【詩の庭】 遠くなった言葉と風景
2007.04.23
Vol.3 ハナ垂れ小僧と紙芝居 はたして黄金バットの運命は
 なぜかそのころは、多くの子供が緑色をしたハナ汁をたれていた。それも二本しっかりとたらしていた。舌でぺロッとなめたり、そのハナを服の袖で、ズルッと拭ったりする。だから、袖のあたりが乾いた鼻汁でつんつるに光っていた。
  そのころの小学生は黒い学生服を着ていたので、その袖が太陽に当たると白くなって目立った。
  でも、みんな元気で、明るかった。桜の木の脂(やに)を幹からとって指先でそれをのばしたり、木の枝にぶら下がって、枝が折れて溝にあごをぶつけて、血を流したり。メンコをしたり、とにかく遊んだ。
イラスト
 桜並木は坂に沿って、その両側にあった。その坂の上の方、一番高くなっているあたりから拍子木の音は聞こえた。その音は「紙芝居屋さんがやって来たよう」という合図だった。だから、それが聞こえると飴代を母親からもらって、それを手のひらに握りしめて、坂を駆け上った。

  紙芝居屋のおじさんは大きな四角い缶の中に割り箸のような棒を突っ込んで、ぐるりとかき回して、器用に水飴を棒の先にくっつけてくれた。それが紙芝居の代金代わりだった。その飴にせんべいみたいなのを二枚貼り付けてくれることもあった。
  お金がない子も紙芝居は見せてくれたが、後ろの方に下がらされた。だから、飴を食べている子は、前の方で堂々と見ていた。出し物は黄金バットだった、と思う。
「 はたして黄金バットの運命やいかにー 」
ということで紙芝居は、いつも終わった。でも、また次の日も、その次の日もわくわく胸を高鳴らせて紙芝居屋のあの拍子木が鳴り、続きが始まるのを待っていた。
 
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Vol.2 柴刈り縄ない本文を読む
Vol.1 うさぎ追いし本文を読む
 


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