【趣の庭】軽井沢便り
2011.11.8     
Karuizawa Journal

「幸せ」を問い詰めてみる

1年ぶりに2冊のソリックブックス

荒井 久  


  この10月、私の会社ソリックは1年ぶりに2冊の本を発刊した。同時に2冊の発刊は、超零細出版社にとっては、かなりきつい作業となった。今、振り返ってみると、なんだか「幸せ」というキーワードで共通している気がする。写真は一つ目の本、松本きよたか著「ハンナの戦争出版奮闘記」の著者だ。写真家であり、アーティストであり、今は翻訳家でもある。松本さんとはもう20年近く前からのお付き合い。僕が米西海岸での取材でカメラマンとしてお世話になった。僕は彼を「キヨさん」と呼ぶ。


 そのキヨさんから連絡があったのは、今年5月のことだ。「しばらく放浪していましたが、ようやく荒井さんに顔を合わせられる良い仕事ができました」と。リリース直前の「ハンナの戦争」(ミルトス出版刊)を見せてくれた。相変わらず米西海岸に生息しているとばかり思っていたキヨさんは、なんと東京・浅草に住んでいたのだった。

 「ハンナの戦争」はヨーロッパを舞台にした世界第二次大戦の秘話。主人公は16歳の少女、ハンナ。実話をもとにした、いわゆるホロコーストものだが、これまでに例を見ないハッピーエンドの心温まる青春・戦争紀だ。著者はハンナの息子のギオラ・A・プラフ氏。晩年のハンナさんが自分の辿った道を録音し、本にして出版するようにと言われたという。さらに、日本の皆さんにも翻訳出版するようにとも。そこで、キヨさんとのやり取りが始まったわけだ。

 そのキヨさん、日本ではいい加減なものは出せないと、当時の戦争の実態を調べ尽くす。そして、この戦争、ハンナの生き様にとりつかれていく。約2年もの時間とエネルギーを注ぎ込んで日本版は完成する。その苦労、奮闘の様を聞くうち、僕はその奮闘そのものに興味が湧いた。同時に某大学教授のお勧めもあって、その奮闘の様をブログにしたためているという。

 「そしたら、キヨさん。その奮闘記をソリックから出しましょう」と話が進んだ。出版業界の醜いところも、本に対する愛情も熱情も、普段では仕舞っておかねばならないことも、この際、ぶちまけてしまいましょう。ただ、それほど売れるかどうか。そんな心配もあって、ソリックDIGIブックスという出版形態を考えた。名前通り、電子書籍を中心にした本作りで、どうしても紙での本が欲しいという方だけに、三省堂のオンデマンド出版を活用することにした。だから紙出版はやや高めの感じになる。

 この原稿のタイトルに、「幸せ」を問い詰めてみる、としたのは、「ハンナの戦争」「ハンナの戦争出版奮闘記」を通じているのが、キヨさんの「幸せ感」だ。読まれてみればわかるのだが、決して金銭的には恵まれてはいない。しかし、そんなこととはまったく関係なくして、そこにはキヨさんの充実感、幸せ感が充満する。キヨさんの打ち込む姿に、読者も感動するに違いない。

 もう一冊の幸せ本。それがMakko著「Makkoの幸せのおすそ分け」だ。なにやらタイトルからは上から目線のように受け取られかねないが、読んでみると、決してそんなことはない。なんと健気に努力に努力を積むMakkoさんであろうか。55歳、普通のおばさんと自ら表現するが、どんな苦労の中でも自分や自分の周辺を幸せに巻き込んでしまう特異な能力をお持ちの方だ。とにかく、嫌味がないのだ。

 この本はもともと、SNSと呼ばれるあるネットコミュニティに日記でアップしていたもの。2007年からなぜか僕ともつながり、コメントをやり取りする仲間になった。僕はその当時からMakkoさんの考え方、生きざまに感動、2カ月分ほどを本のようにまとめてプレゼントしたこともあった。料理好きなMakkoさんは、そのSNSで料理も披露する。Makkoさんは、食事の用意をすることを「ままざま」と表現する。ネットで友達になった秋田の女性がネットにアップしていた「ままざめ日記」にあやかってのことだ。秋田では食事の準備、料理を「ままざめ」と呼ぶ。


 「そういえばあれを実際の本に」と僕は思いついたのだった。2007年、2008年の日記が見事に蘇った。もともと末娘との関係に悩んでいたMakkoさん。末娘がSNSにのめり込んでいるのを見るや、自らもその世界に。そこで、末娘の心の叫びを理解、なんとSNSを通じて二人は分かりあえた。

 Makkoさん自身も、子供たちに後れを取っていた「水泳」に挑戦するうち、その心地良さに取り込まれていく。ほとんど泳げなかったMakkoさんだが、とうとう毎日1000メートル泳を自らに課せるようになる。亭主関白のご主人とのやり取りも見どころだ。

 そうしてさらに前向きに、ポジティブに、元気に、どのようにして生きて行けるのか。Makkoさんの努力はそこにある。旦那さんの九州男児、亭主関白ぶりも、実はこんなにも優しく、深い愛情に包まれているのかと感心する。10月1日、発刊するやいなや、地元佐賀市で大人気を呼ぶ。佐賀新聞の強い取材攻勢に遂に応じたことから、佐賀新聞地域面のトップを賑わすことになった。

 そうそう、日記を通じての考え方をまとめた「Makkoの幸せを呼ぶ10法則」が話題になった。誰にもどこにも幸せはいっぱいある。それをどうとらえてポジティブに生きていくか。「こうしたら誰もが幸せになれる」。いわば、そのための10法則だ。僕は今、この10法則をMakko流として、合言葉にしようとしている。

 「さあ、今日もMakko流で」。そんな風に朝のメールの最後に付けたりする。宣伝めいて恐縮だが、 「ハンナの戦争出版奮闘記」 「Makkoの幸せのおすそ分け」ともにアマゾンで販売中だ。10法則はアマゾンの紹介欄に披露されている。買わなくても、そこまでは見れる。なにより、読者のレビューが凄い。それを読むだけでも参考になる。また、いずれも今月末には電子書籍でも登場する。アップルストアやアンドロイドマーケットで購入できる。

荒井 久
1945年、長野県生まれ。1968年、東京電機大学電子工学科を卒業して日本経済新聞社に入社。日経BP社で日経ニューメディア編集長、日経コミュニケーション編集長などを歴任。「コンピュータ・テレフォニー」「ビットバレーの鼓動」「モバイル・インターネットの鼓動」「Web2.0の鼓動」など著書多数。02年、株式会社ソリック(www.soriq.jp)を設立、代表取締役として現在に至る。09年1月、ソリックブックスとして藤原忠彦著「平均年収2500万円の農村」を刊行。08年06月から軽井沢の貸し別荘「軽井沢ヴィラArai」( http://www.karuizawa-villa.com )を、さらに09年6月からは、長野県下の名産物をネットで販売する「採れたて長野」( http://www.rakuten.co.jp/toretatenagano/ )を経営している。

 
 
 


トップページ会社紹介著作権についてお問い合せ
Copyright (c) Flying Garden Rights Reserved.