政治時評
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  新時代の構築に向けて




座談会(中)  参議院選挙後の政局展望

議会政治の真価を生み出すチャンスだ
―老壮青が菅政権を叱る

司会 栗原 猛

 今回の参院選により、衆参のねじれ現象が起こり、参議院では攻守ところを変えた。対決のまま混乱が続き、地殻変動が起きるのか、話し合いで歩み寄りの方途を見つけ出すのか。日本の議会政治の真価が問われる局面を迎えた。政と官の在り方に今回は焦点を合わせた。

○ 民主、自民は権力抗争でなく論戦を優先させよ

― 菅さん(直人首相)は大分落ち込んでいるね。    

  • A 「あなたが首相になって何が変わるの?」という菅夫人のタイトルの著書が話題になっている。身内からの叱咤激励だが、有権者の声を代弁しているところがある。
  • B ブレはひどかったからね。国家戦略がないことまで暴露してしまった。これでは折角、政権交代をした意味がなくなってしまう、と有権者はハラハラしている。支持率急浮上は自分の実力だと錯覚したのが禍の元だ。そこで高転びした。夫人はここをズバリと突いていて、有権者の琴線に触れるところがある。
  • C 国家戦略会議とか「政治主導」の看板も下ろしたね。安倍政権は政治主導を掲げて霞が関と対立したが、次の福田政権は改革の旗を降ろして官僚と宥和策をとった。どこか同じ道を歩いている。政治主導はそんなに難しいのかな。
  • D 民主党の勢力では、野党が反対したらそれこそ何もできない。日銀総裁人事が拒否されて大揺れになった福田政権と立場が入れ代わった。参院で否決されたら衆院で3分の2ないから最重要法案の予算以外の再議決は無理だ。
  • B どんな太っ腹の首相だって、臨時国会、民主党代表選挙、普天間、臨時国会、予算編成と考えると、暗澹たる気分にならざるを得ないだろう。
  • C 福田政権当時、衆参がねじれて民主党はここぞとばかり攻めまくっていたからね。立場が逆になった。
  • E この世界は「明日は我が身」だ。「禍福はあざなえる縄の如し」とも言う。普段から言動には注意が肝心なんだ。
  • D 谷垣周辺は早晩、行き詰まるから「総選挙近し」だと煽っている。
  • E 外国のメディアは、地殻変動の方を予測しているな。
  • A 私は日本の議会政治にとって、今、ものすごく大事な時期だと思っている。英国の議会政治は壁にぶつかるたびに、世界中どこにも例がない中で、粘り強く議論して1つ1つ先例を積み上げてきた。日本でも与野党が粘り強く押したり引いたりして、歩み寄りの道を創り出すべきだ。議会政治がレベルアップする絶好のチャンスでもある。
  • C 谷垣自民党が先にそれをやったら、自民株は急浮上間違いなし。(笑い)
  • E メディアも囃し立てるのはなく論戦をリードするぐらいでないといけない。
○ 守旧派の総本山は「霞が関」だ

― これだけ霞が関改革が叫ばれているのだから、官側から改革の火の手が挙がってもよさそうなものにね。改革と叫んで霞が関を飛び出した「脱藩官僚の会」にも期待したいところだ。
  • D 霞が関にとって権力抗争は大歓迎だ。国家公務員制度の改革や天下り排除などが吹っ飛ぶからな。もともと守旧派の総本山だからね。
  • B 改革案を換骨奪胎したり、すり替えたりするのもお手のものだ。政治が弱くなると強くなるのはいつの世も役人だった。
    E 860兆円もの財政赤字をつくった責任をどう思っているのだろう。
  • D 中国共産党の伝えられる汚職もひどいが、官僚同士似たところがあるようだね。
○ 国会議員は自らのムダ排除の音頭をとるべきだ

  • A ところで豪華な議員会館が3つもできた。1780億円だ。
  • B ちょっとのぞいたがこれまでの倍の広さがある。豪華な部屋に負けないようなよい政治をして欲しい。
  • A 財政再建策で提案があるんだが、歳費をカットするとか、各種手当を減らすとかね。国会議員から提案があってもいい。いまの衆参両院の議長は、ともに元社会党の議員だ。率先垂範、大胆提案があってもおかしくない。
  • B 政治家がムダ排除の先頭に立てば、霞が関だって反対ばかりしていられないだろう。
  • E それが物事の道理だよ。例えば、各省庁の事務次官当たりから、「天下り制度は評判が悪いから直していこう」と、いい出したら評価が上がるのにね。ムダとか時代遅れになった組織とか制度の矛盾点は、自分たちが一番よく知っているのにね。

○ 民主党政権の実績も上げている

― 菅政権が政権交代の原点から出直すとして、何から手を付けたらいいんだ。

  • A まず政治と行政の透明化だろう。自民党時代にたまったウミやアカを落として政府の政策決定の過程をもっとオープンにすることだ。
  • E 橋本政権は6大改革といって間口を広げすぎたという反省があった。やるべきことはいっぱいあるが、ポイントを絞って、まず一点突破してから順位進めるべきだろう。
  • C いの一番は自信を取り戻すことではないか。メディアはあまり取り上げないが、実績も挙げている。例えば、核密約は政権の交代がなければ、外務省はいつまでも知らぬ存ぜぬを通していたろう。医師会、農業団体、日弁連などではトップが交代した。日中議連など超党派の議員連盟でもトップが民主党に入れ代わっている。政府の審議会も官僚OBや御用学者が随分交代して、風通しがよくなっている。やがて行政にも反映されていくはずだ。
  • D 経団連も自民党から距離を置いた。「政官財利権のトライアングル」とか、伏魔殿とかいわれた権益グループの変化は、政権交代でもなければ考えられなかったよ。
  • B 07年の数字だが、経団連は自民党に29億1000万円、民主党に8000万円献金している。経済界はその見返りに税などで優遇されてきた。
  • A しかし「権力は必ず腐敗する」から、やがて民主党政権にもアカやウミがたまる。有権者はまた政権を交代させればいいわけだ。
  • D 大学生を連れて事業仕分けに通ったが、不思議なことに学生たちは「廃止だ」「こ見直しだ」とほとんど当てていたよ。ところが「廃止」の事業が、一般会計で復活したり、特別会計の別の項目の中に名前が変わって潜り込んでいたり、換骨奪胎が進んでいる。
  • C ある旧知の官僚が「省あって国なし、己のみで、国民は眼中になし。霞が関の劣化も著しい」と嘆いていた。そろそろ国乱れて忠臣が現れてもいいころだ。
  • A 政権権交代の大事なところは、しがらみも既得権もないうちに思い切った改革ができることだ。英国や米国のように、政権交代がある国は改革がしやすいので、壁に頭を打ち付ける前に、Uターンができる。昨年の政権交代は、利権や既得権が複雑に絡んでいる自民党では改革はできないから、民主党に期待を託したはずなんだがね。

  2010年7月26日(月)

栗原 猛(くりはら・たけし)
北朝鮮生まれ。終戦時、清津から3カ月間、徒歩で板門店へ。通信社記者を経て、マスコミ志望の学生と活動中。著書は「改革はなぜ進まないか」、編著に「私の後藤田正晴」など。

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