古書道楽「珍・本・版」
2007.07.23
明治中期の「少年少女」本当時一流の文人・画工が健筆をふるう
 
坂崎 重盛
 

 このところ明治物が続いているが、この「珍・本・版」、明治の本や版画ばかりを扱うつもりではない。
 しかし、「行きがけの駄賃(だちん)」という言葉もある。ものはついで、さほどレアな「珍」ではないかもしれないが、「本」であり、「版」ということでは明治中期から大正初期にかけての花形的存在、「風俗画報」を見てみたい。
 明治期の風俗、流行、あるいは東京の町々を描くことを仕事にする人が、この「風俗画報」また、その諸増刊号をひもとかないで済ませられるとしたら、私は、その物書きの勇気に脱帽するしかない。もちろん、その「勇気」とは「蛮勇」に類するものなのだが。
 それはともかく、「風俗画報」、今日、主な図書館では収蔵しているところが多いはずだ。逆に言えば「風俗画報」すらない図書館は少し寂しい。
 といっても、明治22年(1889)2月に創刊され、大正5年(1916)3月に通巻478号で本誌は終巻、その間、増刊39冊、計517冊、また、「新撰東京名所図絵」と「東京近郊名所図絵」の別冊81冊の原本を揃えで閲覧できるところは、そうはない。

 

 われわれが比較的たやすく目のすることができるのは、1973年、国書刊行会と明治文献から、それぞれ刊行された全517冊や「新選東京名所図絵」の復刻版の方ではないだろうか。
 ちなみに、この復刻版はバラで、ときどき古書店頭で見かける。復刻版と原本の見分けはすぐつく。原本の本紙はペラペラの薄い紙だが、復刻版は、ちゃんとした洋紙が使われている。
 ただ、復刻版といえども、揃いならば古書価で80万から100万はするのではないか。もう一種、この「風俗画報」がCD−ROMとして2002年ゆまに書房から売り出されている。こちらは22万円。しかしパソコンを使えない私は、まだ見たことがない。
 と、まあ、仕事で「風俗画報」が必要な場合はともかく、私のように、ほとんどが、単なる好奇心で、この本と接したいと思っている輩は、やっぱり、原本を手に取りたい。
 明治から大正への推移を、紙の質、石版から写真版への移行、また、それらの“刷り”の味といったものを、現物を手にして、心ゆくまでチェックしたいのだ。


「風俗画報」表紙。古書市で、パッと見て買った一冊。なぜ即買したかというと、表紙の絵柄。この絵の左に土手からチョコンと鳥居が見える。この図像は私のような「隅田川フェチ」にはすぐに向島の三囲神社とわかる。浅草側から見た、春の墨堤の景色なのだ。
 
写真

同じ号の「厩橋写景」。左上円内は江戸時代の厩橋
あたりの渡し。鉄の橋は明治の現景橋の構造、人の風俗写真を見るようにリアル。
 

 いや、出るんですよ、今でもときどき、古書市などに原本が。もちろんバラで。相場は、一冊、1,000円から2,000円といったところ。
 それに出くわしたとき私は、ともかく素早く、口絵の部分を開いてみますね。石版多色刷りの口絵に、なにが描かれているかが大事なのである。
 そこに隅田川や浅草、上野といった東京名所や歳時記、年中行事的なテーマが描かれていれば、迷わず手に入れる。その明治石版画による口絵だけでも、1,000円、2,000円は決して高くない、と思っているからだ。
  明治の石版刷りが、この値段で買えるのですよ。なんなら雑誌から切りはずして額装してもいいくらいの作品も多い。古書展などで「風俗画報」と出合うと、いつも心ときめく。胸が高なる。

 
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