【趣の庭】軽井沢便り
2013.12.10    
Karuizawa Journal

高地ダラットで天空のレタス栽培

標高1300m同士結ぶ虹の架け橋

荒井 久  

 ベトナム出張の最終日に立ち寄ったJICA(独立行政法人国際協力機構)の担当者がいきなりこう言った。「天空のレタス、いいですねえ。川上村の先端技術を導入して、ダラットでの栽培。可能性はあると思いますよ」。私たちは改めて胸を膨らませた。

川上村の早朝の出荷作業

 読者の方にはいきなり何の話?と思うに違いない。小さな小さな出版社を営む僕は、2009年1月に長野県川上村村長の藤原忠彦さんの著書を出版させていただいた。タイトルは「平均年収2500万円の農村」。これをきっかけに僕は、川上村レタスなどをネット販売する「採れたて長野」を立ち上げ、さらにそれがひとつのきっかけとなってベジタブルダイニング「晴れ晴れ家」を文京区根津で開業した。この頃は、ある種の川上村ブームでNHK、フジテレビ、TBS、日本テレビ、テレビ東京など取り上げられている。見かけた方も多いだろう。

川上村では夏の早朝6時には出荷が終わる

 この川上レタスをベトナムの高級リゾート地のダラットで栽培できないものか。そう想像したのは、採れたて長野で川上レタスを何度も購入、ファンになっていただいた、今や友人とも呼べる人。コンサルタントとして実績のある彼は今、ベトナムはハノイで企業誘致事業を展開、ハノイに1年間以上住んでいる。その彼が、気候的に6月下旬から10月初旬までしか出荷できない川上レタスを悲しんだことからドラマは始まる。

4人で宿泊したダラットのヴィラ。6室くらいあった

宿泊したヴィラ内の僕の部屋、優雅


 かつてフランスが高級リゾート地として開発したダラットは、標高1300mの美しい土地柄。今やそこでは高級野菜も栽培されているが、現地に出回っている高原野菜の品質は劣悪だ。彼は日本に帰国するたびに川上村レタスを採れたて長野で注文、こちらはなんどか成田空港に届けた。ハノイやダラットの皆さんに食してもらうためだ。

ヴィラにはこんなプールも

ヴィラ内にあるミーティング室


 ダラットの年間平均温度は14℃から28℃。ただし昼夜の温度差は10数℃ある。気候的にはレタスが1年中栽培できることになる。レタス栽培は種蒔きから育苗に25日、畑に移して出荷までの栽培に50日。単純には1年間に6回も栽培できることになる。しかも、川上村の最盛期の夏場は、ダラットは雨期で栽培にはあまり適さない。川上村を補間することになる。 

有名スーパーの野菜売り場で見た白菜。

有名スーパーの野菜売り場で見たレタスも劣悪


 コンサルタントの彼を藤原忠彦村長にお引き合わせし、川上村役場も訪問して地元で最も有力な農事法人の34歳の若い社長、35歳の営業本部長を紹介していただいた。そこで11月下旬、ホーチミン経由でダラットに向かったのだった。
 ダラットではかつてフランスが造ったという高級ヴィラに格安で滞在、現地農事法人の会長、社長をはじめ、多くの関係者と詳細なミーティングを持った。会議では、営業本部長が語った川上レタスへの想い。「すべてはお客様にクオリティの高いレタスをお届けするために。出荷作業は午前2時に始まり6時に終了。6℃の冷蔵保管から冷蔵車でスーパーの冷蔵売り場へ。お客様に亘った時に初めて常温に戻る」。栽培方法も含めて、ダラットの関係者の皆さんの大きな信頼をいただくことになった。僕自身も、今や先端ビジネスは「農業」を確信した。

現地では連日、大歓迎をしてくださった

 これらを含めて、僕らは現地の大歓迎を受けた。なぜか、地元で最も読まれているという新聞の記者が3日間張り付いていた。現地の農場も拝見、僕は出荷間近のレタスを畑でシャムシャとやったところ、その新聞記者にバシャバシャと写真を撮られた。それが帰国直後の11月29日の新聞一面にでかでかと掲載されるとは、思いもよらなかった。

(ベトナムの日刊紙「tuoi tre」公式サイトへ)
http://tuoitre.vn/Chinh-tri-Xa-hoi/Phong-su-Ky-su/582592/da-lat-tim-dat-lap-lang-than-ky.html#ad-image-0

ダラットでのレタス畑。これが市場では劣悪


 成田からホーチミンに入った僕たちは、まずは大手スーパーなど市場調査も。さらに現地でやはり東京からやってきた20人ほどの農業関係視察団の方々にもお目に掛かった。農水省役人も混ざっており、農業輸出には大きな関心が集まっているようだ。明くる日には早々とダラットへ。ダラットでも大手スーパーなどを視察や様々な会議。帰国間際のハノイでも市場調査したほか、JICA現地事務所に立ち寄り、書き出しのように担当者に励まされたというわけだ。
 

ダラットのヴィラで見つけた柿の葉。親しみを感じた


 そもそも「天空のレタス」というのは、僕が採れたて長野で川上レタスを売る時に付けた名前だ。それが、ハノイで「いいね」と言われるとは。感慨深いものがあった。標高1300mの高級避暑地ダラットと標高1300mの川上村。川上村農事法人とのジョイントが実現すれば標高1300mの架け橋が実現する。虹の架け橋だ。 



荒井 久
1945年、長野県生まれ。1968年、東京電機大学電子工学科を卒業して日本経済新聞社に入社。日経BP社で日経ニューメディア編集長、日経コミュニケーション編集長などを歴任。「コンピュータ・テレフォニー」「ビットバレーの鼓動」「モバイル・インターネットの鼓動」「Web2.0の鼓動」など著書多数。02年、株式会社ソリック(www.soriq.jp)を設立、代表取締役として現在に至る。09年1月、ソリックブックスとして藤原忠彦著「平均年収2500万円の農村」を刊行。08年06月から軽井沢の貸し別荘「軽井沢ヴィラArai」( http://www.karuizawa-villa.com )を、さらに09年6月からは、長野県下の名産物をネットで販売する「採れたて長野」( http://www.rakuten.co.jp/toretatenagano/ )を経営している。
12年12月から東京都文京区根津で、ベジタブルダイニング「晴れ晴れ家」を経営。

 
 
 


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