【趣の庭】釣り三昧
2010.3.29

釣り三昧 Vol.52
Joy of Fishing



10年以上ぶりに会った釣り仲間


樋口 正博

写真
懐かしい「たんぼり」さんとの一夜でした(右)

■タコの介には
たんぼりさんという釣り仲間がいる

 タコの介はネットの世界は20年以上も前からやっているので、全国各地に懐かしい仲間がいる。「たんぼり」というハンドルネームを持つある釣り師に、最後に会ったのは10年以上も前のことである。
「たんぼり」というのは谷掘りという意味で、鳥取県東部千代川水系では岩魚のことを言う。千代川をふるさとに持ち、渓流釣りが大好きだった彼はハンドルネームを「たんぼり」とした。
 最初に会ったのはたぶん15年以上にもなる。広島に家を持った彼は、仕事の関係で各地を単身赴任してきた。四国の徳島にいたときに、タコの介は仕事で訪れる機会があり、たんぼりさんと痛飲した。
 そして、広島県福山市の自宅近くにへらブリ釣りのいい野池があると聞いて、タコの介は関東、関西の仲間を集ってその野池に遠征した。
 そんなことがあって、しばらくはたんぼりさんと会う機会がなかった。その間、タコの介の釣りはヘラブナ釣りから沖釣りになっていた。「つり丸」の編集者になったからだった。

■上京するから会おうよ

 そのたんぼりさんとネットでふたたび連絡を取り合うようになったきっかけは、ソーシャル・ネットワーキングサービスのmixiで再会したときからだった。日常報告などをやり取りした。 昔のネット世界に戻ったような懐かしさだ。
 その彼が「今度仕事で東京に行きます」と連絡してきた。タコの介はすかさず「じゃ、新宿で会いましょう」と返事をした。
 そうして、たんぼりさんとは10年以上の時を隔てて再開したのだ。
 待ち合わせ場所はJR新宿駅東口。いまは携帯があるので、行き違いになることはなくなったが、ともかく顔を覚えているか不安だった。
それでも、2回ほど携帯でやりとりして会うことができた。
「ジョーさん久しぶり」
 ああ、この笑顔だよ。この顔だよ。タコの介はすぐにたんぼりさんのことを思い出した。ジョーというのはタコの介の当時のハンドルネームである。ネット仲間ではハンドルネームでリアルな世界でも呼び合うのだ。

■沖縄居酒屋で
10数年の時間を縮めた

 タコの介はたんぼりさんを新宿三丁目の行きつけの沖縄居酒屋「海森」に案内した。「海森」は椎名さんの「わしらは怪しい雑魚釣り隊」のメンバーのひとりナカモトがオーナーの店である。
 あいにくナカモトは那覇の国際通りに「海森三号店」をオープンするために沖縄にいていなかった。
 たんぼりさんはカウンターに並ぶと、バッグからおみやげを渡してくれた。パンチェッタと地元産のお米。大阪に単身赴任している彼は、いま弁当男子で食事の一切を自炊しているという。
 というか、自分料理に凝っていてパンチェッタも自家製である。お米は一番気に入っているものだという。あっ、ちなみにたんぼりさんは50歳半ばのおじさん。
 いろいろ飲んで話していると、仕事のことも分かってきた。営業マンですでに管理職。若い部下たちとの難しい問題もあるようだ。
「で、釣りしてるの?」
 とタコの介は聞いた。
「渓流もヘラもしばらくやってない。ただ、波止の釣りはたまにやるよ。イワシ、アジ、サヨリなんか釣れると嬉しくてね。いま一番凝っているパスタに使うんだ。うまいんだよ」
 と、話が尽きない。
 そうして、たんぼりさんは最終新幹線で大阪に帰っていった。なんか、時間の不思議さを感じた瞬間だった。タコの介はあのたんぼりさんと本当に3時間飲んで語ったのか。いまとなっては幻のようだ。
 彼とまた会うのは何年間か後だろう。でも、タコの介はそういう仲間がいることに密かに誇りをもっているのである。

樋口 正博 (ひぐち・まさひろ)
1952年、長野県生まれ。
沖釣り専門誌「つり丸」編集長。最近は釣りよりも魚料理に興味が傾いてしまった。毎月一回、嵐山光三郎さんと連載「釣って開いて」の取材に出かけるのが、おもな釣り取材となっている。通称「タコの介」(嵐山光三郎命名)。
 
 
 


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