【知の庭】
2008.12.22      
  太平洋の向こうに
中央の動きを読む

 長浜を攻め、浦戸に城を築く

 織田信長と長宗我部元親

長宗我部 友親

 弥三郎といわれていたまだ幼いころ。長宗我部元親は姫若子(ひめわかご)との別名があった。体は大きかったが、色白で姫のような顔立ちであった。動きもおっとりしていて、気持ちがやさしいところがあったのかもしれない。
 父親の国親は、そのころ領地が隣接する本山茂辰と対立していた。お互いが侵略する機会を狙っていたのだ。特に、国親は、かって父親の兼序(かねつぐ)が、茂辰の父親であった本山梅慶(茂宗)らに居城の岡豊を襲撃されて、自害させられたという歴史を背負っている。

岡豊城址と高知県立歴史民族資料館真
この高知県立歴史民族資料館の建っているところに、
長宗我部国親の居城であった岡豊城があった


■長浜の合戦

 兼序自害の際は、国親はまだ幼く、幼名を千雄丸といっていた。このため国親は国司で、中村城主であった一条房家のところに預けられた。中村は清流、四万十川の河口に栄え、小京都といわれる美しい街並みを持っている。その地で国親は育てられた。
 成長して、一条氏の調停により、岡豊城を取り戻した国親は、徐々に勢力拡大を図ていく。三男の親泰を、東の香宗我部家に永禄元年(1558年)に養子で入れ、次はいよいよ念願の本山攻めに踏み切った。
 永禄3年(1560年)、浦戸湾の種崎から押し入って、本山の出城である長浜城、浦戸城を襲った。
 この知らせを聞いた、茂辰は本拠の本山城を出て、長浜での合戦に挑んだのである。この戦が国親の長男であった長宗我部元親の初陣となった。元親は槍を持って自ら戦の先頭に立ち本山勢を圧倒、目覚ましい活躍をする。家臣からもこの戦で主君としての実力を認められ、姫若子の名を返上する。

写真
長宗我部元親が使った「かたばみの旗」


■信長との摩擦も視野に

 国親は、この長浜の合戦の直後、元親の勇壮な姿を確認して安堵したかのごとく、永禄3年(1560年)に、急死する。
 長浜は、あの月の名所といわれる桂浜がある浦戸に近い。元親は、その浦戸に城を造ることを考えていた。だから長浜城、そして浦戸城はぜひ落としておきたい位置にあったと思う。
 浦戸に立てば、遠く日本の中央で活躍している織田信長とつながる太平洋が望める。第21代の長宗我部家の当主となった元親は、父親の国親から、家を譲られたときから、信長の動きに注目し、夢を中央制覇に、置いていた。
 そのために、堺の商人であった宍喰屋を介して、明智光秀の重臣である斎藤利三の娘を正室に迎える。

写真
織田信長

 山田基道、吉良宣忠らとともに3千の兵で急襲されたため、兼序勢の500の兵ではどうにもならなかった。こうしたいきさつもあり、国親は娘を本山家に嫁に出すなどの、懐柔策をとっていたとはいえ、心底では、本山氏に対して復讐の念をぬぐえないでいた。
 この際に、家臣を信長のもとに送って、了承を取る。信長は、そのころはまだ土佐の一部を治める小領主にすぎなかった長宗我部元親について、さしたる情報もなく、「鳥無き島の蝙蝠」と揶揄して、放置する。つまり、「さしたる鳥もいないたがが島では、蝙蝠ぐらいは自由に飛べる」と、軽く見ていたわけだ。そして、自分の力量で、国を切り取ってよいという「天下布武」の朱印を与える。
 だが、元親は一両具足という兵農一体の武士団を作り上げ、さらに元親百箇条のもととなる掟書の整備に着手、土佐統一、さらに阿波、愛媛への侵攻も視野においていた。そうなると、いずれ信長とも摩擦が生じてくることも、その思慮の中にあったわけである。

 
写真
桂浜の背後の山の上に、長宗我部元親の浦戸城があった


【写真出典】
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』織田信長
高知県立歴史民族資料館
写真で見る高知県観光名所


 
イラスト 長宗我部 友親  (ちょうそがべ・ともちか)
親房系長宗我部家の十七代。通信社の記者を経て、現在株式会社企画の庭の代表取締役。著書に『なごやの忘れもん』、『街かど経済入門』などがある。
 
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