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栗原 猛
鳩山改革政権は一斉に改革路線をスタートさせた。メディアの世論調査は、まずは好調な出だしだが、正直なところまだ期待半分、懸念半分といったところではないか。
共同通信の最新の世論調査によると、新政権に取り組んでほしい政策課題のトップは、「税金の無駄遣い一掃など行財政改革」、次いで「年金・社会保障」、「景気・雇用対策」の順だ。「税金の無駄遣い一掃」といえば、特別会計こそ無駄遣いの元凶、伏魔殿といわれながら、改革のメスが入っていない分野である。
国の予算は、一般会計予算と特別会計予算がある。一般会計の財源は税金で、国のインフラ整備などの財政活動に使われる。これに対して特別会計は、一般会計とは別枠で設けられた予算である。財源は郵貯、年金、雇用保険、一般会計などからの繰入金、ガソリン税、登記などの手数料、空港使用料からなる。850兆円の財政赤字の大半は、この特別会計がつくっているといわれる。
特別会計は各省庁合わせて31あり、09年度は一般会計88兆5千億円の4倍に当たる354兆9千億円だ。一般会計との重複分があり、それを差し引いても242兆円と巨額である。しかも一般会計が赤字なら、特別会計は火の車だといわれて久しい。
不思議なことは、特別会計がこれほど巨額な赤字を抱えているのに、実態がほとんどオープンになっていないことである。所管の各省庁の縄張りになっていて、財務省の査定さえ形式的だという。また一般会計は、国会の予算委員会で2カ月近く審議されるが、特別会計は審議時間がないことを理由に、ほとんど議論されていない。
この特別会計は、各省庁が一般会計の借金のツケを回し、一般会計では赤字になりそうなものを特別会計に仕立て、また一般会計の「隠れ借金」に使うケースなどがあることだ。しかも、多重帳簿だから複雑に入り組んでいて不透明だ。「国民が関心を持たないように、わざと分かりにくくしている」とさえいわれる。
例えば、公的年金では、厚生年金、国民年金の各特別会計は、厚労省の所管で保険料などを財源に全国13カ所に大規模保養施設をつくったが、総て倒産、1兆円以上の巨額赤字を出した。それでも責任を問われた形跡はない。また、道路整備特別会計は国土交通省が仕切り、自民党の道路族がその資金を背景に、道路行政に大きな影響力を持ってきた。
住宅金融公庫は77兆円、道路公団も40兆円の赤字を抱え、組織替えして名称も変えてしまった。少し前では国鉄、食糧管理、国民年金の各特別会計が大赤字を出したことは記憶に新しい。一般会計の赤字のツケを特別会計に回し、だれも責任も問われないのだったら、いつまでたっても、財政赤字は減らないはずである。
シーリングもないから、チェックも甘い。問題なのは、特別会計予算がつぎ込まれている特殊法人や独立行政法人は、天下りや渡り先でもあるという点である。80歳を過ぎた人までトップに居座っている。いくら高齢化社会で優秀な人材だからといってもやりすぎではないか。
特別会計は、所管官庁の縦割りの中で管理・運営されているので、各省庁の既得権になっている。しかも競って天下りや渡り先になる特殊法人、独立行政法人を増やし、一方、政官二人三脚になって族議員の既得権益の温床も広がる。特別会計こそ『官僚政治』『官僚主導』を支える金脈といわれるゆえんである。
しかもずさんな運営、管理で積み上げた膨大な財政赤字を、「それでは消費税増税で穴埋めしてください」では、国民はたまったものではない。まず、仕組みや実態を明らかにして、改革をオープンな場で議論すること、大赤字をつくった責任を問う場面も必要だろう。国会での審議時間がないのならば、委員会を新設すればよい。そして、究極の特別会計の改革は一般会計と統合してチェックを厳しくすることに尽きる。「政官利権」の伏魔殿、特別会計の大改革こそ「税金の無駄遣い一掃」の核心部分である。
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