【趣の庭】釣り三昧
2011.11.22

釣り三昧 Vol.77
Joy of Fishing


親指がぁ!


樋口 正博


スポンジを貼ったステンレスの板で固定

■原稿書きができない

 いつものように、突然妻に宣言されてその作業は始まった。引っ越しでしる。いや「しる」ではなく「ある」である。
 タコの介はいま苦闘中だ。てにに、いや「てにに」ではなく「なにに」とタイピングしようとしても「な」が「て」になってしまう。引っ越しで左手親指を骨折したのだ。
 タコの介はキーボードを親指シフト入力という入力法で原稿を書いている。
 その名称通り、親指をシフトして入力する方法で、日本語を高速で入力できる。調子がいいと、ドラマを見ながらセリフをそのまま入力していくことも可能だ。
 タコの介は25年前、富士通のオアシスというワープロを使い出してから、ずっと親指シフト入力である。ローマ字入力のようにせわしてなく指を動かさなくても、ゆったりと指を動かしても入力速度はローマ字入力より数段速い。
 この入力ができなくなってしまった。

写真
表側。テープで親指がかぶれてしまった

■「痛いのやめてください!」

 ところが、引っ越しで親指を骨折してしまった。本の束を抱えて、足下を見ずに10段ほどある外階段の中ほどから踏み外した。タコの介は前方に2回転して尻から地面に着地した。映画「蒲田行進曲」の階段落ちそのままに。
 タコの介はアタマも打たずに、見事に着地に成功した。自分をほめてやりたい。だが、唯一左手親指を痛めたらしい。ズキズキしたあと、急速にジンジンして、ブンブンと膨れてきた。
 やっちまったか?
 それでも引っ越し作業をやめるわけにはいかない。医者に行ったのはそさから一週間後だった。顔見知りの行きつけの医院の医院長はいった。
「親指のマレットフィンガー(槌指)だね。手術で爪の下からワイヤーを刺して指を伸ばして固定する手術をやろう」
「ええッ! 痛いのやめてください。ほかに方法はありませんか?」
「じゃ、指を器具で固定してじっと待つ。まっ、3か月はかかるね」
 ということで、いま親指は金属の板で固定している。当然、動かない。金属を外すのは風呂にはいるときだけ。それ以外はずっと固定したままだ。

写真
最後に包帯を巻いて保護する

■タコの介、ピンチ!

 指を動かすと曲がったまま親指が動かなくなる。タコの介、近年まれに見るピンチである。
 まずは、釣りで竿を握ったり、リールを巻いたり、仕掛けをつかんだり、エサをハリに付けたり。すべての作業がまともにできない。
 親指には包帯を巻いているので、濡らすこともできずに炊事用の手袋をしているので、ますます細かな作業ができない。
 タコの介は釣りの取材では釣りをしないことに決めた。先日、嵐山光三郎との外房・勝浦での「ヒラメ釣り」では、嵐山のサポートに徹して、なんとかヒラメを釣り上げてもらった。ちなみに、タコの介が「つり丸」の編集長を辞任したため、嵐山の連載「釣りする旅人」は、この釣りが最後となった。
 さて、一番の問題は原稿書きである。親指を使えないので、誤入力、誤変換がひんぱつする。いちいち直しているので、思考が中断する。いらいらする。
 タコの介は改めて親指君の偉大さを思い知らされている。完治まであと2か月と10日くらいある。
 細かいことだが、親指が使えず困っていること。シャツのボタンがはめられない。小袋入りの飴を破れない。
 

樋口 正博 (ひぐち・まさひろ)
1952年、長野県生まれ。
釣り専門誌の編集長を経てEditor&Writer。へら師にしてフライフィッシャーマン。そしてパラ愛好家。庭、釣り、農、酒を通して社会を見つめている。通称「タコの介」。Twitterのアカウント@takonosuke7
 
 
 


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