【趣の庭】釣り三昧
2009.6.1      

Joy of Fishing

復活!
不良中年4人組
「もう、老後の楽しみは釣りしかないッ!」

樋口 正博

釣りは行く前から
盛りあがるのがいいのだ

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「酒井丸」に集結した中年不良4人組。中央は船長

 嵐山の釣りが本格的に復活した。一か月も前から頻繁に電話が入る。

「日程は決まったし、あとはスエイと伸坊、サクラギがどう出るかだ。調整はうまくいってるの?」

 どう出るかっていったって、みんな行きたがっているから大丈夫。日程だって全部調整済み。釣りものだけが決まってないだけ。

 そう伝えても、嵐山は聞いていない。
「あれだな。新潟上越のマダイだろうな、やっぱり。篠原船長にマダイはどうだって聞いてみてよ」

 だから、ことしの上越のマダイは乗っ込みが遅くなっていて、われわれが予定している5月下旬には釣れないって前から言ってるでしょう。だから、今回は上越のマダイはナシよ。

 そんなことを、釣りの前にうだうだと話すのが好きなのだ。釣り人というのは。

「ヒラメを釣って、スエイの奥さんの機嫌を直そう!」

 結局、決まったのは内房・富浦港から出船してのカサゴとコチ釣りのリレーとなった。前日の夕方には、宿泊先の富浦の旅館「光崎」に全員が集結した。

 タコの介は嵐山を自宅でピックアップして走ってきた。今回は編集部員の滝が会社にスエイ、伸坊、サクラギに集まってもらって、3人を乗せてやってきた。

「光崎」は以前、カワハギ釣りで4人組が泊まっているのでよく知っている。夕食前からビールで盛りあがった。

 コチ釣りというのは、生きたイワシをエサにして、そのイワシを泳がせて釣る。かなりスリリングな釣りである。ヒラメが釣れることもある。

「ヒラメ、釣れたらいいね。スエイの奥さんの機嫌が直って、離婚騒動が収まるといいね。みんなで祈ろうね」

 と不良中年たちがしんみりとして合掌した。スエイはいま奥さんと深刻な問題を抱えていて、「あー、俺は宇宙の孤独を味わってるんだぁ!」と、目も吐息もうつろだった。

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サクラギの笑顔が弾ける。
カサゴだ
伸坊も絶好調。
カサゴの煮付けだぁ!

もう夢中だ。
良型カサゴが次々とキターッ

 翌日は5時に港に集合の約束だった。ところが、コンビニであれも買う、これも買うと4人組が時間を使って、港についたのは5時30分。今回乗船する「酒井丸」の船長が、「遅い! イワシを用意するのが遅くなっちゃった」と、ご機嫌が悪い。

 聞くと、沖のイケスに入っているイワシを仕入れるのだが、その時間が5時だったというのだ。次の網上げまで少し待たないといけないという。いいよ、そんなに急がなくても、と言おうとしたが、熱心な船長だからまた機嫌を悪くしてしまう。

 ともかく、生きのいいイワシが大量に船のイケスに入った。船長はいちもくさんに走り出した。州の崎の沖合にカサゴのポイントがある。

 ここがすごかった。30センチ以上もある良型のカサゴが次々と釣れた。カサゴはサバの切り身をエサにする。宿が作ってくれたおにぎりを食べる暇もない。
「ウヒョヒョ〜い!」
 スエイが奇妙な歓声を上げた。
「よっしゃー!」
 サクラギが吠える。
「また釣れちゃった」
 ちょっとテンションが違う伸坊がにこにこしている。
「……!」

 しばらく根掛かりを連発していた嵐山にようやく真っ赤なデカいカサゴが来た。これから次々と釣り上げて、全員一人3、4匹は確保した。カサゴの煮付け。カサゴの唐揚げ、カサゴの刺身。あー、もうたまらない。しかもこのデカさだ。

 滝はとんでもないものを釣った。マトウダイだ。しかも50センチオーバーの巨大なやつだ。

「じゃ、次のイワシの泳がせに移るよ」
 と、すっかり機嫌を直した船長が移動を告げた。午前10時である。

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スエイも会心の釣りだ
アカハタを釣った滝。
うまそー 
遠くにポツリと嵐山御大

「送り込め」って
どういう意味?

 船は館山湾の中に移動した。生きたイワシをハリに付けて、それを海の底までそっと落とし込む。イワシが泳ぎ出す。その魚信が手に伝わる。すると、急にイワシが暴れ出した。そして、ガツーンと竿先が海面に突き刺さる。

 大きくアワセて、リールを蒔いてくると50センチ、1キロを超える大型のコチが上がってきた。口にイワシをくわえている。
 これがイワシの泳がせ釣り。

 最初の魚信をアワせずに、じっと我慢をしてそのあとのグーンと竿を絞り込むアタリでアワせる。これが分かっていても難しい。焦ってアワセてしまうと、すっぽ抜けてしまうのだ。

「送り込め! アワセるな。待て、待て、まてぇ〜!」
 と船長がマイクで怒鳴る。
「あー、だから待てっていったのに」

「送り込めってどんな意味?」
 ちょっとテンションがほかとは違う伸坊がタコの介に静かに聞いた。

「アタリがあったら竿先を下げて、糸をゆるめることです」
「そうなの。まったく分からんよ」

 そんな会話を続けながらも、コチは快調に釣れた。ちなみにコチは洗いにすれば絶品の高級魚だ。高級魚といえば、滝がアカハタを釣った。

 そんなことで、船長に怒鳴られながらもいい釣りが終わったのだ。
「まったく、みんな上手な人ばかりで、参っちゃったよ。でも、釣れたからいいか」

 船長が笑顔である。4人組は船長と肩を組んだ。また来るぜ、船長。

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これがフランス料理の
高級素材となるマトウダイ
滝が釣ったコチ
樋口 正博 (ひぐち・まさひろ)
1952年、長野県生まれ。
沖釣り専門誌「つり丸」編集長。最近は釣りよりも魚料理に興味が傾いてしまった。毎月一回、嵐山光三郎さんと連載「釣って開いて」の取材に出かけるのが、おもな釣り取材となっている。通称「タコの介」(嵐山光三郎命名)。
 
 
 


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