【趣の庭】お庭拝見
2007.08.06
お隣の庭も多少は掃除することこれが他人の敷地に入り込む術です
林田 茂喜
 
写真
 
「書院庭園」スギゴケがしっとりとした趣をかもしだしている
 

 山口県下関市にある長府毛利邸の庭園は随分ぜいたくな造りだ。といっても天下の名石とか名木がある訳ではない。書院庭園、池泉回遊式庭園、枯れ山水庭園の3様式が寄り添って武家屋敷造りの母屋を囲む。いずれも小規模ながら趣深く、見る人によっていろいろな味わい方ができるからだ。
 書院庭園は一面スギゴケで覆われ、生い茂ったアカマツやマキ、モッコクなどの木漏れ日が差し込み、静かで神秘的なたたずまい。池泉には大小2つの滝の水が流れ込み、園路はカエデ、クスノキの枝が頭上に覆いかぶさって、深山に踏み入った雰囲気。枯れ山水庭園は、築山の頂上の2mを超す不動石を基点に2つの枯れ流れが渓谷の景色を表している。

 
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「枯山水庭園」築山の中腹に陽石、木戸の右、白壁の前に陰石が組まれている
 

 興味深いのは、枯れ山水と書院庭園にそれぞれ1組の陰陽石が据えられていること。書院庭園の陰石は母屋の方からは、それと分からない角度に据えられている。この長府毛利邸を建設した長府毛利家14代藩主元敏(初代は毛利元就の孫)は和歌や書に秀で、宮中歌所寄人を務めた人物。陰石の角度を決めたのは文人好みの奥ゆかしさからか。
 陰陽石は東京の六義園や金沢の兼六園など大名庭園には例がある。子孫繁栄を願うと同時に、庭の点景としての遊び心の意味もあるという。長府毛利家は5代元矩の後、世継ぎがなく一時断絶した。そんな事情が切実な願いとなって2組もの陰陽石となったと想像させる。ちなみに元敏は13人の子に恵まれた。

 
林田 茂喜 (はやしだ・しげき)
長野県出身。
通信社の記者を経て、現在、造園業を楽しむ。
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