【趣の庭】軽井沢便り
2009.1.26     
佐久の川上村

平均年収2500万円の豊かな農村に大変身

海抜1200mの高寒冷地という逆境をバネに

荒井 久
いきなり、冬には似合わない写真だが。
理由があってこの写真を持ち出した。
長野県南佐久郡川上村。
レタス農家を継ぐ働き盛りの皆さんだ。


写真
平均年収2500万円の川上村農民
農業後継者には困らない。

「松〜〜本、伊那〜、佐〜久、善〜光〜寺」
長野県人なら誰もが歌える「信濃の国」の一節だ。
信濃の国・長野県にはこの4つの平らがある。
松本の中信、伊那の南信、佐久の東信、善光寺(長野)の北信だ。

僕が生まれたのはこのうちの東信・佐久平の佐久市。 この佐久市を挟んで一番北に軽井沢町、一番南に川上村がある。
僕は今、北の軽井沢から南の川上村を羨ましくみている。

川上村の農家は現在、607戸。
主力の高原野菜の売上は約155億円(平成19年度実績)だ。
な、なんと1戸平均で2550万円もの年収になる。
20年度もほぼ同じくらいの売上の見込みだという。
しかも、専業農家はこのうちの332戸で、そのほかは兼業農家。
さらに豊かな暮らしが想像される。

こんな川上村は、とにかく村営が好きだ。
赤字民営バスを村営化して黒字化したり。
村営の24時間オープンの図書館。
それに村営のCATVは全戸に完備だ。
村営の「ヘルシーパーク」、それに村営の「針灸診療所」まである。
国際交流に熱心で、同時通訳可能な多目的ホールもある。

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川上村村長の藤原忠彦さん。
村長になって6期、21年目だ。

僕が子供のころは、貧乏を極めていたこの村が、どうして大変身したのか。
その鍵を握るのが現村長の藤原忠彦さんだ。
昨日(1月19日)も藤原さんにお目にかかった。

「私は規制が好きなんです。規制があればあるほどファイトが沸く」
「今、派遣切りとか暗いニュースが流れていますが、川上村ではもう5年も前から毎年600人以上もの中国研修生を各農家に受け入れてもらっています。しかも、4月から11月まで8ヶ月間も」
「各農家で良く面倒をみていただいていますし、全戸に入っているCATVにはスカパー経由で中国のテレビ放送も見られます。中国にいるよりも10倍の賃金がもらえるし、喜んで働いてくれています。農業もしっかりと学んで欲しいと思っています」

もともと、まとまった研修生は工場等の第2次産業向けで、労働時間も朝8時から午後5時との規制があったという。
農業で、しかも朝5時から夕方5時のなかの8時間労働という条件で可能にするために中央官庁を動かした。
おそらく、このような研修生は日本中でもまだ川上村だけだろうという。

一方で藤原村長は中国への高級野菜の輸出にも挑戦している。
すでに輸出障壁の少ない台湾に輸出を実施しているし、今年は香港、シンガポールに輸出する予定という。
目指すは上海、北京だ。
2010年の上海万博には「川上ブース」も確保の予定で、その頃から輸出が可能になるかもしれない。
それに、これまでの研修制度が何らかの形で生きてくるに違いない。


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畑に出ないと農民の気持ちから離れてしまう」
「それに、朝の畑はなんとも清々しい」

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広大に広がる川上村の高原野菜畑。
土壌改良、新種開発、機械化も進んでいる。

藤原さんが父親の急死で高校を中退、専業農業に従事したのは17歳の時。それから早53年にもなる。
村長になってからは6期、21年目だ。

23歳の時、大型トラクターの運転手として村役場に臨時採用される。
「村の畑は自分が全部掘り起こした」と振り返る。
当時の村長に認められて正式に役場に入るのは25歳の時だ。
それからめきめきと頭角を現し、最年少で企画課長に昇進。
そして、村の農業後継者グループから、村長にと担ぎ出された。
最後には村民の過半数が署名する、村長推薦運動に発展。
無投票で村長に就任した。

傍らで農業も続けた。
「いつも農民と共に、同じ仲間」。
そんな信念があったからだ。
今でも、早朝に畑に立つ。
なんとも朝の一仕事は体にも良いという。

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村のカラマツで作った川上村立中学校。
なんとも贅沢な造りだ。

