【趣の庭】釣り三昧
2010.5.17

釣り三昧 Vol.54
Joy of Fishing



オヤジたちの楽園


樋口 正博

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釣りよりも旨い肴とビールが飲みたいばっかりに集まった面々

■オヤジ7人が集結した
なにをやるんだ?

 嵐山復活戦の第2回目。南房・白浜沖のイサキ釣り。今回は大人数である。参加者は7人。嵐山・南伸坊・末井昭・櫻木徹郎・松岡釣りキチ(光文社)・ダンゴロー(光文社)・タコの介
 このメンツは釣りも大好きだが、前泊の宴会も楽しみにしているので、タコの介は宿泊先を今回の船宿である「恭丸」の船長に紹介してもらった。その民宿は「恭丸」の港である白浜川下港のすぐ前にある「勝丸」となった。
 イサキは釣れたり釣れなかったりと、安定していなかったが、「恭丸」の宮坊健二船長によると「大丈夫でしょう」ということだった。イサキはいまが旬で、南房のイサキは大型が釣れることで知られている。
 タコの介と嵐山組。松岡・ダンゴロー組。そして電車組の伸坊、末井、櫻木と、それぞれがそれぞれの方法で白浜に集結した。

■釣果とオンナの乳との
密接な関係を考察する

  まずは、ビール、ビール。そして宴会へと突入していく。「勝丸」は息子が東京の寿司の修業をしてきたというのが大おかみの自慢で、寿司も大桶で特注した。もちろん、舟盛りも。カンパチ、サザエ、ウニ、アワビ、ヒラマサ、バカ貝などが大盛りになって出てきた。
 相変わらずのオヤジたちのバカ話が続く。
「いま気がついたけど、釣りとオンナの乳とは密接な関係があるな」
 と嵐山。
「どういうこと?」
 伸坊さんが聞く。
 そこで嵐山が説明をする。釣りでは釣果をいろんな言葉でいう。爆釣・貧果・豊漁・微漁・巨漁。これは乳と関係がある。つまり、爆乳・貧乳・豊乳・微乳・巨乳。嵐山、どうだといわんばかりだ。なんだか分からないがみんな、うんうんと納得している。
 そんなバカ話をして、早々に床に就いた。

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始まりました。前夜の大宴会です

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刺身の盛り合わせ。ウマイッ!

■みんなイサキ釣りを知らない

 翌朝、5時前には港に集結した。優しい船長が迎えてくれる。じつは、イサキ釣りは嵐山・タコの介以外はみんな初めてである。というか、ほとんどが釣り初心者。わずかに松岡だけは釣り好きで奥さんとよく釣りに行っているという。そして案の定、奥さんの方がいつも釣ってしまう。
 出船前に、宮坊船長にイサキの釣り方をレクチャーしてもらった。「なんだ、イサキ釣り初めてなの?」と船長はびっくりしている。「ぼくがマイクでタナを言うからね。たとえば、タナ20m。そしたら、ビシを3mプラスの23mまで落として、仕掛けがなじんだら、シャクリながら止めてを20mまで繰り返して当たりを待つ。この繰り返しです。簡単でしょう」
 テンビン付きの60号のビシにアミコマセを詰めて、仕掛けは3本バリ。付けエサは小さなオキアミかバイオワームのイカ短をハリにチョン掛け。
 5時の出船。港を出ると大波が襲う。天気は快晴だが、風とウネリが強い。ちょっと不安になってくる。港を出るときが大揺れになる。
 ポイントは航程10分ほどの真沖。陸地は美しい南房の景色が広がる。白浜灯台がすぐ近くに見える。南房といっても外海で、このところの強風の影響で天気はいいのにウネリが山となって襲ってくる。

■海は大うねり。
船酔い者続出!

