【趣の庭】軽井沢便り
2011.7.19     
Karuizawa Journal

電子書籍、普及の夏

紙でも在庫なし出版を宣言

荒井 久  


 僕がケータイをに乗り換えたのは今年が評判を呼び、この方向が見えていたからだ。それでdocomoの友人に相談して、発売間もないGALAXY Tabに機種変更したのだった。

 果たして電話はどうするの。そんな疑問をお持ちの方も大いに違いない。タブレット本体とヘッドフォンをつなぐブルートゥースを利用することにした。ブルートゥースは10メートル以内ながら、高速で両者をつなぐ無線通信である。ただ、気を付けねばならないのはマイクからノイズを拾いすぎて電話相手に迷惑が掛かると聞いていた。

 そこで、本体はほとんど無料の感覚でタブレットに乗り換えられたものの、このヘッドフォンには金を掛けた。確か、東京・有楽町のビックカメラ1万円ちょっとした。僕はこれで毎日ヘッドフォンを掛ける生活になったのだが、高級品のせいか違和感がない。時々、お耳が不自由なのですかと問われるのには閉口するのだが。

さてさて、今日の本題はそんなことではない。タブレットで電子書籍を読んでいただこうという魂胆なのである。この写真の下地は確か、日本経済新聞201117日号だったと思う。今年はタブレット端末が普及するぞという記事だった。そして711日付けの読売新聞には「電子書籍 普及の夏」とある。そのタイトルをそっくりいただいた。講談社や新潮社、学研も今後は新刊書をすべて電子書籍化するという。

弱小出版社の我が社(ソリック)も黙ってはいないぞという気持ちになる。書籍の廃棄処分の多さについては、マスコミは自分自身のことだから何も言わないが、これほど地球環境によくないことはない。半分以上は捨てているのだから、それまでのエネルギーの無駄、紙資源の無駄は計り知れない。

それで僕は、三省堂のオンデマンド出版に飛びついた。1部単位で必要なだけ印刷・製本・販売が可能だ。在庫は完全にゼロなのだ。しかも、基本は紙ではなく電子で。主体が電子書籍で、どうしても紙の本が欲しいと言う方には、少し高めになりますがオンデマンド出版で。そんな方針を考えている。電子書籍+在庫なし印刷出版を宣言したいのだ。

そこでまず、僕はソリックブックス第二弾の「3冊のロング・グッドバイを読む」を電子書籍化することに。現在、制作中だ。おそらく7月中、遅くても8月初旬に発売にこぎ着ける予定だ。

こちらが、その著者の松原元信さん、75歳。いよいよお元気だ。電子化の途中でもチェックに抜かりがない。ただ、紙とは異なることもある。電子書籍ではユーザーによって文字の大きさを変えるので、その都度、1頁のレイアウトが変る。そのことも配慮した上で、制作している。著者自身で書かれたイラストを上手く見せてあげねばならない。

 続いて、我がソリックから電子書籍兼オンデマンド出版第一号となりそうなのが、この方、松本清貴さん、45歳だ。世界各地を放浪したのち、彫刻家、写真家として活躍後、今年、翻訳家としてデビューした。

 その翻訳デビュー作がこれ「ハンナの戦争」である第二次世界大戦中に起きたナチスによるユダヤ人大虐殺“ホロコースト”を、たったひとりで生き延びた少女「ハンナ」の物語である。著者は、アメリカとイスラエルで二重生活を送っている国際赤十字医師、ギオラ・A・プラフ氏。小説に登場する少女ハンナの実の息子である。

つまりプラフ氏は、母親の実体験を小説に書き上げたのだ。ハンナさんは67歳で癌で亡くなったのだが、プラフ氏が内科医として勤務していた米国の大学病院に入院した際、その病床であらためて体験をつぶさに語って聞かせ、録音もした。できるだけ多くの人々に知ってもらうよう念を押したのだという。

その翻訳に挑戦した松本さんだが、その真実の凄さにのめり込み、1年半に及ぶさまざまな苦闘、感動を味わう。その話を聞いた僕は、松本さんの姿勢そのものに感激した。その松本さんの挑戦そのものを本にして出しましょうということに。大好きな松本さんの翻訳本をPRしたいという気持ちもあるからだ。出版元はミルトス出版という、我がソリックとはなんのゆかりもないのだが、僕は応援したいのだ。

要はそんな比較的軽い気分で本が出せるようになったのもいい。松本さんの命名で「ソリックブックス」を「ソリックDIGIブックス」に変えることにした。

 そして次に執筆中なのが、こちら長野県最南端の根羽村前村長の小木曽亮弌さんだ。小木曽さんは今年4月まで20年に亘って根羽村長を務めた。わずか437世帯の過疎の村を立派な村に育ててきた。その前村長さんが今、その歴史を綴っている。こちらはすでに、9月に長野市の晴れ舞台で出版パーティを計画している。こちらがソリックDIGIブックス第二号になるはずだ。

 さらにさらに。いろんな話もある。たとえば、知り合いのジャーナリストが本格的に歴史小説家としてデビューする。歴史ものが好きで、サラリーマン時代にあちこち、戦国時代の足跡を取材してきた。

デビューに当たっては、僕の電子書籍+在庫なし印刷出版にいたく感激してくれた。逆に彼からは、電子書籍のさまざまなアイディアが飛び出した。ネットならではの時間セール、年齢別価格、章単位の販売、付録サービス、ネットでの販売戦略などなど、話は盛り上がった。

 さて、電子書籍元年。これからが楽しみだ。

 

荒井 久
1945年、長野県生まれ。1968年、東京電機大学電子工学科を卒業して日本経済新聞社に入社。日経BP社で日経ニューメディア編集長、日経コミュニケーション編集長などを歴任。「コンピュータ・テレフォニー」「ビットバレーの鼓動」「モバイル・インターネットの鼓動」「Web2.0の鼓動」など著書多数。02年、株式会社ソリック(www.soriq.jp)を設立、代表取締役として現在に至る。09年1月、ソリックブックスとして藤原忠彦著「平均年収2500万円の農村」を刊行。08年06月から軽井沢の貸し別荘「軽井沢ヴィラArai」( http://www.karuizawa-villa.com )を、さらに09年6月からは、長野県下の名産物をネットで販売する「採れたて長野」( http://www.rakuten.co.jp/toretatenagano/ )を経営している。

 
 
 


トップページ会社紹介著作権についてお問い合せ
Copyright (c) Flying Garden Rights Reserved.