッドがほしい」という。現在は畳の上にふとんを敷いているが、これだと起き上がるのが辛いらしい。折りたたみ式の簡易ベッドだと、床から30センチほどの高さがあるから起きやすい。父のふとんの幅をメジャーで測るとちょうど1メートルだった。明日から探してみる。
 夜、DVD「クライシス」「しこふんじゃった」を見る。

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本町公園の桜

4月8日(水)晴
 午後、「アピタ」の家具売り場で折りたたみベッドを見る。幅が90センチしかない。これでは父のふとんがはみ出してしまう。「カーマ」という雑貨店に電話して聞くと1メートル幅のものがあるという。「カーマ」は郊外にあるので、熊崎に車で連れていってもらう。だがここのベッドも幅90センチしかない。表示には101センチとあるが、メジャーで測ると90センチ。表示ミスだ。危うく買ってしまうところだった。結局、父がチラシで見た1メートル幅のベッドを電話注文した。届くまでに2週間かかるとか。
 夕食後、少し原稿を書いたあと、「にしの」「すし天」とはしご。11時半帰宅。

4月10日(金)晴
 午後、畑の石垣に干してあった6畳大のビニールシートを引き上げてたたみ、縁の下に収納する。畑は雑草だらけだ。父が恨めしそうにながめて、「どや、お前畑やらんか」と言うので「そんなことできん」と答える。畑仕事までやらされたら、自分のほうが先に死んでしまう。
 夜、DVD「ラストゲーム 最後の早慶戦」を見たあと読書。

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庭の木蓮

4月12日(日)晴
 朝食後、中川神社まで歩く。地元の春祭りなので見物。神殿での神事が長くて、なかなか終わらない。11時から餅撒きと聞いていたが、11時半になっても神事が続いているので諦めて帰宅。父の昼食を作る。
 午後、三洋堂、図書館「夢」「アピタ」と回る。
 キリンから出たアルコール度ゼロの「フリー」というビールを買ってみた。ちゃんとビール味がして泡も立つ。が、やはりまずい。2本は飲めない。ガンマGTPを減らすために我慢して飲む。高木酒店に注文したが、「フリー」は売れ行き好調で、問屋に在庫がないらしい。意外なヒット商品になるかも。
 夜、DVD「MAKOTO」を見たあと読書。

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中川神社

■父怒る
4月14日(火)雨
 弟の史洋が新しい歌集『センサーの影』を8冊送ってきたので、午後、中津高校の図書館と市立図書館に置いてもらうよう届ける。
 夜、DVD「レッド・クリフ」partTを見たあと原稿書き。
 深夜零時半に、ビ、セ、デで就寝も眠れず、起きてセルシン2錠を焼酎で追加。これではガンマGTPは下がらない。

4月15日(水)曇のち晴
 午後、「梅の木」でコーヒー。熊崎と会う。
 銀行で年金の入金を確認。介護保険料が2か月分1万1970円引かれていた。
 帰宅して、父の寝室と茶の間に掃除機をかける。父が「客用の座布団をしまえ」と言うので、和室に積んであった座布団5枚を大きな風呂敷に包んで押入れに収納する。
 夜、DVD「頭文字D」を見たあと「にしの」。10時半帰宅。入浴。ラジオ深夜便。

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昼寝する父

4月16日(木)晴のち曇
 朝食後洗濯。父の寝巻を一緒に洗ったら、洗濯機の水が紺色になった。幸い他の洗濯物は染まらなかった。
 午前10時に「アピタ」内のいけだ書店に行き、「週刊新潮」を買う。例の誤報謝罪文を読む。なぜ4回も連載してしまったのかわからない。
 夜、8時「還暦合唱団」。終わって「かかし」で柘植、工藤、牛丸、丸山、水上と軽く飲む。高木と熊崎は欠席。11時過ぎ帰宅。

4月17日(雨のち晴)
 午後、坂道を上から下まで約30メートル掃く。落葉が溜まっていた。この掃除がけっこう辛い。歳で体力が落ちているのがわかる。
 東京から定額給付金の書類が届く。やはり預金通帳の1ページ目と健康保険証のコピーが必要だった。
 夜、原稿を少し書いたあと「にしの」「いちりき」とはしご。11時半帰宅。

