【趣の庭】沖縄・黄金(くがに)の庭
2009.1.18   
お雑煮ではなく

「ナカミ汁」などを琉球漆の器で。


沖縄のお正月に欠かせない、
ホントの汁物は…!?
林 秀美
01
写真は、南の島の年中行事のときのごちそう。
お祝い料理は、お重ではなく、丸いお皿に盛り付けるのだそう。

 
今さらですが、
新年おめでとうございます。
……と。間の抜けたご挨拶から始める2010年。

世の中的には、そうメデタイ気分でもないけれど。
まあ、ここはひとつ、
めでたい「汁物」の話で、明るく始めてみましょう。

かつての沖縄では、大きなお祝い事のときに
「五段のお取り持ち(グダンヌ・ウトゥイムチ)」といって
5膳の会席膳を用意し、そのなかに3種類の汁物があったそうです。
(ウトゥイムチは「おもてなし」を意味する言葉)

その三大汁物(と呼ぶのか?)は、
「イナムドゥチ」「中身のお吸い物」「そうめんのお吸い物」だそう。
なので、めでたいお正月には、お雑煮ではなく、
これらが登場するのが一般的。

4857
「五段のお取り持ち」は、贅沢な琉球漆器のお膳で、
こんなふうに供されるものだったという。
もちろん庶民にはカンケーなく、
王朝時代の士族の流れを汲む上流階級の人たちのお話し。
(カラの器の写真でスミマセン)


「イナムドゥチ」は直訳すると「イノシシもどき」ということになり、
イノシシに見立てた「豚肉」を使った、白味噌仕立ての汁物のこと。
干しシイタケやコンニャク、カステラカマボコ
(卵の入った柔らかいカマボコ)など、たっぷりの具が特徴。
豚ダシとカツオダシを合わせて作るので、かなりのボリューム感がある。

4790
今は琉球料理店などで、別にめでたくない日でも
気軽に食べられる「イナムドゥチ」。
濃厚な味わいなので、イナムドゥチとごはんだけで、
けっこうなマンプク感が得られる。


「中身の吸い物」は
豚の胃や腸を使った澄まし汁のこと。

今は、スーパーなどでも下処理をした「中身」が売られているけれど、
かつては、ニオイをとるために、
ものすごい手間暇をかけて調理するものだったという。

いろんな方法があったようだが、
塩でもみ洗いをしたあと、
小麦粉でもみ洗いをして余分な脂肪を落とし、
さらに臭みを取り、白く仕上げるために、
おからや米糠と一緒に茹でたりするそう。
ニオイを消すためにミカンの皮を使うこともあったともいうし、
洗濯機に入れてガンガン「洗濯」したという人もいるほど。

それはそれは大変な労力が必要とされ、
その「労力」こそが、もてなしの心の表れだったのかもしれない。

内臓を使った澄まし汁と聞けば、なんとなく、におうイメージがあり、
当初は、勝手に「食わず嫌い」だったのだが、
高級な琉球料理店で初めて食したそれは、
とても「臓物」とは思えない美しさで、
コクがありつつ、あっさりした味わいに仕上げられていた。

鮮やかな朱色の琉球漆器のお椀で供するのが正しいそうで、
これで、お祝いの雰囲気も盛り上がる。

04
これが正統派の中身のお吸い物。
琉球料理を供する食堂などで「中味汁」という名で
登場するものもあるけれど、
漆の器で出てくると、高級感が漂い、
ちょっとベツモノみたいな気がしてしまう。


「そうめんの吸い物」と言われても、
いや、別に特別めでたい雰囲気はないんじゃないか? とも思うのだが。

そうめんのように「長く」生きていけるように、との思いを込めて、
普段のそうめんとは、趣の異なる「吸い物」にするのだ。

「ルーイゾーミン」と呼ばれるそれは、
茹でたそうめんを屏風畳みにしてお椀に入れ、
その上に、ニンジンやシイタケ、青菜など、彩りのいい具を乗せたもの。

4831
ちょっと美しさに欠ける写真で申し訳ないけれど、
そうめんも、こんな風に仕上げると高級な一品になる。


ほかにも「ムジ汁」や「ソーキのお汁」など、
おめでたいときの定番料理は数多い。

06
田芋の茎を使った「ムジ汁」。
子イモがたくさんできることから、
子孫繁栄を意味するおめでたい汁なのだ。


で、ワタシの2010年は、どんな「汁物」で始まったかというと……。
ふふふ。ワタシの場合、いつでも透明な液体があれば、
それでOKなのよん。

07
なにはなくとも……。


そんなわけで、
今年もよろしくお願いしま〜す。


林 秀美(はやし ひでみ)
1961年、香川県生まれ。
沖縄在住・フリーランスライター。大阪〜東京の出版社勤務を経て、フリーに。97年、唐突に沖縄に転居。沖縄で初めて出くわす、この地ならではの習慣などを面白がっているうちに10年経ってしまった。主な共著に「沖縄のナンダ(シリーズ)」(双葉文庫)、「沖縄オバァ烈伝(シリーズ)」(双葉社)、「沖縄なんくる読本」(講談社)など。

 


トップページ会社紹介著作権についてお問い合せ
Copyright (c) Flying Garden Rights Reserved.