【趣の庭】軽井沢便り
2011.3.22     
Karuizawa Journal

長野県北部県境地方3村の頑張り

明暗分けた震度6強、震度5弱、震度4

荒井 久  


   3月11日午後の東北沖大地震。東京でも震度5強だった。大きな余震も続き、日本中を恐怖のどん底に陥れた。しかも、その恐怖も覚めぬ明くる日の早朝、午前4時。今度は長野県最北部の栄村で震度6強の大地震が襲う。

   そして15日午前7時。長野県最南端の村、根羽村から、小木曽村長率いる20名のトラックなどが根羽村を出発した。トラックには根羽村名産のうどん、そばなど2300食。向かうは長野県最北端の栄村だ。

   長野県は広い。隣が新潟県の栄村へは、隣が愛知県豊田市の根羽村からは、高速道路を使っても約5時間も掛かった。根羽村の人口は約1100人だが、栄村の人口は約2300人。一人1食の勘定だ。

   栄村では12日早朝の震度6強で村が寸断され、村民2042人に避難勧告が出された。ほぼ全村民に近い。このうち、13日現在で1740人が村内7か所で避難している。根羽村の一行は早速に、避難所全7か所を回り、うどんやそばを振る舞った。うどんは採れたて長野でも販売している名産品だ。おそらく、地震直後に、村長の号令で仕込まれたに違いない。避難所ではいずれも行列ができて人気を呼んだという。その様子は16日付けに地元紙、信濃毎日新聞が伝えている。

   小木曽村長は、かつて根羽村が集中豪雨の被害を受けた時に各地から支援をいただいて嬉しかった、少しでもそのお返しがしたいと語ったという。それで僕は小木曽村長の話を思い出していた。豪雨で大災害を受けた根羽村に、トラックの助手席に乗った藤原川上村長が、トラックに山盛りのレタスを運んできた。「川上村から救援レタス届く」。当時の信濃毎日新聞はそう伝えている。

   栄村と聞いて、僕の脳裏に浮かんだのが、栄村とは西側に接する木島平村野沢温泉村だ。今回の地震は栄村が震度6強、野沢温泉村が震度5弱、木島平村が震度4だった。お互いに10キロ程度しか離れていない地点でそんなにも震度は異なるものなのか。しかもその後も栄村は、何度か余震に悩まされている。

   昨年の早春に僕は、木島平村野沢温泉村を訪ねた。あの地一帯の村民の大きなエネルギーを思い出した。あの向こうの山々が栄村だよ。そう指差したのが、木島平村の産直いいやま社長の久保田則保社長(写真左)。この辺一帯は新潟県の県境の豪雪地帯。冬の仕事を見つけるのが大変だったと話し出した。

   このところは早春からの農産物もある。そのひとつがアスパラガス。すでに太い良品が育っていた。今では、さまざまな農産物の栽培が始まっている。

   その木島平村では冬場、一家を支える男たちは決まって出稼ぎに出ねばならなかった。夏は農業、冬は出稼ぎ。それがここに住む男たちの決まりだった。何とか冬場も出稼ぎに出なくてもいいようにならないものか。そのために考えられたのが冬場のキノコ栽培だった。

   徹底した高度なキノコ栽培技術、美味しいキノコ作りはこうして木島平で誕生し、この周辺一帯に広がっていった。そのキノコ栽培の技術の高さをつぶさに見て歩き、ネットショップ「採れたて長野」でも取り扱いを始めたのだった。

   ブナシメジ、エリンギ、なめこなどなど、さまざまなキノコ工場を見せていただき、その素晴らしさに感動したものだった。このお蔭で、冬の出稼ぎがなくなったことにも想いを馳せた。

   また、この辺一帯はお米の名産地でもある。栄村西南には木島平村、栄村西北には野沢温泉村という位置関係。長野県の中央部、東端の川上村を源流とする千曲川は、東信州から北信州に流れ込み、最後は木島平村の西端、そして野沢温泉村の西端を流れて栄村を通って新潟県中魚沼郡に流れ込む。そこから千曲川は信濃川に名前が変わる。魚沼に接するこの地域がお米の名産地であることも分かる。千曲川が信州の半分を通り抜けながら山の幸を運び、肥沃な米どころを構成しているのではないかというのが僕の説だ。

   このことに気が付き、熱心な米どころの木島平村のお米採れたて長野でも扱っている。「村長の太鼓判」と称する名品はすでに昨年末に売り切れたが、そのほかはまだまだ残っている。

   同様の米どころが野沢温泉村だ。せっかくだから旨い良い米をと立ち上がったのが、野沢農産生産組合の高橋義三組合長だ。なんと、米・食味鑑定コンクール国際大会で金賞受賞V3を達成。3年連続での受賞であると共に、一昨年には最高得点での受賞だった。

   そして、野沢温泉村といえば、なんといっても野沢菜漬が有名。ここでは、大手のとみき漬物の富井義裕社長が頑張る。なぜ、ここでの野沢菜漬がこんなにも美味しいのか。土地柄だけではなく、やはりこの地の男たちの頑張りが、豊かな味を生んでいる。

 頑張って欲しい、栄村のみなさん。まだまだ雪が襲う中で、県もすぐに阿部知事が駆けつけて救援手段をこうじている。豪雪のこの地域で、これを跳ね除ける力は蓄えられている。そのことを言いたかった。


荒井 久
1945年、長野県生まれ。1968年、東京電機大学電子工学科を卒業して日本経済新聞社に入社。日経BP社で日経ニューメディア編集長、日経コミュニケーション編集長などを歴任。「コンピュータ・テレフォニー」「ビットバレーの鼓動」「モバイル・インターネットの鼓動」「Web2.0の鼓動」など著書多数。02年、株式会社ソリック(www.soriq.jp)を設立、代表取締役として現在に至る。09年1月、ソリックブックスとして藤原忠彦著「平均年収2500万円の農村」を刊行。08年06月から軽井沢の貸し別荘「軽井沢ヴィラArai」( http://www.karuizawa-villa.com )を、さらに09年6月からは、長野県下の名産物をネットで販売する「採れたて長野」( http://www.rakuten.co.jp/toretatenagano/ )を経営している。

 
 
 


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