【趣の庭】釣り三昧
2008.5.12
どやどやと隊員たちが繰り出した
行った先の八丈島では
ムロアジ1匹

樋口 正博
写真1
バカ隊員たちが、裸になって「幻のシマアジ」を狙っている

 4月13日(日)と14日(月)は、八丈島にいた。椎名誠さんが「つり丸」に連載している「わしらは怪しい雑魚釣り隊」の取材である。例によって、力が抜けきった隊員たちが、だらりと無為に時間を過ごした。1日目は快晴、翌日は雨風強し。
 いつもキャンプをしている、中之郷藍ヶ江漁港の岸壁に行ったら、「昨日、ここでいい型のシマアジが釣れたよ」と、地元のおじさんが笑顔で教えてくれた。

「まじでー?」
 現金なぐーたら隊員たちは、俄然きびきびと動き出した。
「おい、コマセはあるか」
「付けエサのオキアミは用意したのか」
「ドレイはまだか」
 勝手に盛り上がって大騒ぎした末に、「どりゃー!」と太竿を振り回した。
 
 巨大な防波堤は海水面から5、6mも高い。その高い防波堤をドドドドと、10mくらい助走を付けて突進して竿を振り回すので、近くの人たちは頭を低くして避難している。まったく危なくてしょうがない。そのまま海にザッパーンすればいい。
 太陽がぎらぎら。もともと裸族である隊員たちは、すぐに裸になった。
「おい、飛び込めよ」
 いつも兄貴風を吹かせる勘違い男の西澤が、近くのドレイ2人に命令した。ドレイはいくら理不尽な命令でも隊員には絶対服従である。これは「雑魚釣り隊」の血の鉄則である。
 暑いといっても4月中旬である。
「分かりましたぁ!」
 ドレイの竹田と太陽がどっぱーんと飛び込んだ。たちまち平泳ぎで気持ちよさそうに泳ぎだした。
「おい、お前ら、楽しそうじゃねーか。もっと楽しそうにしろよ」
 西澤が言った。
「じゃ、パンツ脱ぎますッ!」
 竹田がパンツを脱いで、スッポンポンになった
「よーし。いいぞ。竿よこせ」
 西澤は仕掛け付きの竿を振り回して、竹田のパンツを6m上の防波堤に引き上げてしまった。そのとき、前日から椎名隊と野球をやっていた女性たちが、どやどやと防波堤にやってきた。
 「あらぁ。気持ちよさそうね」
「寒くないの?」
写真2
大騒ぎして名嘉元のムロアジ1匹
「気持ちいいだろ。そろそろ上がれよ。身体を冷やすのはよくない」  と西澤が命令した。
「……!」

「上がれっていってんだろ。命令だぁ!」
「はいッ」
 竹田は足をよじりながら股間を隠して上がってきた。
「キャーッ!」
 そこに椎名さんがやってきて、にこにことこの光景を眺めている。われわれ「雑魚釣り隊」は30歳、40歳が主力なのだが、いい大人が毎回こんなバカなことを繰り広げているのだ。
 釣果? もちろん、バカ隊員たちに釣れる魚などない。ムロアジ1匹。
 
■もらった魚で大宴会

写真3
タコの介が作ったキメジ(キハダマグロの子ども)の刺身


 料理長のタコの介はすっかり頭を抱えてしまった。食材がないのだ。
「これ持ってけ。今日の漁のときに釣ったんだ」
 と、仲よくしている島の漁師の山下和秀さんが、ポンと大型の魚をくれた。キメジとソウダガツオだ。和さんはトビウオ漁に出かけている。今年は豊漁だという。さっそくさばいて刺身にした。タマネギを刻んで水にさらし、ネギも刻んでドバッと刺身に大量に振りかけた。これをぽん酢で食う。
 
 
写真3
ちんまりと名嘉元のムロアジのタタキ

「うまい。タコの介エライ。和もエライッ!」と椎名さんが吠えた。
 さらに差し入れの島のくさやを焼いた。一気に豪華な酒宴の肴が揃った。くさやをかじりながらビールの空き缶がどんどん増えていく。気がつくと隣家の婆さんが仲間に加わっていて、イケメンドレイのヨシキの肩を抱いて離さない。
「いい男だね。うちに泊まりな。民宿やってんだよ」
「はい」
「おい、簡単にはいなんて言うな。世間は恐ろしいもんだかんな」
 眼が座った西澤がわめいた。もう、はちゃめちゃである。
 翌日はどしゃ降りとなった。有視界飛行のため飛行機が飛ばないのではないかと、隊員たちは震えながらビールを飲んでいた。
 
写真3
隣りの婆さんに口説かれるドレイのヨシキ

 
 
樋口 正博 (ひぐち・まさひろ)
1952年、長野県生まれ。
沖釣り専門誌「つり丸」編集長。最近は釣りよりも魚料理に興味が傾いてしまった。毎月一回、嵐山光三郎さんと連載「釣って開いて」の取材に出かけるのが、おもな釣り取材となっている。
 
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