【趣の庭】沖縄・黄金(くがに)の庭
2009.12.21   
直火が生み出す

旨いモン


ドカンとでっかい島ドーフ
林 秀美
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カマドの火で、ブクブク泡立つ。
白くてつるりとした豆腐のイメージと異なる
力強い光景から生み出されるのが、沖縄の「島ドーフ」なのだ。


最西端の島の泡盛の話から、
あらあらあらと、「残り物の福」へと話題が流れてきたけれど。
今回は「直火」の話。

沖縄の泡盛メーカーは、どんどん近代化が進み、
vol.12で紹介したような、昔ながらの「直火式・地釜蒸留」は
石垣島や与那国島などでしかお目にかかれない、貴重な存在となっている。

生まれたときから、電気やガスの恩恵にあずかってきた身にすれば、
「カマドに火を興して、煮炊きする」というだけで
ほへーっと驚くわけだが、
カマドで煮炊きするのが当たり前だった時代の人から見れば、
「なんで、アンタたち、いちいち大げさに驚くわけ?」ということになる。

で。
大げさに宣伝するわけでもなく、
昔ながらのやり方で、淡々と豆腐を作っている人を訪ねてみた。
(地域の人のためだけに、ひっそり作っているというから、
 あえて、場所も名前も伏せておきます)

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沖縄本島のほとんど最北端に位置する集落。
山深く静かなエリアだ。


カマドにかけた大きな鍋をじっと見ながら、おばちゃんは
「昔は、どこの家でも豆腐を作っていたよ〜。
小さな頃から豆腐作りは見て覚えて、
おばあちゃんに教わった通りのことをやっているだけよ?」と
ぶくぶく泡立つ豆乳を、そ〜っと混ぜた。

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ムクムクと面白いように沸き上がる泡。
薪は近くの山から集めてきたイタジイという木。
いい香りの煙も豆腐の味を左右するそうだ。

沖縄の豆腐は「島ドーフ」と呼ばれ、
県外の豆腐とは一線を画する存在として、人々に愛されている。

島ドーフの特徴は「固い・大きい・熱い」といったところだが、
そもそも、作り方が県外のモノとはぜんぜん違うのだそう。

県外の豆腐が、水に浸けた大豆を挽いた呉汁を
煮てから漉す「煮とり法」という作り方なのに対し
沖縄では呉汁を生の状態で漉してから作る
「生搾り法」という製造法なのだそう。

おばちゃんがかき混ぜていたのは、
ナマの呉汁なわけだ。

カマドに薪を足して温度を上げていくと
鍋の豆乳は面白いほど、ムクムクムクと泡立っていく。

おばちゃんは「豆腐作りは、鍋がぜんぶ教えてくれる」と言い
真剣なまなざしで鍋を見つめている。

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鍋の中の豆乳の様子をじっと見つめて
作業のタイミングを「鍋」に教わる

ニガリ(ここでは海水)を加えるタイミングや分量、
火加減などは、鍋のどこかに必ずサインが出ているのだそう。

もちろん、はたでボサッと見ている私にはそのサインは分からないけれど
やがて少しずつ海水を加え始めた。

「豆腐の骨を折るな、混ぜるときはゆっくりよって、
いつもおばあちゃんが言っていたからね」
と言いながら、そーっとかき混ぜていくと、
だんだん鍋の中味はかたまり始めてきた。

沖縄で「ゆし豆腐」と呼ばれる状態になったところで
(県外でいうところの、おぼろ豆腐)
「はい、ちょっと食べてみて」と、お椀に入れてくれた。

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できたてホヤホヤのゆし豆腐。
沖縄では、スーパーなどでも、ビニール袋(!)に入れられて
ゆし豆腐が日常的に売られている。

アツアツのゆし豆腐を口に入れると、豆の甘さがじんわり広がった。
海水が入っているから、ちょっとしょっぱい味を予想していたのに、
塩味は、ほんのり感じる程度。

薪の香りなのか、うっすらと香ばしさもあって、
こんなおいしい豆腐、初めて食べた。

このあと木型に移して、水分を切れば
どっしりした味わいの島ドーフが出来上がる。

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ゆし豆腐を型にぎっしり流し込み、
重しをして水分を切る
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見た目にもずっしりした力強い島ドーフ、完成!
県外のように水にさらすことなく、
アチコーコー(熱い状態のこと)のまま、すぐに売りに行くのだ。

近所にこういうお豆腐屋さんがあれば、
毎日買いに走るかもしれない。


林 秀美(はやし ひでみ)
1961年、香川県生まれ。
沖縄在住・フリーランスライター。大阪〜東京の出版社勤務を経て、フリーに。97年、唐突に沖縄に転居。沖縄で初めて出くわす、この地ならではの習慣などを面白がっているうちに10年経ってしまった。主な共著に「沖縄のナンダ(シリーズ)」(双葉文庫)、「沖縄オバァ烈伝(シリーズ)」(双葉社)、「沖縄なんくる読本」(講談社)など。

 


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