【趣の庭】釣り三昧
2008.11.25      
釣るのが先か
食うのが先か


内房・富浦沖のカワハギ釣り その2

樋口 正博

 翌朝は5時過ぎに起きて、すぐ近くの富浦港まで行った。夜が明けかけていた。天気は良さそうだ。都心よりも温かい風が吹いていた。なにか希望に胸膨らむ瞬間である。
「ゆたか丸」の船長、古内義豊さんが柔和な顔をほころばせて歓迎してくれた。さっそく船に乗り込んだ。

 カワハギのポイントは航程10分ほどの富山湾内である。船からは雲から頭を覗かせた富士山がシルエットとなって浮かび上がっているのが見える。右舷ミヨシ先頭に嵐山さん、その並びにシンボーさん。左舷ミヨシにサクラギ、並びにスエイ。その左隣りにコンちゃんが陣取った。

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これぞ夢にまでみたカワハギ君。「会いたかったぜ」

 船長のアナウンスで釣りが始まったのは6時15分。水深は30m弱と少し深い。まずは、オーソドックスな釣りで底近くにオモリを置いての聞き合わせ釣り。と、とたんにスエイが良型を1枚を上げたので、全員が口をあんぐり。もちろん、スエイにカワハギ釣り体験はまったくない。無造作に釣ってしまった。さらに、2枚、そして3枚と立て続けに釣ったので、もう全員無言になって、船中に変な緊張感が張りつめてしまった。

 そこに輪を掛けたのがシンボー。「ん? 掛かったかな。どうかな」という顔をして、でもしっかりとリールをぎこちなく巻いて1枚があがった。「やるじゃない」おむすび顔をにこにことしてシンボーは嬉しそうだ。
 
 意外と苦戦しているのがコンちゃん。嵐山さんも出遅れて、サクラギはカヤの外状態。それでも嵐山さんが続き、コンちゃんが型を見せた。サクラギは無言でカヤの外のまま。

 古内船長はときどきポイントを変えていくが、水深はやはり30m前後。底は砂地で、ときどき根が点在している。タコの介はひと通り道具のセットと釣り方を教えたら、ミヨシでごろんと横になった。予報では晴れだったのが、雲がなかなかとれない。風も吹いてきた。意外と寒い。

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笑顔が抜群! シンボーが釣った


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カワハギに似てきたサクラギ


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嬉しいと舌を出すスエイ

■嵐山、新釣法で執念の7枚達成!

 30分ほど昼寝して起きると、事態が一変していた。風が強くなって、高い波が押し寄せている。すでにサクラギ、シンボーがダウン。竿を握っているのはスエイ、嵐山さんとコンちゃん。なかでも嵐山さんの執念がスゴイ。

 船長が早揚がりを示唆しているのだが、「まだまだ、あと1枚」と叫んでいる。そのとき嵐山さんは6枚を釣っていて、1枚を追加すれば7枚。「釣りは7枚まで。それ以上釣ったら食べきれない」と日ごろ主張している。あと1枚が重要なのだ。このとき外道が多くなって、ネンブツダイ、ベラ、カゴカキダイなどが上がっていた。大波のためか根掛かりも頻発している。

 タコの介とコンちゃんが注視するなか、嵐山さんは新釣法の底から仕掛けを50センチほど切った釣りを展開。前アタリを見つけて、竿先をそっと下げて誘いを入れ、向こう合わせでガッガッガッとした食いアタリをだして釣った。良型のカワハギである。お見事。


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クーラー満タン。幸せ満タン

 午前10時。船長から「風が出て、波が強くなったので揚がります」のアナウンス。結局、5人で33枚を釣ったのだ。上出来だ。

 港へ戻った。港では、多くの釣り人が防波堤の釣りを愉しんでいた。平日なのに、ここの防波堤釣りは人気がある。そんな防波堤で、嵐山さんは釣ったばかりのカワハギをさばいてキモ和えを作った。それを小野がカメラに収める。

   嵐山さんは「寄ってらっしゃい、見てらっしゃい。これがカワハギの苦玉。つぶしちゃたダメだよ。そして作るはキモ和え。キモはキモなり。身は身なり。この両者が出会うとどうなるか、お立ち会い。好きな男女が一緒になって、これでめでたく肝和えの完成だ! 仲良きことは美しき哉」

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沖揚がりのあと、嵐山さんは港でカワハギをさばいてキモ和えを作った。
「早く食わせろッ!」

 口から出まかせの口上を言いながら、キモ和えを作る。「ふんふん」とシンボーやサクラギ、スエイが相づちを打つ。口上なんか聞いてない。早く食いたくておとなしくしていただけだ。

 そして、みんなで肝和えを頬張っては「んめー。うん、やっぱりカワハギはキモ和えに限る!」と何度も叫ぶのだ。
 こうして、オヤジたちのカワハギ釣りは笑顔のなかで終了したのだ。

 
樋口 正博 (ひぐち・まさひろ)
1952年、長野県生まれ。
沖釣り専門誌「つり丸」編集長。最近は釣りよりも魚料理に興味が傾いてしまった。毎月一回、嵐山光三郎さんと連載「釣って開いて」の取材に出かけるのが、おもな釣り取材となっている。通称「タコの介」(嵐山光三郎命名)。
 
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