【趣の庭】釣り三昧
2009.10.5      

釣り三昧 Vol.44
Joy of Fishing


幻の魚カンナギの鍋を囲みながら
マダイのシャクリ釣り談議に花が咲く


樋口 正博

盛川宏の一周忌に
釣り好きの面々が集結した

「つり丸」の前編集長、盛川宏は昨年9月9日に永眠した。74歳だった。

 数々の伝説を残した傑物だった。

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盛川宏を偲んで多くの仲間が集まった

「つり丸」では盛川の長男、徹が釣行レポートや料理ページの解説を担当している。親父の血を継いで、釣りの趣味も似ていれば、文章までもがそっくりである。

 その徹から連絡が入った。

「タコの介さん、親父が死んで1年がたちました。一周忌といった堅苦しいものではないけど、親父と親しかった人たちに集まってもらって飲み会をします。ぜひ、出席してください。場所はいつもの『さしろ』です」

「さしろ」というのは、この欄でも紹介している品川の料理屋である。徹が担当している「庖丁人腕を魅せる 絶品釣魚料理」で、毎回腕を振るってくれるおやじ、河原井毅夫さんの店だ。

 河原井さんは築地に通って生きのいい魚を仕入れている。めったに食べられない魚を仕入れて腕を振るうので、おやじがつくる料理はみんな楽しみにしているのだ。

「さぁ、この魚はなんだ」
と、徹がエラそうにわめいた

 仕事を早めに切りあげて、タコの介は「つり丸」のコバとコンちゃんの3人で出かけた。7時に到着すると、座敷には多くの人が詰めかけていた。半分以上は知り合いである。釣り人が多い。

 徹が挨拶した。

「親父はわいわい陽気に飲んで食べて騒ぐのが大好きでした。今回はそんな親しかった人たちに集まってもらいました。存分に楽しんでください」

 タコの介は一番奥の席に座らさせれた。そこにはささやかな祭壇のようなものがあって、遺影が笑っていた。なんか、じっと見られているようで酒が飲みにくい、なんてことはない。

「盛川さん。お久しぶりです。今回も楽しく飲みましょう」

 とタコの介は杯を掲げて会釈をしたのだ。

「さて、今回も珍しい魚の鍋をやります。当ててください。ちなみにモロコ(クエ)ではありません。念のため」

 大皿に盛られた魚の切り身。見ただけでだいたい分かった。モロコ系の大型魚だ。腹身の皮は白く、白身の身は脂がたっぷり。

 タコの介はコバとコンちゃんとああだ、こうだと魚名を見つけた。築地でも珍しいというこの魚は?

もう、カンナギしかないだろう

 結局、モロコではないとしたら、一番可能性の高いのはマハタの大型魚。ハタの老成魚はカンナギと呼ばれている。体長は1メートル50センチにもなり、体重は100キロを超える。もうこれしかないだろう。

「えーい、この魚はカンナギだぁー! 参ったか」

 とタコの介は高らかに宣言した。

 すると、それまで陽気に飲んでいた徹が、ガックシとうなだれてしまった。ずばり的中したのだった。

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カンナギの身は脂が乗ってむっちりとしていた

「カンナギにしてはちょっと小さかったけど、マハタよりは大きい。だから小カンナギ。鍋にして絶品。」

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「さしろ」の親父がカンナギのアラの塩焼きを取り分けている

マダイのシャクリ釣り
いま気になっている釣法だ

 ところが、酒を飲んだくれていて、食べたのは一切れ。味もよく分からんかった。となりの「半田丸」(著名な釣具店)の伴さんと、シャクリマダイの話に夢中になっていたのだ。シャクリマダイというのは、生きたエビをエサにして、コマセなどはまかずに勝負する伝統的なマダイ釣法だ。

「半田丸」の伴さんは、はこのシャクリ釣りの大家で、釣り方などをいろいろと聞いたのだ。タコの介はこの釣りを1回しかやったことがない。

 通常、道糸はリールに巻くのが普通だが、内房の竹岡などでは手バネ竿を使う。手バネ竿というのは、竿の手元に2本の金具が付いていて、これに道糸を巻いていく。つまりリールなどは使わない。

 マダイが掛かったら、手バネ竿を後ろに放り投げて、道糸を両手で手繰ってマダイを取り込むのだ。だから手バネ竿は軽い。長さは1メートルちょっと。リールもないので放り投げても大丈夫だ。

 この釣りは次回のこの欄で紹介しよう。じつは先日、嵐山光三郎御大、イラストの南伸坊、「白夜書房」の重役スエイの3人で竹岡の「鏡屋」でこの釣りを満喫してきたのだ。やー、釣れた、釣れた。

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カンナギの鍋がはじまった

樋口 正博 (ひぐち・まさひろ)
1952年、長野県生まれ。
沖釣り専門誌「つり丸」編集長。最近は釣りよりも魚料理に興味が傾いてしまった。毎月一回、嵐山光三郎さんと連載「釣って開いて」の取材に出かけるのが、おもな釣り取材となっている。通称「タコの介」(嵐山光三郎命名)。
 
 
 


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