【趣の庭】釣り三昧
2008.5.26
湖面を渡る5月のそよ風。
したたる緑。


久しぶりだなぁ、へらぶな釣りは
樋口 正博
写真1
「流れ込みポイント」地元へら師がいい感じで竿をしぼっていた

 「集合は6時半。場所は茨城県下妻市の砂沼。現地に着いたら電話ください」
 へら釣りの誘いがメールで来た。相手はへら専門誌「へら専科」の熊谷貴幸編集長。
 タコの介は、これまであらゆる釣りをやってきたが、趣味として一番気に入っているのがへらぶな釣りだ。へら歴はかれこれ二十数年間になる。
 タコの介はいまでこそ沖釣り専門誌の編集者をしているが、沖釣りは「つり丸」が創刊した9年前にまったくの初心者として始めたに過ぎない。それまでは、渓流のフライフィッシング、そしてへらぶな釣りが趣味としてのタコの介の釣りだった。
 いまは、仕事として沖釣りに明け暮れる毎日だが、ときたまポカンと時間が空いたときには、「あっ、へら釣りに行こう」と思う。タコの介にとってのへら釣りというのは、そういう癒やしの釣りでもある。

 そのへら釣りを、この1年3か月まったくしてない。それまでは、どんなに忙しくても月に2回はへら釣りをしていた。今回、熊谷君の誘いがなかったら、ブランクはもっと伸びていただろう。
 最近、とんと物覚えが悪いというか、記憶力があやふやになったタコの介は、「はたして、へら釣りを満足にできるのか」という不安を抱えて、田植えが終わった茨城南部の田園地帯を車で走り抜けた。
 朝方は寒い。それでも陽が昇るに釣れて気温が上昇してTシャツで十分な陽気になった。

写真1
熊谷君が思わず立ち上がって取り込んだ

 熊谷君は砂沼の一番北、通称「流れ込み」のポイントにタコの介の釣り台を設置して待っていてくれた。砂沼は4月上旬に周辺の田んぼに水を入れるために、鬼怒川から取水する。水位が一気にあがるために、へらぶなは乗っ込みに突入するのだ。乗っ込みというのは、産卵のために浅場に集まってくることをいう。
 乗っ込みはへら釣りにとって最大のチャンス。大型のへらが岸に押し寄せる。普段お目にかかれない40cm前後の巨べらを釣るチャンスなのだ。

「型のいいのが釣れてるらしいですよ。今日はいけるんじゃないですか」
 と、うずうずして熊谷君が言った。すでに竿を出していたとなりの地元へら師が、いきなり竿をしぼった。あがってきたのは35cmの元気なへらだ。
 そんな光景を見ながら雑談していると、
「早く釣らないと、昼になるにつれて型が小さくなっちゃうよ」
 と地元へら師がいう。「そうなの。急がなくちゃ」と、われわれはあわてて道具をセットしたのだ。

写真3
37.4cmのへら。顔が小さく、背中が盛り上がり、体形は菱形。
目はドングリ眼

■グングンと竿をしぼり
 やってきましたグッドサイズのへらぶなクン

 底釣りでタチは1本ちょっと(1mちょっと)。へらぶな釣りのエサは練り餌である。いろんな種類のエサがあって、それをへら師がブレンドしてダンゴのエサにして使う。
 このエサが難敵で、同じ種類でも作り方によってはバラケたり、バラケなかったり、硬かったも重かったり、軽かったりと自在にタッチを変えるのだ。初心者が一番頭を悩ますところで、もちろんタコの介もずっと悩む。
 タコの介は隣りの地元へら師のウキの動きを見て、硬めで小さな両ダンゴのエサを作った。久しぶりなのでエサの持ち合わせがない。親切な熊谷君は大きなバックに一杯のエサを持ってきてくれて「これプレゼント。使ってください」とくれた。
 タコの介が1年3か月のブランクで心配だったのは、このエサ作りだった。エサは年々進化していて、1年もブランクがあると、もう新しいエサがたくさんできてきて、どれを使っていいか分からなくなるのだ。
 

写真3
すっかり初夏の陽気。静かに、心だけ熱く、ひたすら竿を振る

 タコの介は定番の底釣りのダンゴエサを作ってエサ打ちを始めた。
 砂沼は水深は2、3mと浅い。周囲は散策路になっていてよく整備されている。桜の名所として知られる。南北に長く、中央に橋が架かっている。
 エサ打ちをはじめると、30分くらいでウキが動き始めた。ツンと小さく鋭いをアタリを合わせると、竿先がグンと曲がって止まった。竿先がグングンと波打つ。いい型が来たようだ。右に左に竿先をひねってやり取りの末、竿の先でポッカリとへらが浮かんだ。大きな口、かわいい目。久しぶりのへらクンとの再開だ。

 検寸台に乗せると37.4cmだった。ちなみに、へら師はミリ単位まで測定し、厳密に記録するのだ。
「やりますね。ブランクなんて感じませんよ」
 こうして、午後4時くらいまでがんばって、10数枚のへらを釣った。あー、やっぱりへら釣りはいいな。家に帰った夜は、へらバッグを広げて、仕掛け作り、道具の点検に余念がないタコの介であった。次は芦ノ湖の乗っ込みべらだ。目標は45cm。

 
 
樋口 正博 (ひぐち・まさひろ)
1952年、長野県生まれ。
沖釣り専門誌「つり丸」編集長。最近は釣りよりも魚料理に興味が傾いてしまった。毎月一回、嵐山光三郎さんと連載「釣って開いて」の取材に出かけるのが、おもな釣り取材となっている。通称「タコの介」(嵐山光三郎命名)。
 
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