【知の庭】 おらが藩
2007.10.09
 
 

 本能寺の変で、明智光秀に討たれたはずの織田信長が実は生きていたとか、当の光秀が徳川家康の庇護の下に生き延びていた、といったありえないような話が歴史上の人物、特に悲劇で終わった人物には時として残っていることがある。

 
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盛親の父、長宗我部元親
 

 熊本の加藤家、細川家の周辺でもそのような不思議な話がある。戦国時代については事実確認が難しい場合が多く、史実が容易に変わることも時としてある。
 もうかなり前に亡くなられたが、飯野孝宥(いいの・たかひろ)という人が面白いことを熱く語ってくれたことがある。神田生まれの江戸っ子で、日本徐福会の理事長をしていた。徐福の研究に熱心で、徐福の足跡を追って中国にも何度か渡っていた。
 飯野さんは「弥生の日輪」と題した本にも記しているが、大坂の陣で家康に敗れて、京都の加茂川で斬首されたはずの長宗我部元親の継嗣で、二代目の盛親は加藤家、細川家の庇護のもと生き延びた、というのである。

 
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元親と朝鮮の役でともに戦った加藤清正
 

 この物語には、いくつかの文書が残されているので、最終的にはそれらの文書を鑑定すれば真偽の程が分ることではあるが、その飯野さんの話をここではとりあえず紹介したい。 
 飯野さんの話は、蜂須賀勢に捕らえられて処刑されたのは「盛親の影武者である」ということが前提になっている。強い水軍を持っていた盛親が大阪の陣での敗戦後、陸地である京都の方角に逃げるのはまずおかしい、これはわざわざ影武者が捕縛されるために向かったのではないか、という。
 従って、本物の盛親は船で海から、もともと朝鮮の役以来、親交のあった加藤家を頼って九州に家老の久武内蔵助とともに渡った。そして、盛親は熊本の加藤家に助けられ、自分は久武内蔵助と入れ替わり、生き延びた、と飯野氏は語る。

 

 従って、この家系に残されている系図には「長宗我部久武氏」とあり、その信親についての記述には「河勝二十一代の孫 弥三郎 母斎藤氏」とあるなど多くが長宗我部家の系図と重なる。
 この長宗我部久武家には、加藤、細川両家からの書状が多く残されていて、その中には鰹節についての礼状などもあって、興味深い、「細川家から鰹節だけでは礼状はこない。これは盛親か、その家来筋が土佐の鉱山を抑えていて、黄金を贈ったのだ」と飯野さんは語っていた。

 
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底抜けに明るい土佐の「よさ恋祭り」
 

 また、幕府の隠密であった柳生一族が久武に変化した盛親を追っていて、柳生と戦った形跡もあったと飯野氏は指摘していて、現地までいって関係する寺社なども調べたそうだ。飯野さんは柳生一族がこの事実をおさえたことが、加藤家改易の原因にもなったのではないか、と飯野氏は推理を働かす。
 熊本の久武家は細川家の時代には、天草の乱にも参加して、戦功を上げている。また、久武家には、系図などのほか源頼朝、足利尊氏、豊臣秀吉、そして加藤忠広、細川忠利らからの書状が残されている。

 
松江ひとくちメモ

大阪の陣
 慶長19年(1614年)から翌慶長20年にかけての大阪城をめぐる戦い。大阪冬の陣と夏の陣に分けられる。この戦いで豊臣家はほろぼされ、徳川家康が実権を握る。

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【写真協力:(財)高知市観光協会(財)熊本国際観光コンベンション協会 】
 
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