【趣の庭】釣り三昧
2009.2.23      
冬は寒いのであって、
海は辛いのである
 
樋口 正博

■アラ還より上の世代は
 冬が苦手なのである

「アラ還」というのは「天狗のおじさん」の嵐寛寿郎のことではない。「アラウンド還暦」の略で、60歳前後の世代をさす。つまり団塊の世代だ。

「つり丸」で連載の作家、椎名誠と嵐山光三郎の2人は、「アラ還」よりさらに上の世代で、「上アラ還」である。

写真
大水槽では大型魚とイワシが一緒に泳いでいる。
イワシにとってはデンジャラスな世界だ

 嵐山御大は昨年の10月末、カワハギ釣りの取材が終わったあと、ポツリとつぶやいた。
「タコの介。寒くなったらね、俺冬眠したいわけね。春まで海行かなくていい?」
 と、突然、冬眠宣言をしてしまった。タコの介は「なんと軟弱な!」と、一応は絶句してしてみせたが、「上アラ還」世代だし、宣言されちゃったし、寒さが身にしむのは仕方がないかと了承したのだ。

 で、先日、嵐山御大から久しぶりに電話があった。
「元気にしてる? 最近、近くの魚屋で魚を買えなくなっちゃったんだ。だって、旨くないんだもの。魚は釣ったものに限るよな。で、魚食べたいから、釣った魚があったら送って。いますぐ送って!」

写真
愛敬たっぷりのマンボウくん。釣りでは難しいが、
漁師は水面で昼寝をしているマンボウをすくい取ることがある

 タコの介はさっそく新潟・上越の「さとみ丸」の篠原船長に連絡をした。
「御大が魚欠乏症で青息吐息。新鮮絶品素材で優しく慰めてやって」
「ラジャー」

 数日後、嵐山邸に届いたのは発泡スチロール箱いっぱいのヤリイカだった。 「旨い、旨かったよー。ついでに開いちゃったよー」
 と、御大は感激にむせぶのである。その御大からまた電話が来た。

「今年の冬はアッタカイね。助かるよ。で、もう春だよね。梅は咲いたしね。そろそろ起きようかな。寝てばっかりだと身体がナマるからね。3月になったら海に行くからね。セッティングよろしくね」
 そういうことで、御大の冬眠期間は4か月だった。そうか。よし、春の海に繰り出すぞ。

写真
カメラを持ってお勉強態勢は万全のシーナ隊長

■「サメは交尾するんだよ」

 もう一人のシーナ隊長は、かつては冬山にアタックするなど本格的山屋だった。だから、冬のキャンプなど屁でもない。だが、「つり丸」のシーナ担当の近藤編集部員に連絡があった。

「次回のキャンプだけどね、冬であるわけだしね、魚は釣れないでしょう? まあ、雑魚釣り隊だから釣れなくてもいいんだけどね。
 でも、キャンプ場で獲物がなければ寂しいわけだし、酒もすすまないしね。それに冬だしね。寒いよね冬は。

 で、どうだろコンちゃん。次回のキャンプはなしってことで。その代わり、魚のお勉強をバカ隊員たちとしたいわけで、どっかドカンとデカい水族館に行こうよ。

 ついでに、近くに「おさかな市場」みたいなところがあればね、そこでおさかなを仕入れて、名嘉元(バカ隊員の一人。新宿3丁目で「海森」という沖縄料理居酒屋を経営)の店で、魚を食いながら魚を語るってことにしたいんだけど、どう?」

 と、普段は無口系のシーナ隊長が一生懸命長々としゃべって、コールドキャンプを回避したのだった。

写真
大洗水族館の近くには
「那珂湊おさかな市場」があって大賑わいだ

 コンちゃんが選んだ水族館は茨城県大洗水族館「アクアワールド」だった。那珂川の河口の海辺に巨大な水族館が建っていた。ここには580種6800匹の魚が泳いでいる。
 とくにサメの展示には力を入れていて、大水槽を巨大なサメが悠々と回遊し、イワシの大群がその姿を変えながら、サメから必死に逃れているのだ。

「サメのなかには卵胎生のヤツもいるんだ」
 と大学院時代に人生に何の役にも立たないウニ・ホヤ・ヒトデの研究をしていた隊員の海仁がインテリぶりを発揮した。ちなみに海仁は新潮社に入社して、自然生物グラフィック誌「シンラ」編集部員を経て独立。フリーランスのエディター&ライター。

