【趣の庭】釣り三昧
2009.8.17      

釣り三昧 Vol.42
Joy of Fishing


不良中年3人組プラス1の
サバダ、サバダ、松輪サバだッ!


樋口 正博

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嵐山御大も伸坊も大満足の釣果です

■松輪サバを知ってるかい?
 神奈川県・三浦半島の先端、松輪瀬。ここは東京湾の湾口にあたり、潮が複雑に流れている。

 ということは、コンディションのいい魚がたくさん釣れるポイントが無数にあるということである。マダイ、ワラサ、イナダ、イサキ、アジ、カサゴにメバル。

 そして、なんといってもここの名物はサバである。「松輪サバ」というブランド名を持つ。ある意味、関サバに匹敵するとも言われる。

 夏場のサバはゴマサバが主流になる。そして夏が過ぎるころからマサバが釣れはじめるのだ。そんな7月の下旬、「マサバが釣れはじめたよ!」と、松輪間口港の船宿のおかみから連絡が入った。

「よーし! 松輪サバを釣ろうじゃないか」
 と、嵐山光三郎御大を先頭に、不良中年3人組プラス1がいきり立った。こういう相談は即決である。

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霧にかすむ船団

■集結した中年不良組とツヨシ
 不良中年組は嵐山御大、イラストの南伸坊(伸坊)、そして「つり丸」の発行人の櫻木徹郎(サクラギ)。それに不良中年ではなく、善良青年の鈴木毅(ツヨシ)が加わった。ツヨシは「週刊朝日」の敏腕記者である。

 サポート隊としてタコの介、「つり丸」編集者の近藤加津哉(コンちゃん)の強力タッグが付き添った。仕立てた船は松輪間口港の「利一丸」。

 いうまでもないが、松輪サバは絶品である。しかも釣りでのサバはそうはない。松輪の漁師たちもここのサバは大事に釣って、大事に氷で締めて市場に出す。トロ箱に貼られた「松輪サバ」というシールがその価値を自尊心を主張する。

 これから秋口にかけて釣れるマサバは丸々と太って、脂がノリノリ。大きさも50センチに迫る弾丸ボディだ。これが突進したら、ちょっとやそっとでは止められない。

■ビシアジ釣りってどんな釣り?
 いつものように、3人プラス1は前日に松輪間口港の民宿「やまか荘」に集結した。宿のおばちゃんの温かい歓待を受けて、ビールで前祝い。つまり、宴会である。
「タコの介、松輪サバを釣るときの注意点はあるか」

 すでに赤い顔をして、嵐山御大が悪代官のように問うた。
「掛かったらモタモタしないことです。とにかく力一杯リールを巻いて、イチモクサンに取り込んでください。モタモタしていると、サバが大暴れして隣りとオマツリになります」

 オマツリというのは、仕掛けがほかの釣り人の仕掛けに絡まるトラブルのこと。御大は「ふんふん」と聞いていた。そして言った。
「タコの介、そんなことは分かってる。何年沖釣りをしてきたと思ってるんだ」
「へい、恐れ入りやした」
 平伏するタコの介。胸を反らす悪代官。
「つまり、ビシアジ釣りの要領です」
 と、コンちゃんが助け船を出す。

 すると、天上を見ていた悪代官の顔が「……?」となった。ビシアジ釣りがどんな釣りだったか忘れているのである。

「だからぁ〜、ビシにコマセを詰めて、コマセを振りながらタナで待つという釣りですよ。アジの基本的な釣り方」
「そうね、そう。ビシアジ釣りだと思えばいいわけね」
「ホントに分かってるの?」
 と、タコの介は聞かない。

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サクラギは釣りマシーンとなって釣った。これはアジ

■霧のなかを「利一丸」は
 ぐんぐんと疾走した

 まもなく8月になるというのに、雨ばかりの毎日だった。ところが、当日は深い霧に包まれていたが、雨の心配はなさそうだ。毎度のことながら、天気に関しては嵐山御大はハレ男である。

