【趣の庭】釣り三昧
2008.10.14      
内房・金谷沖の黄金アジ(下の巻)
カマスに黄金アジだ!

嵐山と檀が釣る、
ガンガン釣る

樋口 正博

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絶好調の檀さん。黄金アジを次々と取り込む

 嵐山光三郎さんとタコの介は、光文社の編集者、檀将治さんの屈託の原因を知っている。前夜の酒盛りのときに、檀さんが告白をしたからだ。うーむ。家族の問題は難しい。

 カマス釣りは1時間で切り上げた。船は港に戻るようにして黄金アジのポイントに移動した。それでもカマスは一人20匹近くは釣れていた。
 船長はポイントに来るとしばらくはエンジンで流し釣りをしていたが、順調に釣れるのが確認できるとエンジンを止めてカカリ釣りにした。アンカーを打って船を完全に止めての釣りだ。魚影が濃くないとカカリ釣りはできない。

 気がつくと、目の前に船が掛かっていた。タオルの鉢巻きをした船長らしき人がわれわれに手を振っている。なんだ、「さえむ丸」の親父船長の三浦市郎さんじゃないか。われわれの船との距離は10メートルもない。

 さて、真剣に黄金アジを釣ろう。檀さんも嵐山さんもLTタックルである。10メートルと浅い場所ではLTに限る。軽くて簡単だ。仕掛けを投入して、1メートルほど巻いてコマセを振り出す。そして、2メートルほどリールを巻いて、コマセのなかに仕掛けを入れる。これがコツだ。

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すぐ近くに親父船長がいた。船長のアドバイス通りに釣りまくる檀さん

 サビキ釣りなので、一回でたくさんのハリに掛けるのが効率的だ。だが、上潮が速くて、意外と多点掛けができない。1匹ずつ釣るようなことが続いた。すると、対面の親父船長が怒鳴った。「コマセをまいたら、仕掛けをコマセのなかに入れるようにあげるんだよ。そうじゃないとたくさん掛からないぞ!」

「はい、分かりましたぁ!」
 檀さんが大きな声で答える。すると、たしかに4、5匹と一気にズラズラと数が増えた。鈴なり状態である。

■嵐山、明らかに釣り飽きている

 しばし、船中では無言で黙々と釣るシーンが続いた。時計を見ると、午前10時を過ぎていた。天気は晴天というか、ぎらぎら太陽が輝いている。嵐山さんはと見ると、明らかに釣り飽きている。だが、タコの介の手前、やめようとは言い出せない。「タコの介、代わって釣ってよ」と竿を出す。しかたなく、タコの介は釣り始める。すると、嵐山さんはミヨシにいってごろんと横になるや昼寝を始めてしまった。

 それを見て、真剣だった檀さんもごろん。タコの介は一人でアジ釣りを続けた。対面の親父船長は飽きることを知らない。最初は竿で釣っていたのだが、ミヨシに移って手釣りを始めた。ハリは2本。鋳込みテンビンだ。手釣りなので手返しがいい。あっというまに2匹ずつ釣り上げていく。

 ざっと30分ほど見ていたが、50匹以上は釣り上げている。「なんだ、もうやめちゃったのかぁ!」と、親父船長は嵐山さんたちを見て、怒鳴った。
 漁師歴40年を超えて、しかも古くから黄金アジを釣ってきた親父船長は、釣れるときには真剣に釣る。決して飽きたりはしないのだ。黙々と数を稼いでいる。

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漁師歴40年の親父船長はあっという間に数を釣っていく

 午後11半。船長がやってきた。「もう、やめちゃうの?」「十分釣りました」とタコの介は答える。船中でも「もう十分です」という空気が漂っている。

「じゃ、早揚がりしよう。クーラーに入りきれないからね」とアナウンスして沖揚がりとなった。親父船長はまだ釣っていた。手を振って別れた。金谷港は目の前。5分で到着した。船長に挨拶をして楽しかった黄金アジ釣りを終わった。

「ぼくは自分の歳の数、41匹のアジを釣りました。楽しかった。面白かった」
 と檀さんが喜んでいる。それをにこにこと嵐山さんが見つめていた。これで檀さんの屈託も少しは晴れただろう。黄金アジに乾杯だ。

 タコの介はその番に黄金アジを3枚にさばいて、寿司をにぎった。さばいているときから分かっていた。脂で包丁がべとべと。手もべとべと。ああ、うまそうだ。案の定、極上のアジのにぎりができて、家族は大喜びで食べてくれたのだ。うまいッ!


 
 
樋口 正博 (ひぐち・まさひろ)
1952年、長野県生まれ。
沖釣り専門誌「つり丸」編集長。最近は釣りよりも魚料理に興味が傾いてしまった。毎月一回、嵐山光三郎さんと連載「釣って開いて」の取材に出かけるのが、おもな釣り取材となっている。通称「タコの介」(嵐山光三郎命名)。
 
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