古書道楽「珍・本・版」
2008.02.04
明治中期の「少年少女」本当時一流の文人・画工が健筆をふるう
坂崎 重盛

 本来なら前々回のエロティック蔵書票「日本篇」に続いて、この「海外篇」を紹介するつもりだったが、お正月ということで、急に思い立って、わが収集物件の一つ、「宝船」、それも「見立て宝船」のいくつかを紹介した。

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 そして今回は、いよいよ好色蔵書票の「海外篇」。それはいいのだが……<どれを掲載しようかな>と一枚一枚チェックしてゆくと、これがどうも、かなりエゲツナイ作品ばかり。
 モロであったりズバリであったり、親しい人たちだけで、ワインなどを片手にワイワイ、ニコニコ笑ったりしながら回覧するならまだしも、誰が見るかもしれない、こういう場で回覧するのは、かなりはばかられる。
 <シゲモリ先生って、こんな好色漢だったんだ>と思われるのも、多少、当っているだけに、いっそ心外である。
 なぜ、そんなエゲツナイ蔵書票ばかり、私の手元にあるのか…というと、考えてみれば、そういう蔵書票ばかりを選んでコレクションしてきたからである。世話はない。

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 弁解しますと、コレクションしてきたといったところで、私の、蔵書票コレクションなど、本当のコレクターから言わせたら、コレクションでもなんでもない。その入口にすら立っていない。
 ほんのちょっとした出来心で、オヤッと思って買い置いたものなのだ。宝船や団扇絵に関してなら今でも、これは、と思うと食指が動き、つい手を出してしまうが、好色蔵書票に関しては<もういいや>という気分なのだ。
 この道の先達は多いしね。有名なのが書痴にして齋藤昌三(少雨荘)。あれこれコレクターの鈴木文痴庵もたしか蔵書票も集めていたのではなかったっけ。
 そうか、本置き場で『変態蒐癖志』に当ってみよう。
 と、まあグダグダ煮え切らない前口上をのべているのですが、これも、どこまでエグイ作品を紹介していいものか迷っているからなのです。

 
 
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 <そういえば、あの本ではどのくらいギリギリまでの作品が出ているのかな>と思いついた一冊がある。
 「Exlibris 1000 Examples From Five Centuries」という蔵書票に関する洋書。B5判で350ページ強。15世紀から現代までの蔵書票が1000例掲載されている。
 原文は独語と英語。本の構成は、まず蔵書票というものが世に流行しはじめた15世紀以後の歴史的蔵書票が紹介され、あとは、テーマ別に編集されている。
 たとえば「蛇」「神話」「建築」「書斎」「蜂」「泉」「書物」「鉄道と自動車」「ふくろう」「産業時代と現代都市」「日本」「子供」「天使」「風景」「画家と彫刻家」「楽器」「母と」……と見てくると、欧米の文化そのものが透けて見えてくる。
 この中に「ヌード」「女性」「本と女性」といった項目がある。いや、この項目以外の、たとえば「神話」や「風景」といったテーマの中にも、女性の姿やヌードを配したものが少なくないので、実は、蔵書票の世界における「女性」の存在はとても大きいということができる。

 
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 これは、考えてみれば当然で、蔵書票といったものを作ろうというのは、ほぼ100%パーセント男性にきまっているからだ。
 とにかく、この本の中の「ヌード」や「女性」の項をチェックした。他のテーマのページにも当ってみた。しかし、なぜか無い! 私が持っているようなエゲツナイ物件は。
 多分、本の品格を考慮して規制したんでしょうね。無いはずはないんだから。
 浮世絵のかなりのものが枕絵(春画)であったように、蔵書票のうちのかなりの部分が、私は、好色系蔵書票ではないかと、邪推しているのである。

 ともかくわかった! この際、品格も大切にしたいが、見せるものは見せたい。中でも、ほどほど穏便なものを選んでお見せします。
 今回は一点一点の解説は略します。というか、それぞれの作家のことがわからないので、解説のしようもないのです。
 ま、作品を見て楽しんでください。

 
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坂崎 重盛 (さかざき・しげもり)
東京生まれ。
造園家を経て、編集者・ライターに転進。
著書に「秘めごと礼賛」(文春新書)、「超隠居術」(角川春樹事務所)、「蒐集する猿」(ちくま文庫)、「東京本遊覧記」(晶文社)など。
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