昨年夏、川上村立中学校の新校舎が完成、2学期から利用が始まった。
村のおじいちゃんの時代に植えたカラマツを。
お父さんの時代に育てて。
そして、私たちも伐採に参加して。
一流の専門家のプロデュース、設計、建築技術で。
見事な木造中学校が完成した。

生徒数わずか160名程度なのに。
なんとも贅沢な学校、教室だ。
まるで、リゾート地のホテルにいるような。
まるで、美術館にいるような。
そんな錯覚に落ちるような「公立中学校」なのだ。
日本随一の大規模木造建築物だろうという。


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中央奥の「音楽堂」、ほかに「体育館」も村営だ。
7ヵ所から補助金を獲得した智恵がある。

新校舎の中には別途、村営の「音楽堂」と「体育館」がある。
これらを村立中学校に“貸している”のは補助金を引き出すため。
この辺に村長の工夫がある。

中学校の一部ではない「音楽堂」と「体育館」なら文科省以外から補助金が受けられるからだ。
しかも利用率が高まるのは必然。
「箱物」の多目的利用という訳だ。

カラマツの利用で農水省からも補助金をいただいた。
なんやかんやの智恵で、なんと7ヵ所から補助金を引き出した。
音楽堂には、教会で使われるドイツ製のパイプオルガンを購入した。
藤原さんは、いずれこの音楽堂の前で、卒業生が結婚式を挙げることを夢見ている。 中学校での結婚式なんて、日本中でも聞いたことがない。
藤原さんの願いをかなえてくれる第1号は、はたしていつ、だれだろうか。

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「ここに日本人の底力がある」
菅原文太さん、藤原村長宅で

こんなアクティブな藤原村長には応援団も多い。
在京川上村応援団には各界のお歴々が並ぶ。
ときどき通称「川上サミット」を開催、お知恵を借りている。
藤原さんの行動、熱意に動かされた面々だ。

俳優の菅原文太さんも藤原村長を応援しているおひとり。
ニッポン放送「菅原文太―日本人の底力」に、藤原さんを2度もゲストとして招いた。
文太さんは藤原さんの底力を見抜いている。

昨年末に僕は「これから菅原文太さんと食事する」という藤原さんに付いて行ってしまった。
僕にはピンと来るものがあったからだ。


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藤原忠彦著「平均年収2500万円の農村」
ソリックブックス第1号だ

そのピンときたもの。
その謎がこの本の帯にある。
実は、ソリックはこの1月14日、藤原さんの著書を刊行した。
ソリックブックス第1号。
「平均年収2500万円の農村―いかに寒村が豊かに生まれ変わったか―」
僕は、この本の帯に文太さんの一言が欲しかった。

僕が本の見本を差し出すと、文太さんはすぐにわかってくれた。
「帯に一言欲しいんだろう」
すかさず僕は「菅原文太、ここに日本人の底力がある」と書いた。
「おい、どうだ」
文太さんは斜向かいにいらっしゃった奥様に返事を促した。
「あら、ラジオの宣伝にもなるし、いいんじゃなーい」
それで決まりだった。

翌日僕は、急いで帯の原稿を修正して「校了」したのだった。

詳しい情報は以下で。
www.soriqbooks.com

荒井 久
1945年、長野県生まれ。1968年、東京電機大学電子工学科を卒業して日本経済新聞社に入社。日経BP社で日経ニューメディア編集長、日経コミュニケーション編集長などを歴任。「コンピュータ・テレフォニー」「ビットバレーの鼓動」「モバイル・インターネットの鼓動」「Web2.0の鼓動」など著書多数。02年、株式会社ソリック(www.soriq.jp)を設立、代表取締役として現在に至る。09年1月、ソリックブックスとして藤原忠彦著「平均年収2500万円の農村」を刊行。08年06月から軽井沢の貸し別荘「軽井沢ヴィラArai」( http://www.karuizawa-villa.com )を、さらに09年6月からは、長野県下の名産物をネットで販売する「採れたて長野」( http://www.toretatenagano.com )を経営している。

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