【趣の庭】釣り三昧
2010.6.28

釣り三昧 Vol.57
Joy of Fishing



梅雨の晴れ間、
タコの介の笑い声が釣り場に響き渡った


樋口 正博

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アジサイの花に囲まれたヘラブナ管理釣り場「清遊湖」

■タコの介は「うみへら会」の会長なのだ

 いつの間にか自然発生してしまったヘラブナ釣りの例会。その名も「うみへら会」という。淡水の釣りであるヘラブナの例会になんで「うみ」が入っているのか。
 じつはそこには深い理由があった。
 主要なメンバーを紹介しよう。会長のタコの介は沖釣り雑誌「つり丸」の編集長。そして副会長は「つり丸」のライバル誌である「つり情報」の編集長、沖籐武彦、さらに幹事長はヘラ専門誌「へら専科」の発行人、熊谷貴幸、そしてヘラ名手の田口力也、さらに「つり丸」でイラストを描いている岩永修一。
 つまり、会長、副会長ともに沖釣り専門誌の編集長ということになる。沖籐はかつては「へら専科」の編集部員であった。タコの介もへら雑誌に寄稿していたので立派なへら師。そういうことで沖釣り関係者がヘラの例会を作ったので「うみへら会」となったのだ。

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手製のタモにちんまり収まった岩永のヘラ

■年四回開催のかなりゆるい会である

 釣りというのは夜明けからスタートするのが普通なのだが、「うみへら会」のスタートは午前8時。また、例会は最低でも月一回は開催されるのだが、「うみへら会」は季刊。つまり3か月に1回。例会の順位もテーマも決めてない。かなりゆるい会である。先日、千葉の「清遊湖」という管理釣り場で「うみへら会」の例会があった。
 だが、ひとつだけ緊張感みなぎる瞬間がある。それは「3枚早掛け競争」が始まるときである。これは熊谷が大好きな競技で、よーいどんで一番早く3枚を釣った人が勝ちというゲームである。
 この競技には賞品がある。メンバーはそれぞれに賞品を用意していて、トップから順にプレゼントされるのだ。そして、最下位のメンバーは全員に缶ビールを自腹で配らなければならない。
 「じゃー、始め!」
 熊谷が不意打ちをするように競技のスタートを宣言した。
 メンバーはそれぞれに釣り方が違っている。今回は毎年釣具メーカーのシマノが開催している全国的なヘラブナ釣り大会「ジャパンカップ」に2回も優勝経験をもつ今成雄二も奥さんとふたりでゲスト参加している。
 なんとも、会長、副会長、幹事長という会の三役がかすんでしまう実力者が毎回ゲストで登場するのだ。
 タコの介は9尺の竿でタナ1メートルの両ダンゴの釣り。今成も同じ釣りをしている。熊谷は竿もタナもタコの介と同じだが、エサがダンゴではなく食わせにトロロを使っている。岩永も同じ。沖籐は短竿での底釣りだ。
 競技が始まると、あっという間に3枚を釣ったのがタコの介だった。それに今成が続いた。さらには熊谷、今成奥さん、沖籐、岩永の順である。
 岩永は数回しかヘラブナ釣りの体験がない初心者だから最下位はしかたがない。ほかの人たちは数十年のヘラ歴がある。

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熱戦を繰り広げる沖籐(奥)と熊谷(手前)

■何回やっても同じ。タコの介の勝ち

 「会長はすごいよな。いままで一回も負けてないものな」
 「会長のためにある会みたいだな」
 これは沖籐、熊谷のゲーム後の犬の遠吠えである。
 タコの介としては、こういう競技の釣りは好きではないのだ。なるべくならゆるく一日竿を振っていたい。
 「じゃ、もう一回やります。始め!」
 熊谷が不意打ちのように競技再開を宣言した。
 「おいおい、マジかよ」
 タコの介はうんざり気味にエサ打ちを始める。ほかのメンツはみんな目が血走っていて本気だ。
 勝負は7分後についた。タコの介がダントツの優勝である。
 「……!」
 「外さない人だ」
 「これ以上深手は負いたくないよ」
 それぞれがあきれ顔である。
 断っておくが、タコの介は決してヘラブナ釣りがうまいわけではない。エサだって今成に教えてもらって作ったし、竿の選択、ハリスの長さもみんな今成に教えてもらった。
 「いや、実力じゃなくて、タイミング」
 タコの介はそう謙遜した。
 「実力じゃないのはいいけど、なんで満面笑みなんですか?」
 沖籐が言った。
 「……。わっははははははははは」
 沖籐からのワインを手にしたタコの介の笑い声が「清遊湖」の湖面に響き渡っていったのだ。

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沖籐からワインをプレゼントされるタコの介

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沖籐、会心の笑顔である。この場面は少なかったが…

樋口 正博 (ひぐち・まさひろ)
1952年、長野県生まれ。
沖釣り専門誌「つり丸」編集長。最近は釣りよりも魚料理に興味が傾いてしまった。毎月一回、嵐山光三郎さんと連載「釣って開いて」の取材に出かけるのが、おもな釣り取材となっている。通称「タコの介」(嵐山光三郎命名)。
 
 
 


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