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木蓮

4月18日(土)晴
 母の月命日なので、仏壇を開け、線香をあげる。
 午後、三洋堂、図書館「夢」「アピタ」と歩く。
 夕食のとき、父が「俺は自分でなんでもできるで、お前一度東京へ帰ってこい」と言うので「もう少し温かくなったら」と答えると、突然怒り始めた。
「俺のために中津川にいる顔せんといてくれ。恥ずかしゅうてならん」
 箸を持つ父の手がぶるぶる震えていた。元気になって自分の存在が邪魔になってきたのか、自分の東京の家族のことを考えてくれているのかわからない。おそらく両方だろう。
「5月末か6月初めには帰る」と答えると「そんならええ」と言った。手の震えはおさまった。たとえ息子でも、他人の世話になることを嫌がる性癖が出てきた。父本人は元気なつもりでいても、いつ倒れるかわからない。自分が東京へ行っている間に倒れるようなことがあったら困る。誰のおかげで元気でいられるのや、と怒鳴りたくなったが抑える。父と喧嘩してもしょうがない。
 夜、DVD「SEX AND THE CITY」を見たあと読書。ラジオ深夜便。

■ヘルパー問題浮上
4月19日(日)晴
 今日は父が一日中短歌会の日。午前11時半に迎えがきて出かけ、昼食は弁当で夕食は懇親会があるのでいらないとのこと。
 父が入院以来、自分の自由になる日。昼は蕎麦を茹でて食べ、図書館でたっぷり時間を過ごしたあと「アピタ」内の台湾料理店で夕食。
 父は7時半頃帰宅した。疲れたのだろう、着替えるとすぐ寝てしまった。
 DVD「ハプニング」「ルパンの消息」を見る。2本見たら午前零時。

4月20日(月)曇
 午前9時半、父の折りたたみベッドが届いた。業者の人が二人来て寝室で組み立ててくれた。2万4400円。父のふとんを敷くとぴったりだった。これで父も安心して寝起きができる。
 午後、三洋堂、図書館、「夢」「アピタ」と歩く。
 夜、DVD「素晴らしき哉、人生」を見たあと「にしの」。11時帰宅。外で飲んでも、舐めるようにして飲むので摂取アルコール量は少ないはずだ。

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新しいベッドにすわる父

4月21日(火)曇のち雨
 朝食のとき、父にベッドの具合を聞くと「なかなかええ」と満足した様子。起きるとき、脚をベッドから下ろせば起きやすい。
 朝食後、洗濯。雨が降りそうなので廊下に干す。
 新聞の死亡広告を見て父が「俺より10歳も若い元教育長が死んだわ」と言った。葬儀には出られないので断りの電話をしていた。
 午後、「アピタ」内の花屋で玄関用の花を買う。菊と青いすすきみたいな花。適当に切って活けると、夕方ヘルパーさんが活け直してくれた。
 夜、DVD「ハサミ男」を見たあと原稿書き。

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おおでまり

4月22日(水)晴
 午前10時半、ケアマネージャーの垣内さんとヘルパーを派遣している「ナーシンング・ピア」の大橋さんが来る。介護保険利用が5月から変更になるので説明を受ける。父は現在「独居高齢者」であるが、認知症もないし足腰もしっかりしている上、住民票はこちらにないものの、息子である自分が介護しているという事実があるから、来月からはヘルパーさんに来てもらえなくなるという。親族が自宅で介護をという国の方針が強くなってきた。父の介護保険の更新結果は今月末に出るから、その結果をみてヘルパー問題を相談しましょう、ということになる。最悪の場合、自分が毎日三食作らねばならなくなる。それはとても出来ないので何か方法を考える。
 夕食のとき、ケアマネ垣内さんから電話。市役所に聞いたところ、父の介護は2のままに決まったとのこと。下がらなかったが、ヘルパー問題が解決したわけではない。垣内さんが市役所に交渉してくれる。うまくいけば週4日ヘルパーさんに来てもらえるかもしれない。
 夜、DVD「リダクテッド 真実の価値」を見たあと熊崎を誘って「にしの」「いちりき」とはしご。11時半帰宅。

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なにわいばら

■寂しい
4月24日(金)晴
 市役所から父の介護2の保険証が届いたので、午後、ケアマネ垣内さんの「ニチイ」へ。
コピーして戻してくれた。ヘルパー問題はまだ方針が決まらない。
 帰宅して父の寝室と茶の間に掃除機をかける。
 夜、DVD「コンタクト」「ブレードランナー」を見る。
 草K剛の夜の公園全裸事件が騒がしい。最近は暗いニュースばかりなので、こういう事件は笑えていい。でも、なぜ逮捕なのだろうか。誰も傷つけてないのに。

4月25日(土)雨
 午後、雨の中を三洋堂、図書館「夢」「アピタ」と歩く。
 夜、DVD「阿弥陀堂だより」を見たあと読書。
「ラジオ深夜便」に版画家・山本容子さんが出ていた。彼女は以前、嵐山光三郎グループのメンバーで、みんなで温泉や競馬、競輪、浴衣祭りなどで遊び歩いたものだ。もうずいぶん昔のことのような気がする。自分だけがこの田舎に取り残された寂しさを覚える。

