【知の庭】 おらが藩
2007.12.10
 
 

 阿波徳島の象徴ともいえる四国三郎吉野川は、河口で二つに分流する。その三角州の辺りにあった勝瑞城だが、暴れ川でもある吉野川の流れが変わって、今はその位置は、その本流とはかなり距離が離れたところにある。

 
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勝瑞城跡

 

 そして、勝瑞城の遺跡は残ってはいるものの、その面影はもうほとんどない。勝瑞城の歴史をひも解いても、細川、三好の両氏の名前は出てくる。が、小少将という女城主の名前は阿波の正面史ではあまり見られない。
でも、四国の雄として知られる長宗我武氏の系図を見ると、そこには小少将の記述が、はっきりとある。「右近太夫、母小少将」との藩之書きだ。
 この右近太夫は大坂の夏の陣に出た後、肥後熊本の加藤家に庇護されていたところを、徳川家康に、呼び出されて京都で切腹したことになっている。この子の母親が、元親の正室の斎藤氏の娘ではなく、小少将だというのだ。
 では、小少将とは何者か。系図では元親の側室とあるが、これまた長宗我部家の記録でもそれ以外ほとんど何も出てこないし、墓の所在もわからない。

 

 しかし、阿波徳島側の伝承では勝瑞城の美人の女城主で、勝瑞城を攻めて落とした長宗我部元親が彼女を見たとたんに恋に陥って土佐に連れ帰ったとされる。とすれば、長宗我部の系図の「妾」とする記述と一致することになる。
 だが、元親が勝瑞城を攻め落としたのは天正10年(1582年)のこと。その時元親は44歳だったが、小少将はすでに50歳前後になっていたと思われる。いずれにしても小少将は年上の女で、子持ちでもあった。
恋には年齢は無く、小少将は妖艶で、奔放な女だったといわれるから、それもそうかもしれない。

 
 
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四国三郎といわれる吉野川

 

 京の都を好んでいた当時の勝瑞城主であった細川持隆が、阿波に帰った際に、眼のさめるような少女を見つける。これが小少将で、15歳のころのこと。持隆との間に子供が生まれ、それが真之で世継である。しかし、持隆が京に行って留守の間に小少将は、内政を見ていた三好義賢とできてしまう。もともと政策面で持隆と対立することがよくあった義賢は兵を起こして持隆を滅ぼしてしまう。
 義賢の妻に納まった小少将は「大形殿」と呼ばれるようになり権力をもつ。勝瑞城の城下では「大形の心を空に篠原や みだれにたちし名こそ惜しけれ」といった歌が流行したりして、批判が出てくる。

 

 相続争いも起こって、三好家は十河家に養子に出ていた存保に後を継がせたりするが、次第に権力を失っていく。そこで織田信長に援助を頼むが、信長も天正10年に本能寺の変で倒れる。その年の内に長宗我部元親が,雪崩を打って勝瑞城を攻め、城は落ちる。
 そこで、勝者の元親に小少将は近づいて、元親の寵愛を得るようになる。実際のところ小少将は井戸に身を投げたとか、淡路島に逃げたとかいろんな説があるが、長宗我部家に残る系図に登場する小少将と一致するとすれば、小少将は元親との間に一男一女をもうけたことになり、その一人が右近太夫である。
 この小少将の老いを知らない生き方は現代にもつながる積極人生とはいえないだろうか。

 
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