【趣の庭】沖縄・黄金(くがに)の庭
2009.1.26    
サクラ、タンカン、
ムーチーで始まる

沖縄の正月


林 秀美

年中行事は旧暦で、という習慣が色濃く残る沖縄。
とはいえ、世間と大幅にズレても困るし(という理由かどうか?)、
正月は新暦で、初日の出やら初詣やらで賑わいを見せる。
(漁業の盛んな地域では、旧正月のほうを盛大に祝うそうだけど)

そんなわけで、今年の元旦は旧暦12月6日。

どんより厚い雲に覆われて
亜熱帯らしさを感じさせない寒〜い年の始まり。
(気温は15度前後。 北国・雪国の人が聞くと笑うんだろうけど、
強い北風も吹きつけ、これはこれで寒いんです。ホントに)

明けて3日、
「今年は寒いですね〜」と挨拶代わりに口にすると
「そりゃそうよ。ムーチービーサだからね」と言う人がいた。

ああ、そうだ。
旧暦12月8日は、沖縄では「ムーチーの日」とされていて、
月桃の葉に包んで蒸し上げたムーチー(餅)を食べる日なのだ。

ムーチーは「鬼餅」ともいわれ、
厄を祓い、子どもの健康祈願の意味を持つ行事。
その頃の寒さは格別で、この寒さを表す沖縄の言葉が
「ムーチービーサ(餅の日の寒さ)」というわけ。

写真1
これが月桃(げっとう)の花。開花は5月頃。
ショウガ科で、葉っぱには防虫、防菌作用に効果がある成分が多く含まれているそうだ。この葉に包んで作るムーチーは、独特のさわやかな香りが特徴。


お正月に餅があるのは全国共通だろうけれど、
沖縄でいう「餅(ムーチー)」は、意味合いが違うし、
旧暦と新暦の行事が重なり合うのも面白いものだ。

また2日には、
サクラ(ヒカンザクラ)開花のニュースが地元紙を賑わした。
1月2日の開花は、平年より17日早く、
1974年に観測を初めてからもっとも早い開花となったという。

毎年1月中旬頃から県内各地で「サクラ祭り」が行われる沖縄でも、
こんなに早い開花はめずらしいようだ。

観測の基準木の隣に、3日早く咲いたサクラがあれば、
それは(08年12月なので)、「日本一遅い開花」と呼ばれるんだよな、と
どうでもいいことを、ちょっとナナメに思ったりもしつつ。

ともかく。
沖縄の新春は、
なんとなくめでたいサクラの開花で始まったのでした。

写真
写真
1月に本島北部で見かけたヒカンザクラ。
淡い花びらのソメイヨシノと異なり、濃いピンク色が南国らしい(?)。
花びらはハラハラとは散らず、花ごとポトッと落ちてしまう。
ちょいと風情に欠けるやも…。

沖縄のサクラは、南から北上せずに、本島北部から先に咲き始める。
そして、北部の山岳エリアでは「タンカン」と呼ばれる柑橘が
ちょうど収穫の季節を迎えている。

写真
1月に収穫のピークを迎えたタンカン。
ボコボコした硬い皮の中身は、ジューシーで濃厚な味。おいしいよ。

このシーズン限定の「ツアー」を新聞広告で発見し、
季節感がガタガタと崩れそうになった。

「花見とタンカン狩り・バスツアー」だって。

日本の標準的な季節感でいえば
花見は春だし、ミカン(タンカン)は秋。
強いて言えば、柏餅にも似た餅なら5月の風物。

晴れれば、気温20度を越えることもめずらしくない南の島で、
ミカン狩りや、お花見を楽しむ1月。

日本は南北に長い国なのだなぁと、つくづく感じる季節でもある。



林 秀美(はやし ひでみ)
1961年、香川県生まれ。
沖縄在住・フリーランスライター。大阪〜東京の出版社勤務を経て、フリーに。97年、唐突に沖縄に転居。沖縄で初めて出くわす、この地ならではの習慣などを面白がっているうちに10年経ってしまった。主な共著に「沖縄のナンダ(シリーズ)」(双葉文庫)、「沖縄オバァ烈伝(シリーズ)」(双葉社)、「沖縄なんくる読本」(講談社)など。

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