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侘助

4月26日(日)雨
 午後2時、「杉山鍼灸院」。首が凝っているので治療してもらう。効いた。
 夕食は友人からもらった筍ごはん、まぐろ刺身、冷凍してあったかぼちゃ煮チン、冷奴。
 夜、DVD「リトル・ダンサー」を見たあと読書。

4月27日(月)晴
 午後、父が自分の部屋を覗いて、「そうましいなあ。ここは客用の部屋で、住むようにはできとらん」と文句をつけた。自分に出てけと言いたげだ。ついでに玄関の下駄箱を整理して、母の靴をダンボールに詰めていたが、「おーい、ちょっと来い」と自分を呼んだ。「なんで三足も靴が必要なんにや」と言う。玄関には黒の革靴とウオーキング・シューズが二足置いてある。「一足でええやないか」といちゃもんをつける。下駄箱をあけると母の靴を整理した空間があったので、黒の革靴を収納する。父は機嫌が悪いと何にでも文句をつける。じっと我慢。
 夕食のとき、父が「暑いのか寒いのか、ようわからん陽気やな」と自分に媚びるように言った。さっき怒ったことを反省している。父はすぐ反省するのだ。確かに朝と夜は寒いが昼間は暑いという変な陽気。気をつけないと体調を崩す。「父ちゃん、風邪ひかんようにね」と言っておく。
 夜、DVD「ランボー 最後の挑戦」を見たあと読書。

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ムスカリ

■いつまで続くか
4月28日(火)晴
 8時に可知医院へ父の定期健診の順番取り。混んでいて19番だった。
父は11時頃可知医院へ出かけた。昼食は父が帰ってきたら蕎麦を茹でられるよう準備しておく。12時20分に帰ってきた。
 午後、銀行へ行き、東京へ来月の生活費を振り込む。「夢」でコーヒー、「アピタ」で買い物をして午後2時過ぎ帰宅。坂道の落葉を掃く。
夜、DVD「告白のとき」を見たあと読書。

4月29日(水)晴 昭和の日
 朝食後、洗濯。まさに洗濯日和。
 午後、後藤理髪店。「梅の木」でコーヒーとスポーツ新聞。
 夜、DVD「ゲーム」を見たあと原稿書き。

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ぐみの花

4月30日(木)晴
 朝から植木屋さんが庭に入っている。植木の剪定と雑草取りをしてくれる。
 午後、三洋堂、図書館、「夢」「アピタ」と歩く。高木酒店に、キリンのアルコール度ゼロの「フリー」が入っていた。即購入。
 4月分の生活費の清算。総支出は8万1495円。ここから自分のビール代や町内会費など特別出費を引くと、一日平均の生活費は2100円。まあこんなものか。父に見せると、出費が10万円以内におさまっているのを確認して「わかった、あとは見んでもええ」とすぐ返してくれた。昔は領収書一枚一枚まで見ていたのに。
 夕食時、父と喧嘩になりそうになる。植木屋さんが雑草まで抜いてくれているのに、自分が何もしないことに腹が立ったのだろう。
「雑草くらい、お前が抜け」
「腰を悪くするから出来ん」
「座ってばかりいるから腰が弱いんじゃ。ちゃんと全身を使って働かにゃあかん」
「そんなことしたら俺が父ちゃんより先に死んじゃうぞ」
「何を言うか、遊びっからかいとって」
 父は出来ることなら、自分自身でやりたいのだが、今の体力ではそれが出来ない苛立ちがあるのだろう。 
 夜、DVD「見知らぬ乗客」を見たあと「にしの」。混んできたので10時半帰宅。
 ヘンリー塚本のHDVDを見る。HDVDは何本も見たが、どれも同じで飽きる。ただヘンリー塚本監督作品はフェチ度が明確で再見に耐える。これは収穫。
 今月も平穏に終わった。いつまでこんな生活が続くのだろう。もう、うんざりという感じ。来月はちょっと東京に帰ろうかと思う。             

(次回へつづく)

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夕食後、ぐったりする父





大島 一洋  (おおしま・いちよう)
1943年岐阜県中津川市生まれ。早稲田大学第一文学部美術専修科卒。
大和書房を経て、平凡出版(現マガジンハウス)に中途入社。「週刊平凡」「平凡パンチ」「ダカーポ」「鳩よ!」などの雑誌および書籍編集にたずさわり、2005年定年退職。現在はフリー編集者&ライター。著書に『芸術とスキャンダルの間』(講談社現代新書)。
 
 
 
 


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