写真
2月13日〜15日は横浜で
「国際フィッシングショー2009」が開催された。

 この「サメ卵胎生」説に飛びついたのが長崎出身の兄弟バカドレイの太陽と童夢。
「じゃ、オレたちみたいに交尾するんだ」
「どうやってするんだよ? 体位は?」
 と話をややこしくしていくのであった。

 ともあれ、冬はもうじき終わる。春がやってくる。そしたら海に行こう。ね、御大に隊長。



 
樋口 正博 (ひぐち・まさひろ)
1952年、長野県生まれ。
沖釣り専門誌「つり丸」編集長。最近は釣りよりも魚料理に興味が傾いてしまった。毎月一回、嵐山光三郎さんと連載「釣って開いて」の取材に出かけるのが、おもな釣り取材となっている。通称「タコの介」(嵐山光三郎命名)。
 
【 釣り三昧 掲載記事一覧 】
■冬は寒いのであって、
 海は辛いのである
本文を読む
■釣魚を使った「海鮮だんご鍋」って
 知ってますか?
本文を読む
■「無限カレー地獄」の恐怖!
 新島のキャンプ番(その2)
本文を読む
■タコの介は「炊き出しのおばさん」となって
 新島のキャンプ番を務めた(その1)
本文を読む
■釣るのが先か 食うのが先か
 内房・富浦沖のカワハギ釣り(その2)
本文を読む
■食って悶絶! 釣って極楽
 内房・富浦沖のカワハギ釣り(その1)
本文を読む
■ずっと引き延ばしていた
 父との約束
本文を読む
■内房・金谷沖の黄金アジ(下の巻)
 カマスに黄金アジだ!
 嵐山と檀が釣る、ガンガン釣る
本文を読む
■内房・金谷沖の黄金アジ(上の巻)
 このアジ食をべたくて嵐山は行くのだ
本文を読む
■魅力的で悪魔な人の一周忌
 嫌いだけど好きだった
本文を読む
■休日にはたったひとりで釣りに行く
 雨でも嵐の日でも
本文を読む
■灼熱地獄のタチウオ釣り
 苦闘の果てに見たクーラーの中身は?
本文を読む
■次々と出てくるタコとアジ料理の逸品
 タコの介は独り占め
本文を読む
■嵐山御大、南伸坊、老人ホームへ突入
 ごま塩頭の逆襲が始まった
本文を読む
■鍋を囲んでマハタの夜は更ける
 若い女性に囲まれて
本文を読む
■「謝るけど反省はしない」
 この名セリフには涙なくしては語れない秘密があった
 オヤジ5人組が嵐のなかでイサキ釣り
本文を読む
■湖面を渡る5月のそよ風。したたる緑。
 久しぶりだなぁ、へらぶな釣りは
本文を読む
■どやどやと隊員たちが繰り出した
 行った先の八丈島ではムロアジ1匹
本文を読む
■両親が有料老人ホームに入居した
 寂しさが募る
本文を読む
■バカたちがくりひろげる
 寒風、海辺のキャンプ
本文を読む
■気がついたら新宿の寿司屋で
 とんでもないメンツと飲んでいた
本文を読む
■田舎は雪で大わらわ。「パラパラ筋」が筋肉痛で、1か月たっても痛いのだ 本文を読む
■身がコリコリ生きる トラフグの神経締め。青物横丁の活魚割烹「さしろ」 本文を読む
■仕事がすんだ週末は中央道で信州へ帰る。月に半分は船の上。
 これが「つり丸」編集部員の日々
本文を読む
■干物のとりこになりました。釣った魚を食べるところが妙味。
 嵐山光三郎の「史上最高の干物」を刊行
本文を読む
■釣り師と船宿を翻弄させる カワハギ名人の衝撃!  本文を読む
■嵐山光三郎と、秋のマダイ釣りを上越の海で 手練手管が必要で、面白さが凝縮
 フアンが多く釣り方も多種多様 
本文を読む
■「身がふんわり、香りがセクシー」 関アジより抜群に美味しい走水のアジ
 船上干しがこれまた絶品
本文を読む
「松令丸」でのヒラマサ釣りを成功に導く 嵐山光三郎さんも大喜び
 八丈島の名船頭、マッちゃん 
本文を読む
永井名人シリーズVol.2/釣の方がずっとエクスタシーを感じるよ
 お化けよりもっと怖い話です
本文を読む
永井名人シリーズVol.2/もったいない話だ 本文を読む
永井名人シリーズ vol.1/震える話   本文を読む
震えるほど美味しい釣魚料理 本文を読む
 
 


トップページ会社紹介著作権についてお問い合せ
Copyright (c) Flying Garden Rights Reserved.