【趣の庭】釣り三昧
2009.4.13      

めくるめく、沖縄・久米島の
キハダマグロ釣り

樋口 正博

行って驚くな!
巨大マグロ釣りだ!

 嵐山さんがとうとう冬眠から目覚めた。いったん目覚めてしまうと、「釣りをやらせろ。いますぐやらせろ。大物だぞ。そうだぞ」と、やたらウルサイ。

写真
ボンバルディア機で久米島に乗り込んだ嵐山御大

 このオヤジを黙らせるには、とっておきの釣りの旅をご用意しなくてはならない。タコの介は「よーし、行って驚くな!」と、気合いをこめてある釣り旅を企画したのだ。

 それは沖縄のさらなる離島、久米島でのめくるめくキハダマグロ釣り。じつは、この取材は4月23日に創刊される新雑誌「つり丸プレミアム」の巻頭特集としてセッティングされたのだ。

写真
「つり丸」が無謀だと言われながら、
死んだ気で創刊する新雑誌「つり丸プレミアム」。
照英が表紙。買ってください。4月23日発売。860円

 深夜3時半にタコの介は嵐山邸にお迎えに行った。東京は雪が降っていた。

 そして、沖縄の那覇空港でプロペラ機に乗り換えた。その機は車輪が出なくて胴体着陸をしたボンバルディア機だった。数日前、成田空港で貨物機が強風に煽られて着陸に失敗。機体炎上、乗員2名死亡という事故があったばかり。

 だが、嵐山御大もタコの介も、この種のことにはまったく動じない。楽しい空の旅を満喫した。久米島に到着したのは、午前10時半だった。気温は20度を超えている。

写真
久米島で一番の観光スポット「ハテの浜」。
真っ白な砂浜がコバルトブルーの海に浮かぶ


釣り船は
7番パヤオをめざして突き進む

 こんなに早く着いたのは、午後船に乗るためである。今回はルアーの名手、北村秀行、編集部で久米島の釣りに詳しい滝、そしてタコの介の強力なる4人編成だ。話し好きの北村、通称チャーマスは久米島の釣りを語り出したら止まらない。彼は、20年も久米島に通い続けていて、仲間とパヤオ(人工浮き魚礁)の遊漁釣りを開拓してきた。

 港はホテルのすぐ下。兼城(かねぐすく)港である。船は「大幸丸」。譜久村船長は島きっての名船長。チャーマスや滝とも親しく「彼の腕は島でもトップクラス。とにかく親切で気配りがきく」と絶賛している。昨年は、お客さんに310kgというクロマグロを釣らせて話題になった。ちょっと小太り。大きなヒゲに黒い顔。無口で「よろしくお願いします」の挨拶がスムーズに交わせなかった。

 パヤオは島を取り囲むように10基が設置されている。どのパヤオを選択するかは船長の腕に関わる。出船して「大幸丸」は一気にスピードをあげた。天気は薄曇りながら雨の心配はない。波も穏やかだ。平坦な島を右手に見ながら船が進む。

 譜久村船長は行き先を変更した。最初は5番パヤオをめざしていたのだが、7番パヤオで漁をしていた仲間の船から無線が入った。

「カジキが釣れた。キハダも20〜30kgクラスが上がっている」

 そこで、譜久村船長は急遽7番パヤオをめざして突進したのだ。航程は1時間半。遠くに船影が見えた。5、6隻は集結している。そして、目ざすパヤオが見えた。オレンジ色の大きなドラム缶のようなものが波に揺れて浮いている。たったこれだけの浮き魚礁だが、海底に1本のロープが伸びていて、このロープに海藻が付き、それにプランクトン、小魚が寄り、その小魚を狙って大型のキハダマグロ、カジキが回遊してくる。

写真
イーフビーチの沖縄そば処「三坊」のソーキそば(750円)


チャーマスが
早くも8kgのワフーを釣り上げた

 船を止めるとさっそくチャーマスが巨大なポッパーを放り投げた。リーリングする間もなくなにかが水面を割ってルアーを襲う。ミヨシに仁王立ちになったチャーマスが楽しそうに戦闘を開始した。船中に取り込まれたのは巨大なワフー(オキザワラ)だった。8kgは超えている。

 嵐山御大は、それを見てやりたくて、やりたくてモジモジしている。べつに焦らしているわけではないが、チャーマスがあまりにも鮮やかに速攻で釣ったので、準備が間に合わないのだ。ルアーは勝負が早い。

 その間に、譜久村船長はエサ釣り用の道具をセットしている。仕掛けはパラシュートといい、折りたたみ傘の布のようなものに冷凍のムロアジをぶつ切りにして、そのひとつにハリを刺し、さらにブタの飼料とイカのスミをまぜたどろどろとしたコマセを包んで、針金で軽く縛る。イカが大好きなキハダはこの匂いに誘われて寄ってくる。ハリスは50号で約10m。

 タナは110m前後。仕掛けがタナに届いたら、大きく竿を3回ほどシャクって、パラシュートを開いてコマセと付けエサをまく。


ああ、苦痛と快感が入り乱れ
もはや何と闘っているか分からない

 しばらくハリスが潮になじむのを待っていると、ドスンと竿が海面に突き刺さった。竿掛けから竿を外して、竿尻をお腹に押しつけて、いよいよファイト開始だ。嵐山さんはこんなスタンディングの釣りは初めて。リールを巻こうとするが、なかなか負けない。真っ赤な顔をして歯を食いしばり、リールと格闘している。滝が「もっと巻いて、思いっきり竿を立てて!」とカメラを構えながら叫んでいる。

 早くも、腕がぶらぶらになってきた嵐山さん。「タコの介ェー、助けろォー!」と叫んだが、タコの介は知らん顔である。これを楽しむためにわざわざ久米島までやってきたのだ。この美味しいシーンこそが釣り師の「極上の興奮」なのだよ。

 こうして、嵐山御大のめくるめく久米島の釣りが始まったのだ。

写真
「どうだぁ!」嵐山御大、渾身の16kgのキハダマグロ。
ことを成した男のうれし泣きである

 

樋口 正博 (ひぐち・まさひろ)
1952年、長野県生まれ。
沖釣り専門誌「つり丸」編集長。最近は釣りよりも魚料理に興味が傾いてしまった。毎月一回、嵐山光三郎さんと連載「釣って開いて」の取材に出かけるのが、おもな釣り取材となっている。通称「タコの介」(嵐山光三郎命名)。
 
 
 


トップページ会社紹介著作権についてお問い合せ
Copyright (c) Flying Garden Rights Reserved.