【趣の庭】沖縄・黄金(くがに)の庭
2008.7.28 
  「南の島で
のんびり暮らしてみっかぁ〜」
沖縄の土地は神様からの借り物
会社勤めをやめ、婚姻関係も解消して

林 秀美   
写真1

■いきなりの沖縄生活
定年オヤジの気分だったのだ。
「もー、いっかー。南の島で、のんびり暮らしてみっかぁ〜」
……というわけで、神奈川から、いきなり沖縄に引っ越した。
あらま、と気付くと、すでに10年も前の話である。

当時、30代も半ば。
通算で十数年、働き続けた会社勤めをやめ、10年続けた婚姻関係なるものも解消したところだった。

両者にことさら不満があったわけではない。
ないどころか、どちらも充分満足。堪能したのだ。

人生にいったい、いくつの「フェイズ」が用意されているのか知らないけれど、
会社という組織からも、戸籍からも解放されたそのとき。
自分にとって、第何段階めかの「転機」ではあったのだろう。

ヨヨと泣き崩れてみたり
途方に暮れるべきかもしれないそのときに、
「ま、いっかぁ。
これで、まるまる自由だ。
それなら、気持ちよさげなところで、のんびり暮らしてみよう」
と思ってしまったのだ。
思ってしまったモノは仕方ない。

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沖縄を象徴する竹富島の赤瓦の町並み。
こんな風情のある家に暮らしてみたいが、庶民にはムリムリ。


そんな感じで「エセ定年オヤジ」は、
ひとりスタスタと沖縄生活に突入した。
(あ。敢えて言うけど、女の人です。ワタクシ)

かつての王国は、見るもの聞くものすべてが面白く、
ほぅほぅと、いろんな話を聞いているうちに、10年が過ぎた。

そして11年めに突入した頃、エイヤッと賃貸生活をやめてみた。
勢いでマンションなるものを購入したら、
なりゆきで、沖縄の土地も購入したことになったのだ。

かつての王国は、独自の生活習慣を持っている。

分不相応にも、王国の土地を分けてもらった以上は、
王国のしきたりに従わねばならない、らしい。
郷に入れば郷に従う素直なワタシは、郷のしきたりに従った。

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■味噌を買うのはオンナの恥!?

スタスタ女が、王国のしきたりなど知るわけもない。
そこで、詳しい人に教えてもらい、言われるままに従った。

詳しい人が言うには、
沖縄の土地は、すべて神様のもので、
いくらローンを組んで頑張ってみようとも、土地は、土地の神様からの借り物。
なので、土地の神様に挨拶をして、
「これからここに住まわせてください」と挨拶するのだそうだ。

「はい。分かりました。
地鎮祭のようなモノと思えばいいのでしょうか?」ぐらいの感覚でいたら、
「ミースマースをやろうね〜」と言われた。

はぁ?

聞けば、「ミースマース」は
「味噌(ミース)と、塩(マース)」のことらしく、
引っ越しの荷物を入れるより先に、
まず台所に味噌と塩を持ち込んで、家に挨拶をするのだという。

確かに、塩がなければ生きられないし。
昔、味噌は家庭で代々受け継がれてきた貴重なものだったと聞く。
味噌を買いに行くなど、「女の恥」とまで言われた、らしい。

写真
引っ越しの荷物よりも先に用意する味噌と塩。
沖縄の神様へのご挨拶なので、どちらも沖縄産ものを買ってきた。
味噌甕なら、もっとそれらしい光景になるんだろうけどね。


ほへー。
素直に「ミースマース」の儀式はやったけれど、
ごめん、恥と言われても、現代社会に生きる私は、
味噌はそこらのスーパーに買いに行くよ。許してね。

そんなこんなで、土地の神様や、家を守ってくれる神様にも挨拶をし、
新居での11年めがスタートした。

■トゲに守られ、福は葉っぱが招いてくれる?
ふふ〜ん。これで安心。
快適沖縄ライフの第2フェーズ……、と思っていたのに。

詳しい人は、さらに、指令を出したのだ。

「ベランダのここに、ブーゲンビレアを置いたほうがいいよ〜」
はぁ、なんで?

「よくないモノが、ここに向かってくる気配を感じる。
ブーゲンビレアのトゲで、ソイツを撃退できるからね〜」

「あらま、そうなの?」
置く置く。

写真写真
沖縄を代表する「顔」のようなブーゲンビレアは、
ブラジル原産のオシロイバナ科の花。
可憐な花のイメージとはうらはらに、トゲで泥棒撃退といわんばかりに
門に這わせるように栽培している家も多い。
 

ソイツがドイツか知らないけれど、
ブーゲンビレアぐらいで平穏な日々が送れるならば、お安い御用!
速攻、花屋に走る素直なワタシ。

詳しい人は、さらに言う。
「東のベランダに、クロトンを置いたらいいさぁ〜」
はぁ、なんで?

「クロトンの葉っぱは、大判小判って言われているからね〜。
お金がザクザク入ってくるって、おばあちゃんが教えてくれたよ〜」

写真
インドネシア原産・トウダイグサ科のクロトン。
1本の木に、赤や黄色、グリーン、紫など、
さまざまな色の葉をつける。
この葉っぱが「大判小判」の象徴なのだとか。
ザックザク育てたい!
 

おっと、聞き捨てならない。
またまた花屋に走る私。

さらに……、と言いたいところだけど、
次回に続く、お時間になりました。

沖縄の植物のいわれや、生活に取り込む術を
まじめな顔して語るつもりだったのに。

まぁ、次回にご期待ください。
そんなわけで、おつき合いいただければ幸いです。

ゆたしく・うにげー・さびら〜。
(よろしく・お願い・いたします〜)

 

林 秀美(はやし ひでみ)
1961年、香川県生まれ。
沖縄在住・フリーランスライター。大阪〜東京の出版社勤務を経て、フリーに。97年、唐突に沖縄に転居。沖縄で初めて出くわす、この地ならではの習慣などを面白がっているうちに10年経ってしまった。主な共著に「沖縄のナンダ(シリーズ)」(双葉文庫)、「沖縄オバァ烈伝(シリーズ)」(双葉社)、「沖縄なんくる読本」(講談社)など。

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