【趣の庭】お庭拝見
2007.05.14
Vol.3 阿蘇山からの伏流水を庭に 細川家が80年かけて造園 水前寺成趣園
林田 茂喜
  久しぶりに熊本市の元細川家の庭園・水前寺成趣園(じょうじゅえん)を訪れた。信州生まれの私が 熊本を第二の故郷として二十数年。その間、この大名庭園に足を運んだのは三回だけ。今回、じっくり 庭を眺めてみて、典雅な庭だなとつくづく思った。
 阿蘇山からの伏流水をたたえた池の向こうに葛飾北斎描く富士山のような姿の築山、その右手になだらかな起伏を見せて築山連山が広がる。といっても、顔を少し巡らせば一望のもとに見渡せるスケールだ。東海道五十三次の名所を模して造られた縮景庭園といわれる。池の北側隅に石橋(日本橋)があり、坂を登った辺りが箱根山、築山の前にある入江が大井川、池を時計回りに半周した南の端に瀬田の唐橋がある。
 
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 池畔に建つ京都から移された古今伝授の間(県の重文)から眺めていると、縮景などは超越して、美しい絵をみているような気分になる。築山と築山連山一帯は芝が刈り込まれて、萌黄色の絹で覆ったよう。点在する松は盆栽仕立てのように小さく、雄大な遠近・高低感を演出している。池には二つの中島が浮かび、沢渡りの飛石が岸につなぐ。水面にはそこここに岩が顔を出す。その間合いが絶妙だ。庭園の雰囲気は繊細で優雅。大名庭園に多く見られる勇壮、豪快さとは異質だ。築庭に着手した細川家第三代の忠利は千利休正伝の茶道を熊本に興した。初代幽斎は八条宮智仁親王に古今集解釈の秘伝を伝授したほどの文人。五代綱利が完成させるまで八十年かけた庭園には約三百年の時を超えて文化を尊ぶ細川家の気風が息づいているようだ。
 伏流水が減って池の水位が下がり、所々にオリが浮く。入園者数もピークの年間百八十万から三十八万に細った。成趣園の名は、陶淵明の「帰去来辞」の一節 「...園は日々にわたりて趣を成し...」 に由来するという。もっと度々訪れて趣の変化を味わいたいと思った。
 
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林田 茂喜 (はやしだ・しげき)
長野県出身。
通信社の記者を経て、現在、造園業を楽しむ。
 


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