【趣の庭】釣り三昧
2008.09.22  
内房・金谷沖の
黄金アジ
(上の巻)

このアジを食べたくて
嵐山は行くのだ

樋口 正博     

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このサイズのアジが黄金アジ。あー、これをにぎりにして早く食いたい!

 またアジかというなかれ。今回のアジは東京湾でも走水のアジと覇を競う、内房・金谷沖の黄金アジなのである。これは東京湾でもトップブランドのアジとして知られている。
 どこが黄金アジなのかといえは、体側がうっすらと黄金色に輝いているからだ。しかも、脂がのりのり。サイズは20センチ前後と小さいが、半身をそのまま寿司のネタにしたら、もうたまらない美味しさだ。

 そんな黄金アジを、今回は嵐山光三郎さんと友人の光文社の編集者、檀将治さん(41歳)の3人で出かけた。都心を走っていると、突然ものすごい豪雨となった。ハイスピードのワイパーでも間に合わない。それでもタコの介は平然と首都高をぶっ飛ばしたのだ。

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カマスは開きに塩焼きに、その淡泊な脂が最高だ

 向かった船宿は金谷港の「さえむ丸」。以前、南伸坊さんと出かけて、強風のために撤退を余儀なくされた船宿である。

 前日は例によって前泊。今回タコの介が選んだ宿は保田の先の山のなかにある「アヴェール」というプチホテル。「ラブホじゃないの?」と、嵐山さんはちょっと不安。
 そのホテルは手作り感いっぱいの宿で、山間の斜面にいくつかの露天風呂と山荘のようなのが建っていた。「つり丸」では広告を出してくれている出広主である。

 趣のある風呂に入り、レストランで洋食とワインを楽しんだ。ここの名物がビーフシチューで、柔らかく煮込んであるシチューを楽しんだ。そのとき、檀さんが到着した。仕事をしていて、内房線の特急に乗ってやってきたのだ。社長の中川勉さんが挨拶に来てくれた。

 食事のあとは部屋で酒盛り大会。いろんな話をして酔っぱらって、午後10時近くに寝た。「さえむ丸」の親父船長からは「午前5時過ぎにはきてよね。出船は6時前だけど早めに」と言われていたのだ。

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屈託を抱えた檀さんは、突かれたようにアジ釣りを続けたのだ

■心に屈託を抱えた
 檀さんが釣る、真剣に釣る

 翌朝は4時半の起きて、コンビニに寄って金谷についたのは午前5時すぎ。親父船長とおかみさんが受付にいた。「きょうは、違う船にのって。お客は10人ほどだよ」 「あれ、船長は船出さないの?」「俺は違うお客さんを乗せるから」
 ということで、われわれは「第三右衛門丸」に乗った。船長は41歳。気配りのいい陽気な船長だった。船長は出船前に、初心者の釣り客に釣り方を教えてから走りだした。

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見よ! 体側が黄金に輝くこのアジを


 といっても、ポイントは金谷港からすぐ目の前。まずは、最近好調のカマス釣りから始めるという。つまり、今回はカマスとマアジのリレー船なのだ。

 水深は10メートル。カマスはバケだけで釣る。コマセもない。仕掛けを10メートルの底に落として、シャクリながらリールを巻いていくと、ガンガンガンと掛かってくる。コツもなにもなく、ただ仕掛けを絡ませないように手返しよく釣っていくのがコツといえばコツだ。

 すぐに、檀さんにも嵐山さんにも25センチほどのカマスが一荷やトリプルでやってきた。
「なんだ、簡単じゃん。飽きそうだな」
 と嵐山さんが不遜なことを言ったので、タコの介は「釣りをバカにしてはいけません。しっかり真剣に釣ってください」とたしなめた。「はい」と嵐山さんは素直に従ったのだ。

 心に屈託を抱えているという檀さんの釣りは真剣である。ずっと真剣なので、ちょっと気を抜いたほうがいいのではないかと心配になるほど真剣である。でも、どんどん釣れるので、いまは夢中になっている。屈託のあることも忘れている。



 
 
樋口 正博 (ひぐち・まさひろ)
1952年、長野県生まれ。
沖釣り専門誌「つり丸」編集長。最近は釣りよりも魚料理に興味が傾いてしまった。毎月一回、嵐山光三郎さんと連載「釣って開いて」の取材に出かけるのが、おもな釣り取材となっている。通称「タコの介」(嵐山光三郎命名)。
 
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