【詩の庭】 遠くなった言葉と風景
 昔のことに思いをめぐらしていると、頭の中になにやら甘酸っぱく、暖かいものが湧き上がってくる。そんな心地よい気分に浸っていていいものだろうか、という不安も一方ではある。
  でも、故郷を思い出したり、旧友との交感をしたり、思い出の風景に思いっきり浸ってみるのもたまにはいいのではないだろうか。人間、前方ばかり見ていては体に悪い。
  そんなことから、子供のころに親しんだ言葉や、風景についてとりとめもなく浮かんでくることをつづってみました。世迷いごとと思われるかもしれないけれど、お読みいただければ幸いです。
2007.01.29
Vol.1 うさぎ追いし
 「うさぎ追いしかの山 小鮒つりし かの川」。時として、口をついて出てくる歌である。この歌詞の小鮒釣はよく分かる。近所の、池や川に自分で竹を使って作った釣竿を持って、いそいそと出かけた。そして、浅瀬にジャブジャブと踏み込んで行った。時には、ドジョウを踏みつけそうになって、そのヌベッとした感覚に生き物の躍動を感じたりもした。

 
 でも、「うさぎを追う」、というのはどういうことなのか。庭先のオリの中で飼っているあの白いうさぎを追うのとはちがう。

 一度だけだが、おそらくこういうことだろうという「うさぎ追いし」を体験したことがある。それは滋賀県の醒ヶ井小学校の五年生くらいのころだった。5,6年の上級生だけが集められて、「今日は山に、狩り行きます。ついては体の調子が悪いものはいないか」。と、問いかけられた。
そして、学校近くのちょっとした高い山に、登ることになった。中腹ぐらいのところまで登り、全員がそこから横に並んで「ワーッ」と、口々に叫びながら山を降りて行くのだが、両端の生徒が先に進み、真ん中は後からゆっくりと行く。
そうすると、自然に人間の半円形の輪が出来る。その輪の先端が次第に縮まって行くと、その行く手にはもちろん本当の網が仕掛けてあって、追われたうさぎが驚いてその網の中に入ってしまう、という仕組みだった。

 もちろん、翌日のお昼にはうさぎ汁のあったかい椀が出た。それを前にして、どうにも食べる勇気の無い自分でした。
 
【 遠くなった言葉と風景 掲載記事一覧 】
Vol.9 「指南」と「北針」本文を読む
Vol.8 夏の風物詩「蚊帳」本文を読む
Vol.7 新宿ゴールデン街本文を読む
Vol.6 いたずらの輝き本文を読む
Vol.5 連絡船本文を読む
Vol.4 親に叱られて、家出して、そして泣きました本文を読む
Vol.3 ハナ垂れ小僧と紙芝居本文を読む
Vol.2 柴刈り縄ない本文を読む
Vol.1 うさぎ追いし本文を読む
 


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