【趣の庭】軽井沢便り
2011.4.19     
Karuizawa Journal

地元の紫黒米を使ったお米スイーツ「甘酒」

千曲川最上流、創業153年の蔵元の意気込み

荒井 久  


   ちょうど1年前のことだ。長野県佐久穂町役場の産業振興課の古海淳さんから電話が入った。この町の素晴らしい農産物を紹介させて欲しいとのこと。僕の生まれ故郷からすぐ近く。僕はいてもたってもいられずに現地に向かったのだった。

   そして1カ月前。まさに、あの3.11東日本大地震の1時間半前のことだ。あの古海さんからのメールが届く。「黒澤酒造ですが、白樺樹液以外に興味がわく商品がありましたのでご紹介させていただきます。商品名は、紫黒米甘酒の玉響(たまゆら)です。商品の詳細につきましては、私が作成しました玉響の紹介パンフを御覧いただけたらと思います」。

   黒澤酒造と言えば、標高800m、千曲川最上流の蔵元。153年前の安政5年(1858年)創業の蔵元の名門だ。長野県産の酒米にこだわり、蔵内にこんこんと湧き出る深井戸水で銘酒を生んできた。銘酒「井筒長」。今は亡き、僕の父母がこよなく愛したお酒だ。

   佐久穂町は平成の大合併で、旧佐久町と旧八千穂村で誕生した。僕の最年長の従兄弟が旧八千穂村にいて、僕は子供の頃から遊びに来るのがなによりの楽しみだった。黒澤酒造も、その旧八千穂村のJR八千穂駅のすぐそばにある。1期目の町長は旧佐久町長と旧八千穂村長が争い、人口の少ない八千穂村長の佐々木さんが新町長に選ばれた。人望が厚いのだという。何かと僕も、そんな旧八千穂村が好きだ。

   JR八千穂駅は、JR小海線の小さな駅。小海線は、長野県小諸市の小諸駅と山梨県北杜市の小淵沢駅を結ぶ、JRでは日本一、標高の高いところを走ることで知られる。川上村を源流とする千曲川と絡み合うように小海線は走る。蒸気機関車の頃は、傾斜が激しいところでは登り切れなくて人手で押したとも聞く。僕の子供のころにはディーゼルカーになったが、JRでは今や全国に先駆けてハイブリッドカーが走る。

   昨年に訪ねた佐久穂町役場では、産業振興課長さん、同係長さんも出迎えてくれた。そして、なんと。千葉県、広告代理店出身の力武文雄さん(写真右)も。名刺には「アンテナさくほ」代表とあった。古海さんも長野県庁から派遣されてきていると聞き、どうやら、町の振興に熱心な佐々木町長の想いのようだ。

   古海さんらに紹介された日本一の小宮山醤油、味は天下一品のキタヤツハムも、採れたて長野では取り扱いが始まっていない。小宮山醤油は地元のためしかやらないと、生産量も少なく、しかも1升瓶でしか製造していない。黒澤酒造でも白樺樹液を紹介されたままになっていた。

   さて、今回。黒澤酒造の甘酒の話題。お米の文化が見直されているためだろうか。なぜかこの頃、静かな甘酒ブームだという。早速、僕は黒澤酒造の甘酒を取り寄せて、その上品な甘さ、旨さに感動する。以前から大好評だったという「蔵元手造りあまざけ」、それに今回開発した、古代米の紫黒米を使った甘酒「玉響(たまゆら)」。

   蔵元の6代目・黒澤孝夫さん(常務)が満を持して世に問うのが、この新しい甘酒「玉響」。原料は佐久穂町産米で作った酒造用米麹と小海町産の紫黒米のみ。添加物、着色料、砂糖などの糖類は一切使用していない。綺麗な桃色の甘酒に仕上がった。玉響は、万葉集の中の一首に使われている言葉で、いくつかの玉がゆらぎ触れ合う様子を表現しているという。古代米の流れを汲む紫黒米がゆらゆらと触れ合い、あたかも静かな音色を奏で祝福しているような甘酒だと説明する。優しい甘みと、「モグモグ」「プチプチ」とした食感・喉ごし。まさに「食べる甘酒」と呼ぶに相応しい。お米スイーツの雄としてブレイクの予感がするという。

   古代米のうち、主に果皮部にアントシアニン系の紫黒色素を持つ有色米が紫黒米。糖にビタミン(主にビタミンB、ビタミンE)とリン、カルシウムなどのミネラルを含み、これらを摂取することで滋養強壮作用をもたらす。またアントシアニンはポリフェノールの一種で視力増強や肝機能の強化作用があると言われている。

   新製品の開発も、これまでの「蔵元手造りあまざけ」が大好評であるからこそ。清酒用の米麹を丁寧に作り その麹のみでじっくりと造り上げている。 よく冷やして飲むも良し。あるいは、温めておろし生姜を添えて飲むも良し。その「あまざけ」の上品で、すっきりした甘さに感動する。米・麹の形がしっかり残っているにも関わらず、口の中にふんわりと溶け込む。丁寧に、じっくりと時間を掛けて造り上げたことを想像させてくれる。

   「玉響」も同様だ。しっかりと紫黒米・麹がなんとも柔らかい。「あまざけ」の上品な旨さに紫黒米独特のコクを感じる。今時風に表現すれば「食べる甘酒」。もちろん、双方とも完全ノンアルコールだ。

   「冬は温めていただけば体は温まりますが、江戸時代から夏に冷やした甘酒を飲んでいました。ですから甘酒は夏の季語なんです」と杜氏の黒澤洋平さん。「点滴と同様な成分で栄養豊富なので、疲れた時などには是非お勧め」とも言うから栄養ドリンクとしての位置づけでもよさそうだ。「蔵元手造りあまざけ」が720g、1本で578円 (税込)、紫黒米あまざけ「玉響」が720g、1本で800円 (税込)とリーズナブルなのもいい。

   そうそう、今年も間もなく、白樺の樹液採取が始まる。旧八千穂村を八ヶ岳方面に上っていくと白樺林が広がる。そこで、4月末に白樺樹液の採取が始まる。白樺は春を迎え、新芽を出す際に必要な水分を地中から吸い上げる。その自然の恵みである樹液をいただくわけだ。ロシアや北海道のアイヌの方々が好んでいるという白樺樹液。今年も黒澤酒造が販売するという。今年こそ、採れたて長野でも取り扱いたい。


荒井 久
1945年、長野県生まれ。1968年、東京電機大学電子工学科を卒業して日本経済新聞社に入社。日経BP社で日経ニューメディア編集長、日経コミュニケーション編集長などを歴任。「コンピュータ・テレフォニー」「ビットバレーの鼓動」「モバイル・インターネットの鼓動」「Web2.0の鼓動」など著書多数。02年、株式会社ソリック(www.soriq.jp)を設立、代表取締役として現在に至る。09年1月、ソリックブックスとして藤原忠彦著「平均年収2500万円の農村」を刊行。08年06月から軽井沢の貸し別荘「軽井沢ヴィラArai」( http://www.karuizawa-villa.com )を、さらに09年6月からは、長野県下の名産物をネットで販売する「採れたて長野」( http://www.rakuten.co.jp/toretatenagano/ )を経営している。

 
 
 


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