【趣の庭】軽井沢便り
2012.9.11     
Karuizawa Journal

ベジタブル・ダイニングに共感

レストラン「晴れ晴れ家」を引き継ぐ

荒井 久  

  とうとうというべきできか。僕を知るみんなは「またか」と呆れるに違いない。僕は、文京区根津のベジタブル・ダイニング「晴れ晴れ家」(根津1-27-7)の運営を引き継ぐことになった。長年の友人で僕が料理の哲人として慕う竹井シェフが手伝ってくれることに。

 平成の俳人、石川鐵男さん経営の「晴れ晴れ家」が人手不足に陥り、助けを求めてきたのが主な理由だ。このレストランが俳句庵の象徴的な存在として、どうしても店は閉じたくないと石川さんは訴えてきた。

 しかし、良く考えてみると、ベジタル・ダイニングの「晴れ晴れ家」と「採れたて長野」には共通のコンセプトがあった。新鮮な長野の野菜をネット通販でお届けする僕と、新鮮でたっぷりの野菜を調理して提供する石川さん。農業の生産現場と消費現場が同じコンセプトでつながった。

   

 それと石川さんと僕は同い年。まだ知り合ったばかりの仲だがお互いにバツ2同士、生き方、考え方がかなり似ていて、すぐさま意気投合した。石川さんはテレビCMの名ディレクター、名作家として鳴らし、僕も雑誌編集長から広告業界にも進出、少しは鳴らした。共通の感性がある。僕と異なるのは、僕が俳句をしなくて、石川さんが囲碁をしないことぐらい。

  新生「晴れ晴れ家」は、なるべく「採れたて長野」の農産物を使った料理を哲人が振る舞う。「採れたて長野」商品の一部は店でも販売、ネット販売のリアル店舗としても位置づけることにした。

  「採れたて長野」で一番人気の「いろは堂 炉端のお焼き」は、いろは堂の伊藤社長と相談、長野市鬼無里の本店と同じ値段の1個180円で提供することにした。嬉しい限り、というか、かなり厳しい話。だが、頑張れば根津、千駄木の行列ができる名物「たい焼き」に続く人気商品になるかも知れない。いや、絶対にそうする。


  なにより、農薬を使わず、有機自然農法に挑戦している八ヶ岳高原、小海町の「こうみゆうきちゃん倶楽部」(13年目、加入13戸)の野菜を中心に使う。もちろん、ネットショップ「採れたて長野」開設の発端となった、世界一美味しい「天空の川上レタス」を豊富に使う。泰阜村のサラダ用ほうれん草も楽しみだ。


  お客様にこの野菜のうちから3点を選んでいただき、そのお客様だけの野菜料理をシェフに創作してもらうなどの遊びも考えている。お客様とシェフが大いに気に入れば、定番メニューとしての道も拓ける。


  珈琲も「採れたて長野」で販売中の長野市の「金蛙泉」(きんあせん)の焙煎豆を使う。世界最高級の焙煎機がものを言うのか、この頃、とても美味しい。尖ったところがない珈琲で「珈琲は本来、癒しのものだから」という浅原店主の説明にいたく感激したのを思い出す。レギュラーと深入りの2種類をご用意、ご注文毎に豆を挽き、ドリップ方式で点てる。


 そのほか、名産各地のお米、木島平村のキノコ、山葡萄ジュース、黒豆菓子、須坂市の無添加100%ストレートリンゴジュース、野沢温泉村の無添加野沢菜、宮田村の豆腐におからホットケーキ、僕の大好きな馬刺し(フィレ、極上霜降り)などなど多くの「採れたて長野」商品が登場させる。


 ワイン、日本酒、焼酎は友人の力も借りて、美味しい銘柄だけを選んだ。ビールは当面、サントリーの「ザ・プレミアム・モルツ生ビール」だけにこだわって。この店はもともと、サントリーのサイトでも紹介されているのだ。
 http://gourmet.suntory.co.jp/shop/0X00080346/index.html

 もっともこだわったのは価格かも知れない。ドリップ珈琲は250円(開店記念の9月1日、2日は200円)。プレミアムモルツ生ビールは330cc専用グラスで380円(同280円)。すぐ隣が根津神社という立地から、テイクアウトにも対応することにした。つまみは250円前後、ご飯ものは500―650円で、夜も同額で承る。


  とにかく、「こだわりの飲食を格安料金で」というのがコンセプト。地元に愛される「晴れ晴れ家」に育て上げるのが大目標だ。

 俳人、石川さんとの約束は「まずは3カ月」だが、大変に喜んでくれて、今は執筆活動に専念している。ただ、彼の唯一の疑問は「荒井さん、これでどうやって稼ぐの?」ということ。




  さて。

 昔の会社勤めの頃は「荒井は強気で高い」と言われた僕だが、今、曲芸みたいに厳しいビジネスに乗り出そうとしている。でも、この街「谷根千」(谷中、根津、千駄木周辺)はみんな、そんな曲芸を平気で普通にこなしている。

 それは信州長野の純朴な人たちも同じこと。「こうみゆうきちゃん倶楽部」でも、時間と手間を何倍も掛けて農薬を使わず、有機自然農法に挑戦しているのに、「お安く」を徹底している。「安くしなければ私たちの運動が地元の皆さんに理解していただけないし、浸透しないから」とリーダーの的埜大介さんは笑う。

 ここ2、3年、僕も多くのことを学んだ。実際の人の営み、社会の営みがどんなものなのか。今頃になって少し見えてきたものがある。その成果だと言える店に成長できるかどうか、ひとえに僕の努力に掛かっている。

 9月11日、僕の67歳の誕生日に願いを込めて。


荒井 久
1945年、長野県生まれ。1968年、東京電機大学電子工学科を卒業して日本経済新聞社に入社。日経BP社で日経ニューメディア編集長、日経コミュニケーション編集長などを歴任。「コンピュータ・テレフォニー」「ビットバレーの鼓動」「モバイル・インターネットの鼓動」「Web2.0の鼓動」など著書多数。02年、株式会社ソリック(www.soriq.jp)を設立、代表取締役として現在に至る。09年1月、ソリックブックスとして藤原忠彦著「平均年収2500万円の農村」を刊行。08年06月から軽井沢の貸し別荘「軽井沢ヴィラArai」( http://www.karuizawa-villa.com )を、さらに09年6月からは、長野県下の名産物をネットで販売する「採れたて長野」( http://www.rakuten.co.jp/toretatenagano/ )を経営している。

 
 
 


トップページ会社紹介著作権についてお問い合せ
Copyright (c) Flying Garden Rights Reserved.