【趣の庭】沖縄・黄金(くがに)の庭
2009.10.12
与那国島の、酒のサカナ
漁港の町で聞いた、ウミンチュ料理
林 秀美

「日本最西端の碑」の近くにある久部良(くぶら)港は、
カジキマグロなどの大物が揚がる漁港として知られている。

久部良港を拠点に、サバニと呼ばれる小さな舟をたったひとりで操り、
カジキを追い続けるウミンチュ(漁師さん)を描いた
『老人と海』というドキュメンタリー映画も作られたほど。

ポチャンと釣り糸を垂れるだけの、
ささやかな釣りしか知らない我が身には縁遠い話だが、
ダイナミックな漁は、いかにも「オトコの世界」というイメージだ。

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最西端の灯台。漁船ばかりでなく、
ダイビングや海底遺跡をめぐるツアーボートなどもこの港から出てゆく
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久部良港でみかけた、カジキを模した水道。
「ほのぼの感(というのか?)」に脱力

その久部良港の目の前にある居酒屋さんに行ってみた。
店内は漁に使う網や浮きなどを取り入れたインテリアで、
いかにも、漁港の店という雰囲気が濃厚だ。

「映画『老人と海』の主人公は、私のおじいちゃんなんですよ」

おっと、いきなり!
そんな話を聞かせてくれたのは、お店を切り盛りする具志堅栄子さん。
小さい頃からウミンチュ料理に親しんできたそうだ。

「家庭料理では、カジキの皮やイルカを使ったものが多かったですね」

さっそく、カジキの皮のチャンプルーを頼んでみた。
黒っぽいカジキの皮は、しっかりした歯ごたえで、
プルッとした食感は、ナマコに似ている。
プルプルな感じは、見るからにコラーゲンたっぷりな雰囲気。
勝手な思い込みかも知れないけれど、カラダによさそうだ。

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カジキの皮のチャンプルー

それから、「イルカの煮込み」も食べてみた。

余談ながら、水族館などで見るイルカの愛らしさを思うと、
「えっ、食べるの!?」などと白い目を向ける人がいるかもしれない。
でもクジラ・イルカは古くから食されてきた歴史があるというし、
沖縄本島北部では、今もイルカ料理を供する店もある。
なにより、私自身が学校給食でクジラ料理を食べてきた世代でもあり、
あまり違和感もなく、ありがたくイルカをいただいたのだ。

脂ののった赤身の肉は、クジラに似ている。
というか、クジラもイルカも同じ「クジラ目」に属する生き物だというし。

具志堅さんの話では、イルカの肉はよくゆでて脂を落として、
味噌煮込みやおつゆにしていたという。
また軟骨やヒレなども食材として上手に利用し、
捨てるところがなかったそうだ。

豚肉料理の多い沖縄では、「鳴き声以外はすべて食べる」と言われるが、
豚肉同様、いただいた命はていねいに食べ尽くすというのが、
生き物に対する礼儀であるのだと思わされる。

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イルカ料理は手間がかかるため、予約制なのだそう。
飛び込みだったのに、特別に食べさせてもらえた。ありがとう!

そういえば別の店では、
カジキの目の回りのゼラチン状の部分の煮込み料理もあった。

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「ひとみちゃん」というかわいらしい名前で供されていた。
プルプル+ネットリした食感だ
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もちろん、カジキマグロ本体もサシミなどで登場する。
与那国島に棲息する世界最大の蛾であるヨナグニサン
(羽を開くと30センチ(!!)にもなるという)を
かたどった野菜で飾られている。

ウミンチュ料理ではないけれど、
サクナの天ぷらもおいしかった。

サクナは和名をボタンボウフウといい、
沖縄では「長命草」とも呼ばれるセリ科の植物。

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サクナの天ぷら
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道端でもスクスク育つサクナ。
南の島の強い紫外線と潮風を受けて育つので、
鉄分やカルシウム、食物繊維が多く含まれているのだそう

昔から、食中毒予防のためにサシミのツマにしたり
細かく刻んで、和え物などにして食べていたのだそう。
風邪の予防やせき止めの薬草としても親しまれていたという。

海の幸を無駄なく食し、
身近な植物を薬として利用する。
昔の人は、なんて賢いのでしょ……。
その種の智恵とほとんど無縁で生きてる我が身がナサケナイ。

で、現代の人は、そのサクナ葉っぱを粉末加工し
小麦粉に練り混んで「長命草そば」を作ったのだそう。
これは見た目にも美しく、独特のさわやかな風味が楽しめる。

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長命草そば

今年の夏には、与那国産のサクナを使った健康ドリンクが
大手メーカーから発売されて話題を呼んでいたから、
健康ブームにものっかって、
与那国島のサクナが注目されるといいなと思う。


林 秀美(はやし ひでみ)
1961年、香川県生まれ。
沖縄在住・フリーランスライター。大阪〜東京の出版社勤務を経て、フリーに。97年、唐突に沖縄に転居。沖縄で初めて出くわす、この地ならではの習慣などを面白がっているうちに10年経ってしまった。主な共著に「沖縄のナンダ(シリーズ)」(双葉文庫)、「沖縄オバァ烈伝(シリーズ)」(双葉社)、「沖縄なんくる読本」(講談社)など。

 


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