【趣の庭】釣り三昧
2010.9.20

釣り三昧 Vol.62
Joy of Fishing


「みの幸寿司」
にぎにぎしく開店!


樋口 正博

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斉藤ボーズが釣ったサワラ。上品な脂が乗ってうまい

■嵐山御大がヘンなことを思いついた

 最近、嵐山光三郎は釣りのときにヘンなことをやりだした。というようなことは以前にも書いた。つまり、沖で魚を釣って、その魚を船上でさばいて、さらににぎり寿司にして食ってしまおうというヘンなことである。
 言ってしまえば簡単だが、これはものすごく面倒くさいことで、事実、それを知った船長は「また、物好きだね」と呆れかえっている。
 寿司をにぎるのは本職の料理人のミノコウ。三野浩一というのだが、嵐山はミノコウと名付けた。で、「大将、いいところをにぎってくんな」「あいよ」といったような鉄板の会話の後はじまる寿司店の名前は「みの幸寿司」というりっぱな店名ももらっている。

■今回の寿司ネタは剣崎沖のワラサ

 「みの幸寿司」の第3弾は8月30日、三浦半島・剣崎沖のワラサとなった。今回の船宿は剣崎間口港の「一郎丸」。宿泊も「一郎丸」。この船宿は、嵐山と2年前の9月にワラサ釣りに来た船宿である。参加者は嵐山・タコの介・ミノコウ。それに「つり丸」編集部員のワルコンと斉藤ボーズの5人である。
 タコの介と嵐山は前泊。「一郎丸」の夕食は旨い。甘辛く煮たキンメの煮付け。マダイとマグロの刺身。サザエの煮付け。ほかに天ぷら、カボチャの煮付け。心のこもった漁師料理だ。
 われわれは古い表彰状などが並ぶ歴史ある部屋でビールで乾杯した。隣りの食堂では、家族3世代がにぎやかに夕食を食べている。なんだか田舎の親戚のうちに遊びに来た感覚だ。

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ミノコウが釣ったワラサを釣らなかった嵐山が持った

■ワラサのほか、イシダイ、サワラ、イサキと高級寿司ネタ続出

 翌日、午前5時に間口港に集結した。みんな集まっている。船長は鈴木俊哉、助手は息子の元貴君。5時半に出港である。配置はミヨシ右に嵐山、ミヨシ左にミノコウ、胴の間に元貴君。トモの右にワルコン、左に斉藤ボーズ。タコの介は嵐山のサポートである。
 出船15分でポイントの松輪瀬に到着。今日も暑い夏の日射しが照りつけている。ポイントには船団ができていた。ひとり10本などと絶好調だった今季だが、ここにきて釣果にムラがある。目標はひとり2本。
 鈴木船長から投入の合図が出た。「水深は30m。ビシが着底したらコマセを振りながら10m上げて待ってください」底からのタナ取りである。タナは20mとかなり浅い。
 ワラサは早朝の釣り始めが勝負。このゴールデンタイムをいかにモノにするかで勝負が決まる。
 ということで、全員が真剣に釣りを始めた。コマセをたくさんまいてワラサを寄せることに専念する。だが、なかなか掛からない。と、ミヨシ左のミノコウがなにやら大物と格闘している。タモにおさまったのは2キロクラスの良型のイシダイ。シマシマが消えて半身が黒くなっている。「これで、寿司ネタが増えました」とミノコウはさすがに料理人の感想をもらした。
 つづいて、左トモの斉藤ボーズが本命のワラサをあげた。それに続いたのがミノコウ。こうして、左舷有利な展開が続き、嵐山、元貴君、ワルコンは完全に乗り遅れてしまった。周囲を見ると、ポツポツながら釣れている。まだチャンスはある。
 1時間半経過の7時過ぎ。ミノコウはすでに3本のワラサ。斉藤ボーズはなんと良型のサワラを釣った。それを見て大喜びしたのはミノコウ「斉藤さん、ありがとう。これで美味しいサワラの寿司ができる!」。
 ちなみにサワラとワラサはまったく違う魚である。サワラは歯が鋭くて体形は細長い。バラクーダ(オニカマス)と似ているが、サワラはサバ科でワラサとは違う魚である。ああややこしい。
 サワラは鰆と表記される。春が旬の旨い魚で関西では西京漬けなどで人気がある。もちろん、刺身も脂が乗って旨い。

