【趣の庭】釣り三昧
2010.6.14

釣り三昧 Vol.56
Joy of Fishing



「つり丸」は
鮮魚市場と化している


樋口 正博

写真
イカが巧みな包丁さばきでヒラメをさばきだした。

■「ヒラメ釣れたから届けるよ!」

 「樋口さん、いまヒラメ釣れたよ。結構いい型だよ。自宅に送るからね」
 「あっ、自宅じゃなくて編集部に送って。ありがとう」
 夜11時過ぎ、新潟・上越の「さとみ丸」の篠原船長からケータイが入った。夜のヒラメ釣りに出船していて、いま型のいいヒラメか釣れたのだという。
 新潟の夜ヒラメ釣りは、夕方から出船して、深夜までの便と朝までの便がある。エサは生きたアジをあらかじめ用意していく。
 翌々日。「つり丸」編集部に白い発泡スチロールの宅配便が届いた。開けると、氷に埋まったヒラメがでできた。50センチオーバーの2キロクラスのヒラメだ。刺身で食べるにはいちばん美味しいサイズである。
 さてと。これをどうするか。みんなに分けて配りたいけど、まずはさばかなくてはならない。
 「イカ、お前ヒラメさばけるか?」
 イカは呼び名。イカ釣りが好きなのでタコの介はイカと呼んでいる。本名は恩田悟という立派な名前がある。
 「できますよ。自分流だけどいいですか?」
 「よーし、さばいてくれ」
 ということで、イカがライトテーブルの上に新聞紙を敷き詰め、その上にまな板を乗せてさばきだした。惜しむらくは編集部に立派な出刃包丁がないことだ。安物の包丁セットのなかで切れる包丁を選んでイカがヒラメをさばきだした。

■イカが丁寧にヒラメをさばきだした

 まずは包丁の刃で表面のウロコをこそげ取る。そして、胸ビレの脇に包丁を入れて頭を切り取る。つぎに尻尾の付け根に包丁を一筋入れておく。
 ここまでが前処理。
 それからイカは、おもむろに中央に包丁をスーッと入れていった。さらに縁のヒレに沿って包丁を入れていって1枚のサクを作った。反対側も同じく包丁を入れて2枚目のサク。裏返して2枚のサク。全部で4枚のサクができた。これを5枚おろしという。ヒラメなどの平たい魚のおろし方である。
 「つり丸」でヒラメをさばいている。というウワサを聞いて、続々と社員が見学に集まってきた。
 「たくさん来ても、みんなに分けられないよ」
 と、タコの介はあらかじめ宣言した。
 「すごい。初めて見た」
 「身の白さがきれいだな」
 「エンガワはどれ?」
 そのとき、イカが手を止めて説明した。
 「この縁のヒレと身のあいだにあるヒモ状のものがエンガワです。いったんヒレを切り離してからエンガワを取り出します」
 と、外科医のように冷静に説明しはじめた。こうしてできあがった4枚のサク、そして中落ち、頭はそれぞれにパッキングされた。

写真
身を5枚におろしていく

■ムギイカ、アジも入荷した

 サクの行き先はすぐに決まった。「つり丸」編集部によく顔を出す恵子ちゃん。そして魚が大好きな取締役のサクラギ。編集部の新人のウチダ。さらにタコの介が行きつけの居酒屋「弥助」に持って行く。中落ちももらった。
 初夏となって沖釣りではいろんな魚が釣れはじめている。その後の鮮魚の入荷情報は次の通り。
 ワルコンが茨城・日立沖の夜釣りでムギイカ(スルメイカのチビ。やわらかくて美味しい)を大漁に持ってきた。これは社員10数名に数杯ずつ頒布された。
 タコの介が持ち込んだのは、新潟・上越の良型マアジ。これも、数人に数匹ずつ引き取られて行った。
 まさに「つり丸」は鮮魚市場と化している。それでも嬉しそうに持ち帰る人たちの顔を見ていると、タコの介も嬉しくなってしまうのだ。
 今度はいま爆乗りしているスルメイカが入荷するかもしれない。

【バラコレクション】

写真
コロンと小さく咲くアンジェラ

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郷里の庭で咲き始めたデンティベス

樋口 正博 (ひぐち・まさひろ)
1952年、長野県生まれ。
沖釣り専門誌「つり丸」編集長。最近は釣りよりも魚料理に興味が傾いてしまった。毎月一回、嵐山光三郎さんと連載「釣って開いて」の取材に出かけるのが、おもな釣り取材となっている。通称「タコの介」(嵐山光三郎命名)。
 
 
 


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