【趣の庭】沖縄・黄金(くがに)の庭
2009.2.23    
労せず収穫
2月の海は、緑の畑!?

林 秀美

2月の沖縄。
昨年さんざん通った「いも畑」は、しばし休息中。

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一面、緑に覆われた海の畑は、本島南部の海岸。

その代わり……というのもナンだけど、
この時期の沖縄は「海が畑」となるのだ。
(あ、いや。
 それぞれの季節に、それぞれの場所での「収穫物」はあるのだけれど。
ややこしい話は、ひとまずおいといて)
ふらりと海辺に行けば、
隆起珊瑚礁の岩場は、びっしりと緑色のモノで覆われている。
それが「アーサ」と呼ばれる海藻で、和名を「ひとえぐさ」というそう。
まあ、よくぞご立派に……といいたくなるような緑の浜は、
海が育てる天然の畑にも思えてくる。

2月頃から初夏にかけてが収穫の時期で、
浜には、しゃがみこんだアーサ採りのおばちゃんたちの姿も多い。

おおざっぱに言うと、アーサは鮮やかな緑色のペラッと薄い海藻。
これと豆腐のすまし汁といった風情のものが「アーサ汁」という名で
食堂メニューにものぼるほど、一般的な食材だ。

年中食べられるけれど、とれたての「ナマ」は、香りも舌触りも別格。
この時期ならではの旬の味として人気も高い。

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那覇の市場周辺の食堂のアーサ汁。
スルリとした滑らかな食感がアーサの特徴。


沖縄各地の海で収穫できる海藻だけど、
那覇から400キロほど南西に位置する八重山では、
たいていの人が口を揃えてこういう。

「黒島のアーサがイチバン!」

黒島は、八重山の中心となる石垣島から、
さらに船で30分ほどの距離にある、周囲12キロほどの小さな島。

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黒島は畜産の島。牛の数は、200人ほどの人口の10倍以上ともいわれている。


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風情のある町並みの残る、静かな島だ。

石垣市の市場周辺のおばちゃんたちの話によると
黒島のアーサは
「香りが違う」「絹のような舌触りがサイコー」「色がきれい」
……とのこと。
海藻初心者のワタシとしては、「はぁ」とうなずくしかないワケだが、
ならばと、絶品と呼ばれる黒島アーサを見に行った。


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黒島でも有名な「アーサ名人」のおばちゃん。
シロウト目には、ただただ一面の緑だけど、
名人は「黒っぽく見えるほど濃い緑色で、
深くもなく浅くもないところに生えているのが、おいしいアーサだよ」と教えてくれた。……ど、どれ?

黒島アーサ収穫の顛末記は割愛するけれど、
収穫はひたすら地味〜に、チミチミチミチミ指で摘み取る。

地味ではあるが、しゃがみ続ける姿勢は腰にもヒザにも辛い。
天気が良ければ、ジリジリ照りつける陽射しもツライし。

それでも名人は、チミチミと続けた収穫で
息子を学校に行かせたというからスゴイ。

労せずして……なんちゅうアマイ話は
せいぜい今夜のおかずのアーサ汁一杯分程度の収穫量に過ぎないというわけ。

それはそうと。
さすがの南国・沖縄でも、2月は寒い日が続く。

今年は上旬に25度を超える夏日がやってきたりして慌てたけれど、
最低気温が10〜15度に冷え込む2月、
(北国の人たち、笑わないでね。亜熱帯では、この気温に震え上がるので)
浜辺を歩くだけで、魚を拾い集められる日があるのだ。

初めて聞いたときは、「うっそぉ〜」と思ったけれど
海水温が下った海では、魚たちが仮死状態になって、
浜に打ち上げられてしまうのだそう。

沖縄的な寒〜い朝、浜辺に行くと、
力尽きて浜に横たわるサカナを、文字どおり拾って歩けてしまうのだ。

オホーツク海の魚に嗤われるで、キミたち、とか思って
信じがたい話だったけれど。

何年か前の寒〜い日、浜に行ってみたら、
ホントに累々と横たわっていてビックリした。

落ち穂拾いよろしく、バケツやらザルやらを持参して浜を歩けば、
たちまち大漁旗が掲げられるほどなのだ。

狙ってる人は、早朝から浜に魚を収穫に出てゆくそうだから、
大漁を期待するなら、寒さと眠気との戦いに打ち勝つ必要があるわけだ。

……にしても。
我が身をちょいと養う程度の食糧が、
ひょいと手に入る「海」の恩恵をつくづく感じ入る島の冬。

100年に一度のなんだかは、あずかり知らない話だけれど、
この海さえあれば、生き延びられるのやも!?



林 秀美(はやし ひでみ)
1961年、香川県生まれ。
沖縄在住・フリーランスライター。大阪〜東京の出版社勤務を経て、フリーに。97年、唐突に沖縄に転居。沖縄で初めて出くわす、この地ならではの習慣などを面白がっているうちに10年経ってしまった。主な共著に「沖縄のナンダ(シリーズ)」(双葉文庫)、「沖縄オバァ烈伝(シリーズ)」(双葉社)、「沖縄なんくる読本」(講談社)など。

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