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ミノコウが釣ったイシダイを釣らなかった嵐山が持った


■たくさん釣れたので早揚がりだッ

 朝一が勝負というのは、その通りの展開となった。右舷側が相変わらず苦戦中。ワルコンは1回掛けたがバラしてしまった。ハリスがプッツリと切れている。それを見た鈴木船長は「あっ、サワラにやられたね」と言った。鋭い歯でハリスがかみ切られたようだ。
 ずっと真剣に釣っていた元貴君にもようやくワラサがやってきた。自分で抜き上げて会心の笑顔。そして、タコの介たちのところに来て「これ持っていって下さい」「ありがとうよ」と嵐山。いい青年だ。
 ということで、時間は3時間を超えて9時になった。船中はまったりモードが広がっている。日射しが強烈だ。嵐山は腹を出して昼寝タイム。気持ちよさそうである。ここまでの釣果は斉藤ぼーずがワラサ4にサワラ1。ミノコウがワラサ3にイシダイ1。ワルコンと元貴君がワラサ1。嵐山・タコの介組はイサキ1。
 ここでタコの介は決断した。このままやっていても釣れる確率は少ない。「船長、沖揚がりにして下さい」「えっ! もう揚がるの」とびっくりしていたが、正味時間3時間半の釣りとなって沖揚がりである。9時すぎには港に到着。これから「みの幸寿司」の開店である。

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「みの幸寿司」特製のにぎり寿司ラインナップ

■「みの幸寿司」に行きたがる希望者が殺到中!

 今回は「一郎丸」の台所を借りることができるので、ミノコウは仕事がやりやすい。船上で釣りの合間にワラサをさばいてサクにしている。さすがに仕事が早い。イシダイ、サワラ、イサキをさばいていく。タコの介はその間に買っておいた「ごはんパック」を電子レンジでチンして熱々にしていく。
 若おかみに寿司飯をつくる飯台も借りることができた。ご飯を飯台に入れて、ミノコウが持参してきた特製の寿司酢を振りかけてまぜていく。
 これで仕度がそろった。「タコの介さん、次回から助手をつけてください。仕込み作業をひとりでやるのは限界です。お願いします」とミノコウ、少し泣きが入っている。
 ミノコウはストレッチ運動をしていて、腰を痛めていた。船上での動きもそれで機敏ではなかったのだ。
 午前11時過ぎ。いよいよ「みの幸寿司」の開店である。「一郎丸」の庭先で店がはじまった。「大将、まずサワラをにぎって」と斉藤ボーズからオーダーが入る。「はいよ。今日のサワラは脂のりのりだよ」とミノコウの調子が出てきた。「おれは数少ないイサキだ」と嵐山。次々と注文が入り、ミノコウは忙しくなった。
 そんなときである。鈴木船長がやってきた。「さっき獲れたサバのいいのがあるけど、いる?」いります、いります。なんといっても松輪サバである。
 ミノコウはさっそくさばいて、松輪サバのにぎりを作った。食べたわれわれ。「うまい。われわれが釣らなかったサバが一番うまいかも」とコンちゃん。
 寿司飯はコンビニの「ごはんパック」。わさびはねりわさび。だが、ネタだけは絶対どこにも負けない。そんな「みの幸寿司」だが、噂を聞いて「ぜひ、『みの幸寿司』を食いたい」という希望者が関係者を中心に殺到している。だが、タコの介と嵐山は人選を厳格にしているのだ。ミノコウにも肉体的限度があるからだ。

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仕込みも完了。いよいよ「みの幸寿司」の開店である

樋口 正博 (ひぐち・まさひろ)
1952年、長野県生まれ。
沖釣り専門誌「つり丸」編集長。最近は釣りよりも魚料理に興味が傾いてしまった。毎月一回、嵐山光三郎さんと連載「釣って開いて」の取材に出かけるのが、おもな釣り取材となっている。通称「タコの介」(嵐山光三郎命名)。
 
 
 


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