  船長から釣り開始の指示がでた。水深はだいたい20m前後である。小さな「恭丸」に分散して釣り座を決めた。通路がほとんどないので、釣り座が決まってしまうと、あまり交流ができない。
 タコの介はミヨシで伸坊さんのサポート。左右の胴の間には嵐山さん、末井さんが陣取って、トモは櫻木とダンゴローである。右舷ミヨシには松岡が入った。
 潮が速い。左舷から右舷へと流れていく。伸坊さんの仕掛けが船下に入っていってシャクリずらい。風があるので3本バリの仕掛けを絡ませる人たちが続出した。投入に失敗する人たちが多い。しばらくは釣りにならない。絡んだ仕掛けをほどいていると、船酔い者続出。
 タコの介、ダンゴロー、末井がダウン。松岡も気持ち悪そう。元気なのは嵐山さんと伸坊さんくらいか。
 船長はポイントを変えながらタナを指示していく。イサキがポツポツと釣れるほか、ウマヅラハギが多数釣れた。オキメバル、ベラ多数、アジ、マイワシとまるで五目釣りになってきた。本命のイサキが釣れてもウリボウ(小型)ばかりである。

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伸坊さんは絶好調! 良型のイサキを釣りました

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末井さんはウマヅラハギを連発

■「船長、近くに鮮魚店ない?」

   船長が嘆いた。「反応は真っ赤っかなのになー。食わないよ。このところ、巻き網船がやってきたからだろうね。脅えて食わないんだよ」
 とマイクでボヤキが始まった。そうかもしれないし、水温、潮の加減かもしれない。釣れないのは確実の日になってしまった。
 船酔いしながらの釣りだったが、みんな頑張った。イサキ数匹。ウマヅラハギ10枚以上。ベラ多数。メバル、アジ、マイワシ少々という上品な釣果になった。これを貧果ともいう。
 沖揚がりは正午。船長は港に船を戻すと、籠を持ってきた。これお土産にしてと、フタを空けると大きなサザエがびっしり入っている。漁で獲ってきたいう。「こんな貧果だと分かってたら、もっと獲っておいたのにね」とすまなそうだ。そんなことはないよ。船長、楽しい釣りだったよ。船酔い以外はね。
 そんなわけで、陽気な船長を囲んでしばらく歓談したあと白浜川下港を後にした。
 帰る前にタコの介は船長に聞いた「ところで船長、この近くにとびきり新鮮な魚を売っている店ない?」「なに、それ。イヤミ?」「そうじゃなくて、嵐山さんはそんな店を見るのが好きなんですよ」

■釣りの反省会が
食い過ぎの反省会になった

  さて、昼食にしようと店を考えた。そうだ「ばんや」に行こう。ここは鋸南町保田漁協直営の食事処で、いま爆発的な人気になっている。東京湾の新鮮な魚をいろんな料理で楽しめる。しかも旨い、安い、ボリューム満点ということはない。
 以前はそうでもなかったが、最近は収容人数を増やして数百人が入れるのに、入口には行列ができている。
 日曜日だったので、われわれも30分近く待たされた。案内された席は海の家のような離れだった。一番人気は「朝獲れにぎり寿司」850円。9カンでこの日に獲れた魚である。ちなみに、ワラサ、キンメダイ、ヒラマサ、マルイカ、マグロに味噌汁付き。これだけでお腹いっぱいになる。
 それなのに、食い意地の張ったオジサンたちは追加注文する。イカのフライ、イカのかき揚げ丼、アスパラの天ぷらなどを2皿ずつ注文しはじめた。
 そこでタコの介はストップをかけた。絶対に食えない量だからだ。案の定、イカのかき揚げ丼はひとりでは食えずに、ほかの人に押しつけられたりした。寿司も余っている。
「もう、食えない。1か月は油ものは食えない」とギブアップしたのは松岡。イカのかき揚げ丼はそれほど凶悪な量だったのだ。
 胸焼けするだろうな。「ばんや」での反省会は、釣りではなく、食い物の反省会になってしまった。
 帰りの車のなかで嵐山さんがポツリと言った。
「タイトルを『釣りする旅人』に変えたとたんに、絶不調になったな。タイトル変えようか」
 いいんです。たくさん釣れなくても。このタイトルはタコの介は気に入ってますから。

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嵐山さんが無謀にも挑戦した「ばんや」の「イカのかき揚げ丼」。
凶暴なかき揚げで掘ってもほっても出てくる

樋口 正博 (ひぐち・まさひろ)
1952年、長野県生まれ。
沖釣り専門誌「つり丸」編集長。最近は釣りよりも魚料理に興味が傾いてしまった。毎月一回、嵐山光三郎さんと連載「釣って開いて」の取材に出かけるのが、おもな釣り取材となっている。通称「タコの介」(嵐山光三郎命名)。
 
 
 


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