 霧のなかを「利一丸」の氏原船長は船を進める。周囲は白濁してまったく見えない。すると、前方にかすかに船影が見えた。船長の弟が操船するもうひとつの「利一丸」である。船尾と船首をロープで結んだ。

 周囲には数隻の船団ができていた。霧のなかに見え隠れしている。
「まず、アジを釣ります。最初だけだから集中してください」

 と、氏原船長が釣り方をレクチャーしてくれる。中年不良組プラス1は、おとなしく船長のいうことを聞いている。

 釣りはじめるとすぐにクンクンとアジの魚信が伝わった。みんな大急ぎでリールを巻くと、30センチを超える良型のアジが銀鱗をきらめかせて上がってくる。
「よーし、お久しぶりねのアジ君!」
 嵐山御大が律儀にアジに挨拶をしている。

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明るく陽気なコンちゃんは良型のマサバをぐんぐん釣った

■アジアジ、サバサバ
 アジ釣りは30分で終わった。それでもみんなひとり数匹のアジを釣り上げていた。いよいよサバ釣りである。氏原船長はサバの仕掛けを配ってくれた。1本バリでハリのフトコロに赤いポンポンが付いている。

 水深は60メートル前後。サバのタナは底から10メートル上。つまり水深50メートル前後がサバが群れているタナだ。

 仕掛けを50メートルで止めてコマセをまくと、ガンガガガンと竿先が暴れ出した。うんせ、うんせとリールを巻くと、水面から50センチの松輪サバが突進してきた。
 サバは入れ食い状態。

 嵐山御大は、最初は真剣にやってたが、あまりにも釣れるので、横着釣法になった。竿をロッドキーパーに留めたまま、そのまま竿を振ってコマセを巻き、ガンガンときたらそのままリールを巻く。つまり、一度も竿を手で持たないのだ。

「タコの介、これでも釣れるぞ。楽しいぞ。もう、どうやってサバを食おうかと考えている」

■「アジもサバも
 みんな俺が料理するんだぁ!」

 伸坊はモクモクと釣って、モクモクとクーラーにサバを放りこんでいる。大型クーラーには大量の氷と水で水氷を作ってある。釣ったサバはこれに放りこんで氷で締めていく。刃物で締めない。これが漁師流の締め方。

 ツヨシはひとり大ドモに陣どって、サバではなくアジを狙っている。成城に両親の実家があり、「両親にアジとサバを食わせます。嬉しいです。楽しいです」とわめいている。

 サクラギは普段はムラっ気のある性格なのに、ただただ釣りマシーンと化してサバを釣り上げている。

 コンちゃんは手釣りでサバ。タコの介をそれをミヨシに寝転がって眺めている。太陽がときどき顔を出した。熱くなった。時計を見ると午前10時を過ぎた。

「もー、いいでしょう!」
 とタコの介が叫んだ。それを聞いて氏原船長が「では、上がっていきます。クーラーに入りきらないので」

 みんなは納得しての沖揚がりとなった。
「今日は締めサバ、サバの味噌煮、サバの塩焼き、サバの竜田揚げ、サバのなめろうにサンガ焼き。アジの塩焼き、アジの酢締め、アジのたたきだぁー! だれが作るんだ? おれがひとりで作るんだぁ! たいへんだぞぉー。タコの介、早く帰ろう、帰ろう」

 嵐山御大の叫び声が、霧のなかを疾走する「利一丸」からこだまのように聞こえていた。

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タコの介が実家から苗を持ってきて、
嵐山御大にやったヒマワリが背丈を超えた

樋口 正博 (ひぐち・まさひろ)
1952年、長野県生まれ。
沖釣り専門誌「つり丸」編集長。最近は釣りよりも魚料理に興味が傾いてしまった。毎月一回、嵐山光三郎さんと連載「釣って開いて」の取材に出かけるのが、おもな釣り取材となっている。通称「タコの介」(嵐山光三郎命名)。
 
 
 


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