【詩の庭】 遠くなった言葉と風景

2008.02.18

Vol.2 柴刈り縄ない
   

 よくいたずらをした。もちろん子どものころのことである。いたずらが成功した時の一瞬ではあるが、心の生き生きした輝きは今でも忘れられない。
 友人と一緒に、仕組んだいたずらの完成は、いわば共犯の成立であり、そのときには激しい電流がお互いの心に流れあったわけで、これぞ親友といった気分に浸ったものである。


 
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仁淀川の風景(高知県日高村)

 いくつも実行した仕掛けはあったが、そのうちで、教室中をわかした代表的なやつのうちの一つは、黒板消しを使ったものだ。教室の入り口に一番上の所に黒板消しを挟んでおく。

 当時はベルではなくて、原始的なカネの音かサイレンだったので、その始業の合図があると、先生が教室にやってくる。そして引き戸になっていた教室の戸をあけると、頭上から黒板消しがドサッと落ちてきて、先生の頭が、チョークの粉で真っ白になるという、演出だった。

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 この罠の対象になる先生はたいがいは「冗談を理解してくれるとぼくたちが読んでいる先生」だったが、時として「本気で嫌な先生」に仕掛けることもあった。後者の場合は、本気でしかられて、厳罰として、廊下に長時間立たされたりした。なぜかその時、バケツを持たされたりもした。
 しかし、黒板消しが落ちてきて、先生の頭が真っ白になっていたずらが成功した瞬間に、教室の生徒全員とは、生き生きとした心の交流ができたように思った。その楽しみがあれば、ある程度の罰則は許容できた。

 
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「絵の中のぼくの村」にも登場した里芋畑

 かつて、中島丈博が脚本を書いて東陽一が監督した作品で「絵の中のぼくの村」という映画があった。
 この作品は高知県の小さな村を舞台に、男の子2人の兄弟の成長の過程を描いている。その中には、多くの種類の面白い子どものいたずらが登場し、生き生きとした田舎での生活の楽しさが展開する。
 いまでも記憶に鮮明に残っている場面は。近所のおばさんが大切に育てている里芋畑での出来事である。兄弟2人がその里芋畑で遊んでいるうちに、育った里芋の茎をスパッとお鎌で切ってみる。すると意外に気持ちがよかったので、もう1,2本やってみる。ますます面白くなって、2人とも夢中になり、その畑の里芋の茎を、スッパ、スッパとすべて切ってしまう。その楽しかったこと。
 しかし、その行為は畑の持ち主のおばさんに当然見つかって、母親の所に激しい苦情が来る。母親は平謝りだ。

 
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 どうにも怒りがおさまらないまま、そのおばさんは引き揚げたが、当然2人は小さくなって母親の顔色をうかがう。
 母親は「コラッ」といったんはいったものの、その次は「どうぜ、面白かった」というのである。その時の、うなずいた兄弟のうれしそうな表情の輝き。その瞬間、親子3人には共犯の電流が流れたと、思った。楽しい、生きたシーンが描かれていた。母親役は、原田美枝子で、2人の子供と明るく笑い飛ばす、彼女の表情もよかった。

【 遠くなった言葉と風景 掲載記事一覧 】
Vol.9 「指南」と「北針」本文を読む
Vol.8 夏の風物詩「蚊帳」本文を読む
Vol.7 新宿ゴールデン街本文を読む
Vol.6 いたずらの輝き本文を読む
Vol.5 連絡船本文を読む
Vol.4 親に叱られて、家出して、そして泣きました本文を読む
Vol.3 ハナ垂れ小僧と紙芝居本文を読む
Vol.2 柴刈り縄ない本文を読む
Vol.1 うさぎ追いし本文を読む
 


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