【趣の庭】お庭拝見
2008.8.11 
 大地の力を感じさせる枯山水

 海の波音まで聞こえるような

 能「藍染川」の悲恋が背景に
林田 茂喜  
写真
光明禅寺・山門の扁額

 学問の神様・菅原道真をまつる太宰府天満宮(福岡県太宰府市)の参道わきに 「光明禅寺」がある。この寺の庭は九州を代表する枯山水といわれている。

▼光の配石
 本堂の前庭は14の石を「光」という字の形に配置した「仏光石庭」。本堂の真ん中に座ると、石庭の中央奥に釈迦三尊を模したと思われる3つの立石が据えられ、そこから光線が左右に伸びやかに放たれているように感じる。

写真
太宰府天満宮の楼門  奥に本殿が見える

 本堂の奥庭は「一滴海庭」と名付けられている。一滴の水がせせらぎとなり、川となり、大海に流れ込む様子を、苔で陸を、白砂で水を表現している。海には無数の島が浮かぶ。耳を澄ませば涛々と水音が聞こえるようだ。砂紋がそんな想像をかきたてる。真夏の太陽を幾重にも遮るモミジの小さな葉は、はや黄色みを帯び始めた。新緑、紅葉時には人出でにぎわう寺も、この時期は閑散。蝉の鳴声も「ジ、ジ、ジ…」と遠慮がちだ。

写真
本堂前の「仏光石庭」

▼鎌倉期の創建
 この寺は、鎌倉中期の1273年、菅原家の血を引く鉄牛円心和尚によって創建された臨済宗東福寺派の禅寺。能に「藍染川」という曲がある。太宰府の神主が京の都で契った女が子の梅千代を連れて太宰府まで来たが、神主に会えず、絶望して藍染川に身を投げる。が、女は天満天神の力で蘇生する…というストーリー。郷土史家によると、梅千代こそ後の鉄牛円心和尚だという。そんな物語を織り込んで観ると、静謐な一滴海庭が強い力を秘めた大地に思われてきた。

写真2
「一滴海庭」



林田 茂喜(はやしだ・しげき)
 長野県出身。
 通信社の記者を経て、現在、造園業を楽しむ。
 
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