【詩の庭】 特選エッセイ 〜スイスより2編〜
2007.03.12
高島飛行機
おしかわ えみ
 29になってそろそろ自分の住むところを決めて結婚もしようかということになって、その報告の為に富山の実家に戻っていた。未来のハズバンドを迎えに東京へいこうと富山駅で電車を待っていた。

  電車から降りてきたおじさんをみて、思わず 「 高島くーーーん 」 と叫んでしまった。小学校1、2年の時の同級生の高島君は 「 こうき 」 という名前だったので高島飛行機とよばれていた。細っこくて、勉強がよく出来たので、当時自分は優等生だと思い込んでいた私と張り合っていた。小学校以来あっていないが、確かに黒いコートの小太りのおじさんのなかに高島君の面影があった。

  大学は中退、就職した事もなく、「 出来るだけ日本を離れてふらふらしていたい 」 というポリシーの下で暮らしていた私は、素早く 「 高島くーん 」 と叫ぶだけの素早さをまだ身につけていたが、高島君は手を曖昧にちょっと振って 「 ググッツ 」 と口の中で何かうめいただけだった。私は確かにそのおじさんの中に細っこい高島飛行機が埋め込まれているのを見た。
  しかし彼が降りた電車は私が乗る電車だったので高島飛行機との短い遭遇は終わった。

  あとで母に聞くと売薬さん、俗に言う富山の薬売り、難しく言うと家庭置き薬配置員をしていてまだ独身なのだそうだ。

  売薬さんって大変そうだなあ、あんなに飛行機が埋め込まれてしまうのだから。
 
写真
 
 (今回の “ 詩の庭 ” は、本サイトの「エッセイ募集」にご投稿いただいた作品の中から、2編をご紹介します)
 ■ 親友   作・ローアまゆみ   本文を読む
 


トップページ会社紹介著作権についてお問い合せ
Copyright (c) Flying Garden Rights Reserved.