【趣の庭】軽井沢便り
2012.12.12     
Karuizawa Journal

「2代目晴れ晴れ家」を継ぐ

快晴の根津で、初代逝く

荒井 久  

10月下旬に俳句の仲間と河口湖へドライブ

  献杯はやはり、荒井さんにお願いしたい。そう言われて。引き受けることに。

大嫌いと叫ぶ大好き

  晴れ晴れ家初代の石川鐡男さんから、2代目を引き継ぎました荒井久でございます。8月29日に9月1日からお手伝いすることを決めました。そして12月1日から正式に私が引き継ぐことになり、11月末に必要な手続きを済ませました。まるで、その直後に起こる何かを示唆していたようでもあります。

 石川さんが2階の自宅前の階段から誤って落ち、首の骨7本のうち6本を骨折したのが12月1日。前日の11月30日はご機嫌よろしく、石川さんは晴れ晴れ家で、こんな絵を描き、こんな句を書き込んでいました。「ラララのラ銀杏落ち葉にナルシスト」。

ラララの俳句

 僕の命は年内しかないから、この店だけは晴れ晴れ家俳句庵として永遠に続けて欲しい。しかし次々とそれを引き受ける方が断念し、大役は僕に回ってきました。前立腺に侵されて7年目。僕の命は晴れ晴れ家。なんとか引き継いでくれないか。心底からそう言われて、もう僕しかいませんでした。3日間、激痛で起き上がれなかった。病院に行ったら医者は「痛み止め」(麻薬)を使いましょう、と。僕はもう時間がないと感じました。

 痛み止めで、痛みは劇的に収まったと言います。しかも、これは副作用の極めて少ない薬。あと2,3年は生きられるかも。この頃の発言はそう変化していました。店を継ぐ人が現れて安心したに違いない。周囲はそう言ってくれました。この日もやや機嫌よく、絵と俳句を残していました。僕はこの「ラララのラ」が気に入り、僕にくださいとせがみ、裏に2012.11.30の日付を入れていただきました。

 1日に救急車で日本医科大学病院に運ばれてから、3日間はお元気でした。しかし、その後の3日間はまるで階段を早足で上るように天国に召されてしまいました。石川さんのご冥福をお祈りして、また、天国の石川さんに私たちをお守りくださいますよう祈りを込めて献杯をしたいと思います。 献杯。

戒名にも晴れと鐵が

たくさんの供花に囲まれて

 12月11日午後4時。告別式の最後の精進落しで、僕は献杯の大役を務めさせていただいた。途中、言葉が詰まり一瞬、会場の空気が張りつめた。

「日本の葬儀ってうまくできているね。悲しんでいる時間を与えてくれない」。晴れ晴れ家から近くの葬儀社に向かう途中、葬儀委員長を務めた玉井さんがそう言う。確かに。涙を流している暇を与えてくれない。

 玉井さんは石川鐵男さんが社長を務める会社の敏腕リーダー。12月2日だったか。「荒井さん、石川さんと連絡が取れないんですが、何かご存知ですか」との電話。「あ、昨日、階段から落ちて、日本医大に緊急入院しています」。僕は病院へも同行した。

 それから日に日に石川さんの容体は変化した。首の骨は生命に極めて重大な役目を果たしている。手術はできないから1カ月は掛かる。12月22日の句会は這ってでも出席する。できれば年内に退院したい。それはことごとく本人の希望的観測だった。

僕は隣の根津神社で祈り


 日本医科大学付属病院の1階にある高度緊急救命センター。12月6日。石川さんが人工呼吸に陥り苦しんでいる中、同センターで中村勘三郎さんがお亡くなりになり、周辺は慌ただしさに包まれていた。明けて7日午後10時。石川さんの心拍数は「0」を示した。死亡確認は8日午前0時30分。

 ご葬儀の段取りは近くの葬儀社を5代も営む神谷さんに助けられた。一人息子の海さんしかいない状況で、玉井さん、僕の3人で準備を進めた。悲しむ暇もなく。万全を期さなければ。

ラララの銀杏落ち葉がこんなにも


 通夜から告別式まで、なんと200名が弔問に駆けつけてくださった。昨夜の献杯に続く精進落し。まだ僕は茫然としている。

晴れ晴れ句会
http://kintamatei.typepad.jp/harebare/



荒井 久
1945年、長野県生まれ。1968年、東京電機大学電子工学科を卒業して日本経済新聞社に入社。日経BP社で日経ニューメディア編集長、日経コミュニケーション編集長などを歴任。「コンピュータ・テレフォニー」「ビットバレーの鼓動」「モバイル・インターネットの鼓動」「Web2.0の鼓動」など著書多数。02年、株式会社ソリック(www.soriq.jp)を設立、代表取締役として現在に至る。09年1月、ソリックブックスとして藤原忠彦著「平均年収2500万円の農村」を刊行。08年06月から軽井沢の貸し別荘「軽井沢ヴィラArai」( http://www.karuizawa-villa.com )を、さらに09年6月からは、長野県下の名産物をネットで販売する「採れたて長野」( http://www.rakuten.co.jp/toretatenagano/ )を経営している。

 
 
 


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